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「ハードフュージョンってなに?」 Howe/Wooten/Chambers "Extraction"

こんにちは!!!
Everyday Fusion!!!の第2弾でございます!!

さて、今回のテーマは

「ハードフュージョン」

この言葉、僕自身もいつどこで耳にしたかすら覚えていませんが、今回ご紹介いたします名盤は、僕が「ハードフュージョン」の何たるかを本質的に理解した(つもりの?)きっかけとなったものです。

「ハードフュージョン」なるフュージョンの形態について、今のところ1つ推測できることがあります。それは、「海外にこの概念は存在しないだろう」ということ。以前フュージョンが大好きだという、あるアメリカ人ミュージシャンとお話をした際に「ハードフュージョン」という言葉を出したのですが、向こうはこれを知りませんでした。英語で検索しても、まともな検索結果はでできません。

「ハードフュージョン」自体、日本独自の曖昧なスタイルの概念ではないかと思う訳です。

これまでの経験上、「ハードフュージョン」という形態のフュージョンには以下のようないくつかの共通した特徴があります。

それは・・・

【特徴1】

サウンドが「ハード」=「激しめ」であること

【特徴2】

相当に高度な演奏技術が要されること

【特徴3】

リズムが非常に複雑で難しいことが多い


つまり、聴いただけで一般的な「フュージョン」より難しそうであることがわかるというわけですね。
また、高度な演奏技術が要されるということで、ハードフュージョンを演奏するミュージシャンは、楽器の奏者としても非常に卓越した技術の持ち主であることが多いとも言えます。

以上をまとめると、耳に心地よくBGM的に使えるものが多い一般的なフュージョンに対して、「ハードフュージョン」という形態のフュージョンは

高度な演奏技術や複雑なリズムといった「楽器の演奏」
そのものを聴き、緊張感や快感、曲の美しさを感じ取る

という特徴を持つフュージョンと言えるでしょう。

ちなみに、よくハードフュージョンは「ロック・フュージョン」「ヘヴィ・フュージョン」などと書かれることもあります。

前述しました通り、ハードフュージョンを演奏するミュージシャンは、その楽器の世界でも、非常に高度な技術を持つプレイヤーとしても有名であることが多いのです。例えば・・・

Greg Howe (g)
Guthrie Govan (g)
Allan Holdsworth (g)
Alex Machacek (g)
Tony MacAlpine (g)
Brett Garsed (g)
Shawn Lane (g)
Frank Gambale (g)
Richie Kotzen (g) (一部の作品)
Scott Henderson (g)
Gregg Bissonette (dr)
Lenny White (dr)
Vinnie Colaiuta (dr)
Dennis Chambers (dr)
Simon Phillips (dr)
Virgil Donati (dr)
Marco Minnemann (dr)
Scott Kinsey (key)
Victor Wooten (b)
Yiogos Fakanas (b)  

などなど・・・・・

中には少しマニアックなミュージシャンも含まれておりますが、マイナーすぎて上には書いていないけれども、もの凄い上手いミュージシャンだって
まだまだたくさんいるんです

もしかしたら、楽器を演奏なさる方で、上で列挙したミュージシャンの中で、この人はハードフュージョンなんかではないだろう!と思われる方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、冒頭にも書いたように、「ハードフュージョン」という言葉自体、定義づけが非常に曖昧な概念であり、人それぞれで分類に差異が出てきてしまう可能性があるのです。上で列挙したミュージシャンは、僕自身のハードフュージョンの概念と感じ方による分類ですので、必ずしも明確に線引きができるわけではないし、「一般的にこうです」と断言することもできません。その点はご承知いただきたいところでございます。

そもそも、「ハードフュージョン」という形態のフュージョンは、
「ジャズ・ロック」「プログレッシブ・ロック」「インストゥルメンタル・ロック(メタル)」(インストゥルメンタル=歌なし)
という多くの音楽ジャンル/スタイルと混じり合っていたり、似通ったりしていることが非常に多く、こちらの線引きも当然、明確にできるものではありません。

