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【三国志の話】三国志大文化祭2022

 三国志学会の前座的なイベントとして、オンラインでも開催されました。今年もマニアックな話が聞けて大満足でした!


川本喜八郎かわもと きはちろう『三国志』人形の魅力

細川晋ほそかわ しん(人形劇アニメーター)

細川氏の紹介

 1982年のNHK人形劇三国志の放送からちょうど40年ということで、登壇頂いたとのこと。

 細川氏は、川本先生の遺作となった『死者の書』の作品化時のアニメーションや、2019年「三国志特別展」(東京国立博物館)での飾り込みなどを担当されました。

人形劇アニメーターの仕事

 細川氏の仕事には三種類あって、それぞれの違いを説明されました。
 ・人形アニメーションの仕事は、1コマづつポーズを決めてスチル撮影を繰り返すこと。パラパラ漫画を作る要領ですね。
 ・人形劇の仕事は、人形の下から手を入れてリアルタイムで動かすこと。
 ・飾り込みの仕事は、展示のためにポージングを決めることだが、人がいない状態で静止させるために、人形の手足にワイヤを付けて上から吊る必要があるとのこと。

 その後、『飯田市川本喜八郎人形美術館』の紹介があり、会場に持ち込んだ関羽かんう人形のポージングの実演になり、最後に東京都渋谷区の『川本喜八郎人形ギャラリー』の紹介、と続きました。

 上述した三種類のうち、飾り込みの仕事について最も時間を割いて話して下さいました。
 技術的な面で難しいのは孟獲もうかくで、背中に羽飾りを背負っているから気を遣うとのこと。

 逆に表現の面で難しいのが孫権そんけんで、とにかく地味(!)であると。呉の陣営としてグループで展示する場合は周瑜しゅうゆが目立ってしまうので。「三国志特別展」では単体で置けたので都合がよかったそうです。

 複数のスタッフがいる場合は、現場でそれぞれの意見を聞きながら微調整を繰り返す(ときにはバラして一からのこともある)とのこと。だいたい一体あたり10~20分、長いと1時間くらいかかるのだそうです。

 講評の柿沼先生から、(同じく1980年代という早い時期に三国志作品を手掛けた)横山光輝よこやま みつてる氏との関係性はどうだったのか、それから服装についても興味深い、というコメントがありました。

日本の中の『三国志』

岸田祐忠きしだ まさなり(三国志学会会員)

 国内の関帝像や三国志ゆかりの寺社をくまなく調査する、フィールドワークがすごい人。

 岸田氏は「演義」か「正史」かという分類ではなく、三国志作品ごとに異なる世界観に魅力を感じる、とのことです。

三国志スポット

 まずは三国志スポットの紹介で、前述の細川氏も詳しく紹介した『川本喜八郎人形美術館(長野県飯田市)』と、『川本喜八郎人形ギャラリー(東京都渋谷区)』。
 関西に移り、横山光輝ゆかりの『KOBE三国志ギャラリー』。同じく神戸市長田区にあるカフェ『Cha-ngokushi』の紹介では、面白メニュー「龐統ほうとうのほうとう」が爆笑をさらっていた?(少なくとも柿沼先生のツボではあったらしい)
 『中国史CAFE阿斗あと』(大阪市生野区)は、2022年7月にopenしたばかり。あとは、日本各地の関帝廟。

おはようございます。お休み中は改めてメニューをご紹介。 《龐統のほうとう》 甲州名物ほうとう麺に三国志人物、龐統になぞらえた具が入ってます。鳳雛の鶏団子と卵、ミニ好好水餃、連環の鎖蒟蒻、博才の白菜! 今日も自粛中ですが、再開の際はまた宜しくお願い致します。

Posted by Cha-ngokushi(ちゃんごくし) on Wednesday, April 15, 2020

関帝像と絵馬

 そこから、関帝廟じゃなくても関帝像はあるよ、という話に。岸田氏によれば、日本には「関帝廟系」「黄檗宗おうばくしゅう」の二系統の関帝像があるとのこと。

 中華街の華僑かきょうが商売繁盛の願掛けのために、関帝廟に関帝像を置くのは理にかなっています。それに対して、黄檗宗の複数の寺院に置かれているものもあり、はじめに大本山の萬福寺に開祖隠元いんげんが持ち込んでから派生していったらしい。
 変わり種としては、臨済宗単伝庵という寺院。ここにある関帝石像のご利益はなぜか病魔退散ですが、「ただし喘息は無理です」とお断りしているとのこと。

 次に、各地の寺院に奉納される絵馬の紹介。三国志にまつわるものでくくっていますが、やはり関羽の登場頻度が圧倒的。
 有名なところでは、清水寺の本堂の天井部に「馬上関羽」の絵馬があり、1745年に奉納。金刀比羅宮にも絵馬殿内に「関羽・周倉しゅうそう」の絵馬がありましたが、昨年老朽化で解体されてしまったとのことで、残念でした。

 最も面白かったのが、牛頸平野神社(福岡県)の、「李儒りじゅ帝王何皇后に毒酒を勧める図」。1m近くある巨大な絵馬であることも驚きですが、元ネタとした絵画から少しづつ違っている、いわゆるツッコミどころが満載のもの。当時の作者は大まじめだったのでしょうが。
 岸田氏の言う通り、何皇后かこうごうの代わりに貂蝉ちょうせんが死んでしまったら、その後の演義のストーリーが破綻しそうです。

 最後に寺社彫刻の話があり、天台宗妙見寺(高崎市)や八斗島稲荷神社(伊勢崎市)など。前者はテーマが「単刀赴会たんとうふかい」なのが珍しく、後者はありふれた「三顧の礼」ながら諸葛亮しょかつりょうが遠目に小さく描かれているのが珍しいとのこと。

 絵馬も含めて、三国志ゆかりの作品は、北関東とくに群馬県の寺院に集中しているとのこと。氏が作られているマップも見せて頂き、確かに群馬県、ついで栃木県、埼玉県にマークが多かったですね。

 そのマップには156箇所190点の作品が登録されているとのことで、講評の柿沼先生も「これだけ徹底的に調べている人は見たことがない!」と驚きのようすでした。

 続編にも期待ですね!

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