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雨を感じる試み@都市

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AM 7:30
朝、目を覚ましたベッドの上で、あ、雨だ、と思った。つめたい寝室に響くたん、たんという音。通り過ぎていく車の音。そのたびにざっと鳴る濡れたアスファルト。隣に体温があるとよりはっきり感じられるのものだ。シーツから少し出た肩がひんやりとして、その滑らかさをより美しくみせていた。
もう一度目を瞑ると、今度はもっといろんな音が聞こえてくる。風の寄せる音、揺れる木々の音、カラスの遠慮がちな声、缶が転がる音。
また、車が通り過ぎていった。そうしているうちに、わたしは海を思い出す。思い出すといっても、過去の記憶をというわけではない。わたしのなかにある海、幼い頃に訪れた江の島の砂浜、拾った貝殻やガラスの欠片、いくつかの水族館、テレビに映っていた深海生物の特番、それから上野の博物館で見上げたケルプや大きなクジラ、それらがまざりあってできた、わたしのなかにある海を思い出す。
車が近づいてきて、遠ざかっていく。波音を立てながら。
まどろみのなかで雨に降られる感覚に別れを告げて、わたしは毛布から這い出した。

AM 8:00
天気予報が好きだ。生活している人を感じられるから。キャスターの女の人が都市名を告げるたび、わたしは思いを馳せる。洗濯物はどうしよう、靴下の替えをもっていった方がいいかしら、玄関にタオルを用意しておこう、億劫だけど長靴で行きましょう。家の中でソファーに身を任せ、慌ただしく出ていく傘を携えた人に「行ってらっしゃい」と声を掛ける人。

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