例えば、上にも記載しましたがオーストリア出身の超絶ギタリスト、Alex Machacekの作品に関して言えば、僕は「ハードフュージョン」だと思っていますが、キングレコードは「プログレッシブ・ロック」と表記し、マーキー(ベルアンティーク)では「ジャズ・ロック」と表記されています。

ほら、人によって分類がすごい分かれるでしょう笑

この点については、どこかで記事で特集して考察したいと思っております。しかし正直なところ、これらの違いをはっきりと言語化することはなかなか困難でありますし、僕自身も直感的・感覚的に区別しているところであります。直感的に自分の中での分類をするためにも、かなり多様なフュージョンを聴きこむ必要はありそうです。


さて、ハードフュージョンの概要をご説明いたしましたので、いよいよ今回ご紹介するアルバムに話を進めていきたいと思います!

今回ピックアップしていく作品は、

Greg Howe (g, key)
Victor Wooten (b)
Dennis Chambers (dr)

という超絶技巧のスーパーミュージシャンによる
2003年作 "Extraction"です

Extractionというタイトルからか、歯科医が抜歯(?)をする様子がジャケットになっていますし、右下に歯が描かれていますね。編成からトリオの作品にはなりますが、一部のキーボードソロでDave Cookが参加しております。それ以外のキーボードは基本的にGreg Howeが弾いていますね。

この作品は色々な視点から、本当にすごい。

・非常に高度な演奏技術
・録音の良さと各楽器のバランスの良さ、音のダイナミクス

・すさまじいライブ演奏感
・オリジナル曲の質の高さ
・曲のアレンジの素晴らしさ

僕自身の聴いてきた数多くのフュージョン作の中でも、ここまで質の高い作品はなかなかありません。1曲のカバーを除き、すべてギターのGreg Howeのペンによるオリジナルで構成されていますが、音を聴くと、彼が全面的に前に出ているという感じは全くなく、3人ともに対等に全面に出ています。そして非常に緊張感のあるインプロヴィゼーションを展開しております。
これを上では「各楽器のバランスの良さ」と表現しました。

本作品のミュージシャンについて(簡単に)解説していきましょう。

【Greg Howe (g)(1963〜)】

自分もギターを弾くため、彼の演奏を非常によく聴くのですが、ひとつはっきりと言えることは、「この人の演奏をニュアンスも含めてコピーするのは困難である」ということ。

スケール(音階)からわざと外れた音を弾くという、いわゆる「アウト」した音を多用するという独特のフレージングが特徴的であるGreg Howeですが、彼の弾く「音」だけは追えたとしても、アーミングやスライドを多用した非常に「ウネウネ」した音を弾くことまでを再現できる人はほとんどいないのではないでしょうか。楽器において、単純に「音」を追えれば完全コピーできたと言えるわけでは全然ないですから。昨年、生で観てきましたが、凄まじかったですね。

Greg Howeは、もともと超絶技巧ギタリストを発掘していたアメリカのプロデューサーであるMike Verneyに見出され、彼の主催するレーベルであるメタル専門の "Shrapnel Records"から1988年 "Greg Howe" というセルフタイトルアルバムでデビューを果たします。

ちなみに、このShrapnel Records、もの凄い超絶技巧ギタリストを発掘してきまして、ネオクラシカルというジャンルを確立させた速弾き「貴族」ギタリストのYngwie Malmsteen、MR.BIGのギタリストであるPaul Gilbert、その後任も務めブラックミュージックにもフュージョンにも精通するRichie Kotzen、Guns 'n' Rosesや現在はSons Of Apolloというプログレメタルバンドで活躍しているRon "Bumblefoot" Thalなどなど、超テクニシャンを多数輩出してきたレーベルなのです。

