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【新連載企画】世界を、様々な角度で

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【小説】吹き出す、膨大な量の青い雲

「ああ、あの日のことは鮮明に覚えてる。俺は分娩室の前なんかじゃなく外回りをしていた街の一番勾配が強い坂道で、夕陽を眺めてた。今でも言われる。『あの時出産を見守ってくれなかったから、いつもあんたにはメインディッシュを少なく作る』ってね。もちろん、反論の余地なんかないさ」

 少し薄くなった髪を弄りながら、男性は照れた表情を見せた。

——意外でしたね、息子さんからは夫婦円満で今でも二人で観に来ると仰

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