天使を殺せ
"世界に再び救世主が地上に現れる"。自称"天使"が僕に告げた。
「人間よ、私に代わってこの事を世界中に知らせなさい。」
「天使様、教えてください。人類にもらたす災厄とは何ですか?私たちは何によって破滅の道を辿るのですか?」
「世界は消えない炎に包まれ、死の灰が降り注ぐ。人類は逃げ場のない世界で一瞬にしてその魂を抜き取られる。」
天上の世界の人たちはいつでも私たちの常識では測れないものだ。だから太古より人間は説明しようのない現象や概念に後付けでチグハグな辻褄合わせの言葉でその正当性を築いてきた。
しかし現在世界でもっとも信仰されている宗教は"科学"だ。神でもなければ隣人でもない。仮説を実験や数式、データを用いて説明して証明する。これ以上に人を納得させる術はない。
天使に問う。
「あなたが世界中の前にその姿を見せて神に託された仕事を果たしてみては?あなたの姿を信じる人は誰一人としていません。あなたや神は今こそその姿を概念から物質に変える時が来たのです。」
どのみち世界は彼らを科学でも拷問道具でもなんでもその身体を縛り上げるだろう。姿を現すことを否定すれば私は世界を煽って天使をこの世界に引き摺り下ろし縛り上げるだろうし、姿を現せば世界に災厄をもたらすだなんて脅迫をしかけてくる罪人を法で縛り上げる。災厄が来るから彼らが現れるのではない。彼らが現れるから災厄が訪れる。事件が起こるから名探偵が来るのではない。名探偵が来るから事件が起きる。
もう誰も天上の世界の存在を認めない。
この世界の人間は既に天使を殺す力を手にしてる。
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