太陽の次は

 はるか遠い昔、夏のある日。小さな国に1つの   爆弾が落とされた。太陽の表面温度と同じ火球が放射能と爆風をまとって町を襲った。この恐ろしい兵器を生み出したのは、海を越えた先にある超大国である。
神を信仰する、ある国の教祖がこう言った。   


ーー彼らは科学を信仰し、偉大なる『太陽』をその手に掴んだのだーー



 昔、世界中の国が互いを傷つけ合い、虐殺の限りを尽くし、絶えず戦争が勃発していたらしい。今の時代では考えられないことだ。今ではどこの国も互いを信用し、話し合いで全て解決している。戦争以外で問題を解決する方法を、人工知能が世界に溢れるあらゆる情報を基に分析し答えを出してくれるから。

 僕の国では、犯罪は滅多に起きない。       犯罪者予備軍の人達を人工知能が分析して隔離し、  治療してくれるから。犯罪が起きる前に、いち早く人工知能が未然に防いでくれる。おまけに更生までしてくれる。


 僕の国では病院を見かけることがない。      だって必要ないから。人工知能が国民の健康を管理している。食事のバランスや運動まで、全て人工知能にしたがって生きているから。

 僕たちは、互いに顔を合わせる時、人工知能が相手のあらゆる個人情報を明示してくれる。スマートグラスをみんな付けてるから相手情報が視界にすぐ映し出される。


 世界のあらゆる情報が人工知能に管理され、体系化され、生きていくことに困らなくなった。悩みが無いのが悩みと言っても良いだろう。人工知能が、人生の道標となってくれている。僕らの時代は、「人類史上最も幸福度の高い時代」であると言われている。神様がようやく地上に降りてきてくれたんだと僕は思う。でも、死んだおじいちゃんが僕に言った。

「人間は神を地上に引き摺り下ろしたんだ。あの戦争で、太陽をモノにしたように。」

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