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パキスタンのユナニ医学

ユナニ医学(Unani Medicine)とは、パキスタンを含む亜大陸のイスラム文化圏で行われている伝統医学であり、古代ギリシャの医学を起源にします。ユナニとは「ギリシャの」という意味で、アレクサンドロス大王の東方遠征時にインドの仏教医学と混ざり合いました。ユナニ医学は、中国医学、アーユルヴェーダ(インド伝統医学)とともに、世界三大伝統医学のひとつとされています。

西洋医学では病気を特定の臓器やシステムに関連付けることができますが、ユナニ医学の治療は、身体のさまざまな臓器やシステムが互いにどのように影響し合うかを理解することにかかっています。ユナニ医学の理論としては四体液説を採用しており、これらの体液の過剰によって、個人の気質が決まります。体液、気質、要素の完璧なバランスが健康に必要であるという概念に基づいています。

4つの体液(血液・粘液・黄胆汁・黒胆汁)

ユナニ医学は現代医療と共存しながら、パキスタン文化の重要な一部であり続けています。この記事では、パキスタンにおけるユナニ医学の役割を探り、この地域で広く実践されているもうひとつの伝統的な体系であるアーユルヴェーダとの違いに焦点を当てます。

パキスタンにおけるユナニ医学

施術者:ハキム(Hakims)として知られるユナニ施術者は、自然療法とホリスティック 療法(肉体と精神のバランス)に関する知識が高く評価されています。慢性疾患、ライフスタイル関連の病気、予防ケアについてハキムに相談する人が多くいます。

ハキム

ハーブ療法:ユナニ医学はハーブと天然物質に大きく依存しています。よく使用されるハーブには、さまざまな治癒特性があると考えられているアシュワガンダ(ashwagandha)、アムラ(amla)、アロエベラなどがあります。

ユナニ医学の薬

食事:アーユルヴェーダと同様に、ユナニ医学はバランスの取れた食事と健康的なライフスタイルを重視しています。ユナニ医学は、食べ物を温かいものと冷たいものに分類し、個人の気質に基づいて食事を処方します。

ユナニ医学のハーブ

ユナニ医学とアーユルヴェーダの違い

ユナニ医学とアーユルヴェーダはどちらも自然治癒を重視する伝統的な医学体系ですが、哲学的基盤、診断方法、治療アプローチはそれぞれ異なります。ギリシャに起源を持つユナニ医学はイスラム文化の影響を大きく受けてるいっぽう、 古代インドに起源を持つアーユルヴェーダはインド哲学と深く絡み合っています。両者の主な違いは次のとおりです。

哲学的基盤

体液理論に根ざしたユナニ医学は、4つの体液 (血液、粘液、黄胆汁、黒胆汁) のバランスに基づいています。健康は、食事、環境、ライフスタイルなどの要因の影響を受けるこれらの体液のバランスによって達成されます。いっぽう、アーユルヴェーダは、身体的および精神的プロセスを支配する生体エネルギーの力である3つのドーシャ (ヴァータ、ピッタ、カパ) の概念に基づいており、健康とは、これらのドーシャのバランスが取れた状態です。

ユナニ医学
アーユルヴェーダ

診断方法

ユナニ医学の診断には、患者の気質を評価し、脈、尿、便、および一般的な身体状態を検査することが含まれます。いっぽう、アーユルヴェーダの診断には、脈診によるドーシャの評価、舌、目、および全体的な身体的および精神的健康の検査が含まれます。

ユナニ医学の診断

治療方法

ユナニ医学の基本的な治療方法は、レジメンタル療法、薬物療法、および外科手術です。一般的に、生薬、マッサージ、およびカッピングが使用されます。いっぽう、アーユルヴェーダの治療には、パンチャカルマ (解毒手順)、生薬、食事に関する推奨事項、ヨガ、および瞑想が含まれます。治療は、個人のドーシャ・バランスに基づいて高度にパーソナライズされます。

ユナニ医学のカッピング

まとめ

イスラム的な背景を持つユナニ医学は、イスラム教徒が大部分を占めるパキスタンの人々に寄り添い、信頼と受容を育んでいます。ユナニ医学はパキスタンで研究され続けており、現代の医療に価値ある補完を提供しています。

「ルーフ・アフザ」ユナニ医学から作られた飲み物