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〆切本2

“どんな仕事にも〆切はあります。企画書、プレゼン資料、納品物。この本には名だたる文豪、作家たちの〆切とまつわるエピソードが綴られた言わば言葉のプロフェッショナルによる〆切言い訳集。”と始まったNNの本棚。誰が読んでいるのか、どこで話題になっているのかも知らず、とにかく好き勝手に本を選んでその本のおもしろさをドリップ。まとめていった本企画もきょうでおしまいです。
最後の推薦書は第一回目にご紹介した“〆切本”の続編“〆切本2”です。
時代が変わっても、変わらず〆切はやってくる。本書も資料を捨てれば楽になるという甘い誘惑にマケズ、いっそ植物になるかという幻覚にメゲズな〆切のプロたちの作品が集まっています。

作家の井上ひさしさんの“井上ひさしの遅筆詫び状”の中でいろいろな事件が起こり出します。
先ずはワープロの調子が悪くなり編集担当にこう切り出します。
「小生が使っているワープロ機。こいつは時々、文書をどこかに隠してしまう癖があり、まったく閉口しています。それにワープロは完全に目をだめにしてしまいますね。長時間使っていると『ワープロ酔い』も発生します、ワープロにはいろいろ問題があるようです。」
次に奥さんが産気づいてしまいます。「今朝方からのお産さわぎで睡眠時間がなくてふらふらですが、もうすこしがんばります。」そして最後は「睡眠不足でさっぱり能率が上がりません。ほんとうに申し訳ありません。ここで数時間、仮眠を取らせてはいただけませんでしょうか。」
物を壊したり、奥さんを妊娠させたり、理由は様々ですが、とにかく〆切をどうにかして伸ばす〆切のプロさが伝わります。他にも、本の装丁をめくると至るところに〆切を言い逃れる、開き直る、心の声が散りばめられていて、
「これは約束を守らなかったのではなく“間に合わなかった”という現象であり、」
「ここで数時間、仮眠を取らせてはいただけませんでしょうか。」
「本当にやる。やると云ったらやる。今夜は寝る。」
「一度原稿を引き受けると借金をしたと同じようなものだ」
「俺は、樹になりたい。」
「さようなら、私の信用!」
そんな中、小説家の源氏鶏太さんは〆切に対してこう語っています。
「恐らく作家が成長するのは、書けないで夜の道を歩きながら、あるいは雨の音を聞き、あるいは星空を仰いで、“俺は、ひとりぼっちで、この仕事を完成しなければならないのだ。”と、襲ってくる絶望感に耐えているときであろう。」
このプロジェクトで、ぼくも何度となく〆切を守れずに担当者に様々な言い訳をしてきました。
この場を借りて、お詫びとお礼をさせてください。ほんとうにありがとうございました。
終わりは始まり。また新たな〆切がはじまることでしょう。しかし、いまはこう思うのです。

責任、解除!

*本原稿はもちろん〆切を過ぎたものです。最後までご迷惑おかけしました、、、

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