学術誌が影響力のあった癌マイクロバイオーム論文を撤回

哉百名

2024年7月5日 09:09

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学術誌が影響力のあった癌マイクロバイオーム論文を撤回

https://www.science.org/content/article/journal-retracts-influential-cancer-microbiome-paper

血液サンプルの微生物ミックスから腫瘍がわかるという主張が、他の研究とその知見を商業化する企業を生み出した。

2024年6月26日
5:40 PM ET
キャサリン・オフォード

人の常在微生物に基づいてがんを検出すると主張した論文が、その方法に対する批判を受けて撤回された。

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さまざまなヒトのがんに関連する特定の微生物シグネチャーを特定したと主張し、大きな反響を呼んだ論文が、ジャーナル編集者が結論に裏付けがないと判断したため、撤回された。

この研究では、機械学習アルゴリズムを用いて、人体に常在する特定の微生物とがんの有無や種類との関連を検出し、時には100％に近い精度で検出した。2020年に『ネイチャー』誌に発表されたこの研究は、他のグループによる複数の追跡研究を生み出し、また、この結果を早期がん診断のためのツールにするための企業も設立された。しかし、批評家たちが論文の手法に誤りがあると主張したため、この研究結果は批判を浴びることになり、同誌はまず2月に論評を発表し、最終的に今日論文を撤回するに至った。

「論文発表後の専門家による査読で、提起された問題点と著者らの回答が確認され、論文で得られた知見の一部が影響を受け、対応する結論がもはや支持されないことが判明した」とネイチャー誌の撤回通告には記されている。著者全員がこの決定に同意している。

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カリフォルニア大学サンディエゴ校の微生物学者で、マイクロバイオーム研究の第一人者である著者のロブ・ナイト氏は、ScienceInsiderの電子メールに、撤回が正当化されるとはいえ、「我々の研究チームは、マイクロバイオームが腫瘍の種類を区別する能力に関する2020年のNature誌のオリジナル原稿の主要な結論は真実であると信じています。私たちは、方法論の改善とより包括的なデータセットを用いた今後の研究で、この見解をさらに説明することを楽しみにしています」。

この撤回論文は、すでに他の研究にも連鎖的な影響を及ぼしている。国立がん研究所の研究者であるEytan Ruppin氏は、2022年に Nature Communications誌に掲載された研究に2020年の論文のデータセットを使用したが、昨年、この疑惑がどのように展開するかを見守ると述べた。彼は今、ScienceInsiderに対し、自分のチームが行動を起こす「適切な時期」だと語っている。「修正されたデータで分析をやり直すか、我々の研究を撤回するかです」。

2020年の『ネイチャー』誌の研究では、ナイト博士らは、がんに罹患した人の血液と組織サンプル、およびそうでない人のサンプルに含まれるDNAのデータベースを、既知の微生物DNAのデータベースと比較した。研究者らは、機械学習アルゴリズムを用いて、理論的には血液サンプルからがんの有無とその種類を予測できるコンピューターモデルを開発した。

2019年、ナイトと論文の筆頭著者であるグレッグ・セピチ＝ポアは、研究を商業化するためにマイクロノーマ社を共同設立した。Micronomaは数百万ドルの資金を調達し、臨床研究に移行することを望んだ実験的な肺がん血液検査を開発した-この検査は昨年、米国食品医薬品局から「画期的デバイス」の指定を受け、優先的に審査されることになった。

しかし、英国の研究者たちは『ネイチャー』誌の研究結果の中に奇妙な点があることに気づいた。例えば、ナイト博士の研究チームは、膀胱癌を示す微生物の中に海藻バクテリアを挙げていた。英国の研究者たちとジョンズ・ホプキンス大学の計算生物学者スティーブン・サルツバーグは、昨年投稿したプレプリント（現在はmBioに掲載）で、さらに踏み込んで "重大なデータ解析の誤り "を詳述した。

彼らによれば、ナイト博士のグループは、がん組織データからヒトDNAを適切に除去することに失敗し、何百万ものヒト配列を誤って微生物と同定してしまったという。また、研究チームの解析における別の計算ミスにより、データ中に幻のパターンが誤って生成され、がんと微生物との間に関連がないにもかかわらず、関連があるように見えてしまった、とSalzberg氏らは書いている。

当時、Knight氏らはこの批判を否定し、論文の結論を根本的に変えるものではないと主張した。しかし2月、『ネイチャー』誌は論文に "この論文で示されたデータと結論に懸念がある "との注釈を加えた。2020年の論文のデータの一部を再分析した別の論文も含め、ジャーナルは著者からの追加回答を検討した結果、論文の撤回を決定した。

サルツバーグはこの決定に満足しているという。「論文の問題点に気づいた時点で、適切な対応は撤回しかないと思いました」。他の研究者も肯定的な反応を示している。「ノッティンガム・トレント大学のバイオインフォマティシャンであり微生物学者であるレスリー・ホイルズ氏は、この研究には関与していない。

この研究結果に基づいて作られた技術の運命は不透明である。2023年、当時マイクロノーマ社の社長兼CEOであったサンドリーヌ・ミラー＝モントゴメリー氏は、ScienceInsiderに対し、同社の製品は影響を受けておらず、マイクロノーマ社は "独立した独自の微生物データベース "を構築したと語った。しかし、同社は昨年以来ウェブサイトにニュースを掲載しておらず、ミラー・モントゴメリー氏は昨年秋に退任した。後任のエディー・アダムスは先月、マイクロノーマ社が "実験機器整理 "の一環として "大量の科学機器を売却 "するとソーシャルメディアに投稿した。アダムズ氏も同社もコメントの要請には応じなかった。

研究者らは、今回の撤回が癌マイクロバイオームに関する研究全体を無効にするものではないことを強調している。「シーダーズ・サイナイ・メディカル・センターのマイクロバイオーム科学者Ivan Vujkovic-Cvijin氏は言う。

それでも、このような複雑な方法を用いた研究に無批判になりすぎることへの警鐘である、とホイルズ氏は示唆する。「マイクロバイオームコミュニティは、バイオインフォマティクスツールや機械学習アプローチの限界についての理解が進むにつれて、研究成果を再評価する姿勢を持つ必要があります」と彼女は言う。

doi: 10.1126/science.z2xkuua

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