詩│点す手
鉄夏の月を静かに見ている
ヘアピンを噛み
自分の髪をきつくさす
君の繊細に光る微笑みを
その笑顔を奪ってしまった
風のように消えてしまいたかった
微笑みが戻るなら
きっと自分の為だと言われるかも
しれないけど
そうだね 何もできない柔な心
諦めて 諦めて
そんな術しか知らずに生きてきた
そんな風にしかできなかった
他に見つけられなくて
途方にくれて
それでも 詩の世界では
わがままに生きられた
あきらめ悪くなれた
だから こんな私でも
君に恋が出来たのかな
日だまりのような君との時が
脳裏によぎる度クラクラしてしまう
どこかにそんな希望の星が
石ころになってやしないか
探してみたりする悪い癖
君を傷つけたくないと
その思いで自戒をすることだけには
たけてしまった竹箒
レレレと掃いたらすっかり心に
冬の風が吹く
君の歌は
そんなときに吹く春風
君の歌は
冬の心を優しく包む
君はそんな人だ
言葉を紡ぐ二人の恋の季節は今
いつどきか
夏の街灯に透ける美しい緑は
落葉する前には紅く紅葉をする
真昼の白いひかりは
日が沈む前には真っ赤に染まる
限りある時を知っているから
恋い焦がれる心は茜色
それでもやってくる枯れおちた後の静けさ
日が沈んだあとの闇の中でも
鉄夏の月は放つ
冷めたふりでも
熱を帯びた月あかり
あたたかに夜を灯す
一人寝の子供心に
路地裏の猫に寄り添うように
君はそんな人だ
私は見た
終わったような静かな窓に
しっかりとした眼差しで
灯りを点す君の手を