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矢内原忠雄『イエス伝 マルコ伝による』

青空文庫。

寡聞にして存じ上げない著者名ではあったが、高木彬光『わが一高時代の犯罪』に、自由主義者のゆえをもって東大を追われた矢内原忠雄教授との一文があり、のちに天下の東大総長による講義録と知って腑に落ちた次第。

理知的かつ激越な序文からの、本文における博覧強記と信仰熱の融合には圧倒されるばかりだ。

福音書中最も古いマルコ伝(山上の垂訓の記載もなし)を基点に、他の福音書も随時参照しつつイエスの言行を伝える。

併読していた『罪と罰』の退屈な中盤に引き換え、こちらは実に面白く、振り返り用のしおりも十箇所に及んだ。



「付 イエスの復活の記事について」より抜粋↓

"イエスが教え給うたのは、「汝我を見しによりて信じたり。見ずして信ずる者は幸福なり」ということである(同二九)。信仰がなければ見ても信ずるを得ず、信仰あれば見ずとも信ずることができる。見たから信ずるのではなく、信ずるから見るのである。復活の信仰はイエスの奇蹟的復活の事実に基づくものではなく、真実と愛とに満ちたイエスの奇蹟的人格の事実に基づくものである。この意味においてマルコ伝は偉大なる信仰をもって、信仰的に結ばれているものと言わねばならない”

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