ギターを弾く人であれば、その凄さはよりわかっていただけると思います。

そんなShrapnel RecordsでデビューしたGreg Howeは、Mike Verneyの意向もありデビューアルバムでは相当メタル寄りの音でありました。いかにもShrapnelらしい弾きまくりのアルバムです。そういった意味では、彼の個性は出ているとは言えませんでした。

しかし、ソロ2ndの "Introspection"(1994)で方向性を変えていったのです。一気にフュージョンらしさが増し、今となっては一聴しただけで彼とわかる音が確立していた作品と言えます。特に1曲目の "Jump Start"
その界隈では有名な曲でして、多くのギタリストに影響を与えるような曲でした(Prashant Aswaniというインド系アメリカ人ギタリストは、Introspectionに衝撃を受け、Greg Howeに弟子入りまでしています。そのプレイを観ると、笑ってしまうほどGreg Howeに似ていますよ!!)

余談ですが、Greg Howeはフュージョン寄りのテクニカルギタリストとして知られていますが、実はネオクラシカル系速弾きもすごいんです
1999年のソロ作 "Ascend"はがっつりネオクラシカルの作品ですし、また、ウクライナ人キーボーディストのVitalij Kuprijのソロ作 "High Definition"(1997)では流麗な速弾きを披露しております。

また余談ですが、「ネオクラシカル」(通称ネオクラ)とは、簡単に言えばDeep PurpleのギタリストであったRichie Blackmoreに端を発し、前出のギタリストYngwie Malmsteenによって確立された、ハードロック/メタルにクラシカルなフレーズを持ち込んだジャンルであります。
特にYngwieは、バッハによるバイオリンのフレーズをそのままギターに持ち込んだりしています。ギターソロでは非常に高度な速弾きの中にクラシックが見え隠れしています!!(リンクの動画はもはやバッハのカバー)
ネオクラの音楽理論的な話は複雑なので、ここでは割愛します。

Greg HoweについてはまたEveryday Fusion!!!で取り上げる機会はありますので、またそこでもお話ししたいと思います。

【Victor Wooten (b)(1964〜)】

前回の記事でも触れました、「4弦ベースを使用する超うまいベーシスト」ですね。彼はバンジョー奏者であるBela Fleckと、Bela Fleck & The Fleck Stonesというバンドを結成し、カントリー的ともブルース的ともフュージョン的ともブルーグラス的とも取れるような斬新な音楽を演奏。バンドは4度もグラミー賞を受賞しています。

そこでの活動のほか、セッションベーシストやソロとしても活動しています。4弦を使いながら、それをフル活用することで圧倒的な表現力を持ち合わせています。Stevie Wonderの "Isn't she lovely"のソロ演奏は有名ですし、1996年のベースソロ作 "A Show Of Hands"も知られております。

そのほか、上述もいたしましたScott HendersonSteve Smithとともに Vital Tech Tonesというバンドでフュージョン作品もリリースしておりますね。

最近では、Octavisionなるバンドに参加し、インストゥルメンタル・プログレメタルをやっていたりもしますね。ツッコミどころ満載です。

【Dennis Chambers (dr)(1959〜)】

この人、音楽教育を受けたことがないという叩き上げ系のスーパードラマーであります。もともとはP-Funkと言われたファンク集団の出身でありますが、"Europa"(邦題は「哀愁のヨーロッパ」)で有名なSantanaのバンドでドラムを叩いたり、John ScofieldMike SternBill Evansらジャズ/フュージョン人脈との演奏も多く、幅広い音楽に対応できるドラマーです
(Bill Evansはもちろんピアニストのほうではありません!!!)。

彼のドラミングの大きな特徴として挙げられるのは、圧倒的な粒立ちの良さキレだと思います。前者のリンクを聴いてみてください。彼のスネアは、比較的ピッチの高いものであることもあり、誰が聴いても非常に1粒1粒が綺麗です。後者のリンク、20秒前後から叩き続けるハイハットのキレ、尋常ではないですよね。
(後者の動画でギターを弾いているのはGreg Howeです。そして、この"Proto Cosmos"という曲は、僕が最も敬愛するギタリストであるAllan Holdsworthの代表曲でもあります。Allan HoldsworthについてもEveryday Fison!!!で必ずピックアップいたします)

