尾藤 有哉/尾藤農産
「40歳までにトラクターを降りる!」5代目の目標は経営に専念
■プロフィール
明治時代から続くじゃがいも農家の5代目。札幌学院大学経営学部在学中の2年生のころから飲食店向けの販売担当として、商品の受注や在庫管理、発送作業などを担当し、卒業後は父の会社に入社。
120ヘクタールという広大な農地を誇る尾藤農産は、祖父が1969年に法人化し、4代目の父が、離農した近隣農家から20ヘクタールずつ3度引き継いで現在の規模に拡大。
さらに30年前からは微生物とミネラルバランスを生かした土づくりに力を入れている。冬の間に雪室で貯蔵熟成させた「雪室熟成じゃがいも」は、東京や大阪の有名レストランでも提供される人気ブランドとして知られる。
■農業を職業にした理由
農業が国から長い間保護を受けてきた一方で、生産者自身が販売力を身につけていないことから、あとつぎとして農作物を卸売業者に安く買い取られる現状を変えたいと考えていた。
大学では経営学を学びながら、週末は父親の会社で実際の販売作業を経験。自分たちの作物にどんな価値があるのかを正しく認識することで、農産物の地位が向上する仕組みを整える必要性を確信したという。
父の会社に入社後は、畑作業のかたわら自社のECサイトを立て直し、産直サイトへの出店を広げることで、直販体制の強化をはかっている。「これからの農業は、畑をみているだけでは生き残れない。
まずは自分で成功事例を作って周囲にも刺激を与えたい」という気持ちを胸に、事業承継に向けて準備中だ。
■農業の魅力とは
日本の農業は、国の保護下に置かれていた分、いくらでも成長する可能性があるのが魅力だと思います。
そもそも農家でなければ、農地取得や技術の継承が難しい点などが新規参入を妨げる最大の関門となり、多くの企業が農業参入から撤退していきました。
しかし、保護を受けている内側から新しいことを挑戦するのは、競争相手が少ない分、可能性があります。
農家が力を失って、大手メーカーの指示通りにしか生産できなくなっては終わりです。
世の中の市場と自社製品を理解し、自ら販売できるための経営基盤を強化することで、高級野菜ブランドメーカーとして、新しい農業者の形を創ることを目指しています。
■今後の展望
父の代までは、農協や菓子メーカーなど、toB向けの出荷が大半を占めていたが、今後は自社販売に力を入れて、直販比率を3分の2に増やしていきます。
年間売上は2億円規模に成長しており、この6年で倍増しました。これはじゃがいもなどの直販や僕ら兄弟の人手が増えたことで、農地面積あたりの収量が上がったためです。
現在は、両親と僕ら兄弟の4人の家族経営で、季節雇用としてシルバー人材センターなどから派遣してもらっています。
しかし家族経営だと新しいことが生まれにくいので、今後は外部の人材を積極的に雇用したり、部門ごとに売上の目標を設定し、会社の成長スピードを上げる基本的な仕組みを作っていきます。
この先10年で販路開拓や製品開発、販売体制を強化し、40歳までにはトラクターに乗らず経営に専念することで、先祖代々の家業をしっかりした経営組織に発展させていくのが5代目としての役目です。
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