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パキスタン自然に優しい「竹の家」

パキスタンでは、2022年6月から続くモンスーンの記録的な大雨に、北部の山間部の氷河融解が追い打ちをかけ、同国の全域で大洪水が発生しました。国土の3分の1が水没し、多くの人々が家や財産を失いました。

2022年の大洪水

洪水からの復興の中、世界的に有名なパキスタン人建築家であるヤスミン・ラリにより、洪水に耐えられる「竹の家」が被災地に建設されました。破滅的な影響を受けた地域では、伝統的な家は土壁と竹でできています。洪水後に建てられた「竹の家」は先住民の知識と近代的な工学を組み合わせて設計されており、伝統的な家よりもはるかに耐久性があります。ヤスミン・ラリの組織であるパキスタン・ヘリテージ財団は、20 年にわたり気候変動の影響を軽減するために災害に強い住宅の建築に取り組んでおり、2022 年以来、最大 10,000 戸以上の住宅を建設しました。

ヤスミン・ラリさん

「竹の家」には様々な工夫が施されています。屋外に設置された台所では、直火での調理による健康と環境への悪影響に対抗するため、泥と石灰石膏でできた調理台も開発しました。牛糞やおがくずなどの農業廃棄物を燃料とすることにより、薪の消費量を大幅に削減できます。

屋外の台所

「竹の家」が建てられた村では廃棄物ゼロシステムが推奨され、住民は自給自足のため、野菜を育て鶏を飼い、トイレから出る排泄物を堆肥に使います。地元住民に持続可能な暮らし方を教育することで、この村は慈善活動や寄付金への依存を減らし、自分たちで立ち上がっていくことができます。

竹の家

「竹の家」は高床式になっており、洪水時にも内部への水の浸入を防ぎます。基盤となる竹は防蟻性を高めるために養生され、壁に使用される土は石灰と籾殻を加えて強化されます。竹でできた屋根は葦で覆われ、茅を何層にも重ねて仕上げることにより、空気が内部を還流し涼しさを保ちます。また、急勾配の円錐形の屋根により、内部は雨水の浸入から保護されます。

竹の家

「竹の家」は、農村部や災害が発生しやすい地域などに低コストで環境に優しい住宅を提供するという取り組みの一環であり、強度、柔軟性、持続可能性をもつ竹は、パキスタンのような地震が多い地域では建築に理想的な素材となっています。

建築材料となる竹

「竹の家」は、地元で入手可能な材料と伝統的な建築技術を使用して簡単に建設できるように設計されており、高価な輸入材料や熟練労働者は必要ありません。さらに、竹は成長サイクルが速いため、木材やコンクリートなどの他の建築材料に比べて比較的早く補充できる再生可能な資源です。地元住民が建設プロセスに参加することでコミュニティのつながりを促進しています。

竹の家

このプロジェクトは仮設住宅を提供するだけでなく、被災地や被災者に向けた社会的責任のあるアプローチであり、パキスタンの住宅ニーズと環境問題の両方に取り組んでいます。

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