僕のドラマーの友人曰く、Dennis Chambersは手首の回転をうまく利用しているので、脱力してキレのいい速いフレーズでも叩けるのだそう。自分もドラムをやっていたため、手首の回転の重要性はよくわかります。上でリンクを貼った動画を見ていただければ、手首の回転が良くわかると思います。
(TOTOの"Rosanna"で聴かれるハーフタイムシャッフルですね)

ちなみに、ハードロックファンの視点からも彼を知ることができます。ここ日本でも絶大な人気を誇るハードロックバンド、MR.BIGの超絶ベーシストであるBilly SheehanとオルガンのJohn NovelloともにNiacinというバンドを組んでいましたね。アルバムも何枚か出ております。トリオながら非常に厚みがありますね。緊張感のあるフュージョン/ロックを繰り広げております。

以上、本作品の主人公をご説明したところで、本作品の曲ごとの解説や聴きどころを見ていきましょう。

M1  "Extraction"

オープニングからDennis Chambersのドラムソロ!そして、Greg Howeのギターがクリーントーンで入ってきます。メロディーラインが非常にヴァーティカル(垂直的)に動いており、Brett Garsedが想起されます。その後、一気にゲイン(歪み)を上げてドライブモードに入ります。

ちなみに、Greg Howeの遍歴でIntrospectionのお話をしましたが、その際に「一聴して彼とわかる音」と書きました。実際に、この曲の上の部分でバックに流れるクリーントーンのコードバッキングと比較してみてください。音のキャラクターは非常に良く似ているはずです!!

1分を超えたあたりからは3人みな非常にキレッキレでタイム感がしっかり整っており、圧倒的なグルーヴを感じます。2分15秒前後からGreg Howeのソロですね。前述しました「アウトフレーズ」がはっきりと聴き取れますし、2分40秒での滑らかなレガート(ピッキングせず、指で弦を叩く&引っ掛けるのみで弾く奏法)での速弾きはAllan Holdsworthのようです(元々彼の影響下にあることは確かです)。

そして、4分00でギターとベースのユニゾンを挟んだ後のドラムが凄い。基本的に4拍子が来ているものの、音の割り方が独特であり、リズムが複雑に聴こえますね。Dennis Chambersは、単純な偶数拍子を音の割り方で複雑に聴かせることが得意でして、Cab(こちらもEveryday Fusion!!!で取り上げる予定)というハードフュージョンバンドの"Madeline"という曲でも、ただの4拍子を非常に複雑に聴かせます。

最後、特筆したいのが4分38秒ごろから始まるアウトロ。ドラムとギターバッキングの後、ベースがメロディーを弾き始めます。そのVictor Wootenの独特の音のタイミングは聴きものだと思います。決して拍子から逸脱していないのに、微妙にモタついている感じがあります。

そしてラスト、Greg Howeがベースと同じメロディーをなぞります。ここも凄い。彼の多用する、手を激しく左右にスライドさせることで大きく音程を揺らす奏法です(詳しくはこちらの動画で解説されています)。この奏法やアーミングをロングトーンの随所で使用することで、ウネウネした特徴的な音を生み出しているのです。

M2 "Tease"

先ほどとは変わって、非常にファンキーな曲です。14秒からはじまるGreg Howeのキレのいいカッティングからして、超ノリノリな感じですよね。そして、58秒59秒でも上述の「スライド奏法」による大きな音程変化がわかりやすく聴けます。Victor Wootenのスラップも聴けます。

1分59秒からのベースソロでは滑らかなアルペジオが聴けます。ベースソロ明けには、ギターがワウペダルを使用して、さらにファンクらしいサウンドを作り上げています。

曲後半でのキーボードソロも、オルガンの音でありグルーヴィーさを加えていますし、ファンク寄りのこの曲のムードには合っています。

M3 "Crack It Way Open"

イントロからドラムの16ビートに乗せてギターが駆け回ります。Greg Howeはクリーントーンで弾いた時も非常にうまく、33秒ごろに聴かれる短く切るスタッカートでの音の粒やミュートといった細かい点も完璧です。

1分20秒前後からギターもドライブサウンドに切り替え、ドラムもハイハットをオープンにして、豪快にビートを刻んでいきます。55秒前後ではベースがソロを展開します。音を水平にも垂直にも使い、Victor Wootenお得意のコード弾きを交えています。そのバックで流れているドラムもまた凄い。55秒あたりでは、小さく細かいハイハットの装飾音が何箇所かに聴かれますよね。Dennis Chambersの遍歴にも書きました通り、非常に粒立ちが良いです!

ギターソロを挟み、4分5秒あたりからドラムソロに突入します。ここでも、前述しましたように、4拍子という単純な拍子の中を様々な拍子割りによって複雑化しているように聴かせ、自由に駆け回り緩急のある超絶なソロを展開しています。本当に凄いです。。

テーマに戻り、リズムをユニゾンさせ綺麗に終わります。

M4 "Contigo"

また打って変わって、次は超ラテンフレーバーな曲です。イントロでベースのメロディーが終わった後に聴こえるのは、ナイロン弦のアコースティクギターですね。弦のアタック音が非常にアコギらしいですが、アコギの記載がなく「Gritar Synth」となっているので、おそらくシンセで作っているのでしょうか。

1分17秒からメインテーマが始まります。ナイロン弦らしい独特の暖かみのあるギターのサウンドです。テーマを弾き、ギターソロに移行していきます。右手で弦をミュートしながらピックで弾いており、非常に乾いた音を出しております。メキシコの兄弟ギターデュオのRodrigo y Gabrieraを想起させるようなラテン風のメロディーを軽やかに弾いていきます。上にリンクを貼った動画ですと、1分55秒からミュートをかけたナイロン弦ギターのサウンドをはっきりと聴くことができます。

ギターソロを終え、ベースがコードを弾きつつドラムソロに移行していきます。3分20秒過ぎからは、キーボードのメロディーが「確信犯」的にラテンですよね。Dennis Cambersが高速タム回しなど勢いあるソロを展開し、4分あたりからキーボードソロに入ります。5分40秒すぎにソロを終え、キーボードのみでフェードアウトします。

M5 "Proto Cosmos" (Allan Holdsworth)

本作品中の唯一のカバーソングです。Greg Howeの遍歴の「レガート奏法」の部分や、Dennis Chambersのところでも言及しました、Allan Holdworth(1947〜2017)の代表曲でございます。

正確に言えば、1960年代モードジャズ期のMiles Davisバンドでも活躍したジャズドラマーTony Williams(1945〜1997)のバンド、Lifetimeの1975年作品 "Believe It"収録がオリジナルですが、そこでギターを弾いていたAllan Holdsworthがその後、ライブでもよく演奏し彼の十八番と言える曲になったのがこのProto Cosmosというわけなのです。

余談ですが、僕が最も敬愛するギタリストであるAllan Holdworthのオリジナル曲で、彼の代表曲でもある1986年作品 "Atavachron"収録の "Looking Glass"ではTony Williamsがドラムを担当しております。本作品もどこかでピックアップする予定でございます。

さて、本作品に戻ります。イントロはオリジナルらしく弾いております。
24秒で早速ギターソロに入るわけですが、ここのGreg HoweはAllan Holdworthよりもだいぶ弾きまくっております笑
ものすごい速弾きですね。レガート奏法も多用して縦横無尽に駆け巡ります。アウトフレーズももちろん聴けます。

1分50秒すぎでギターソロが終わり、3分35秒あたりまでキーボードソロが続きます。前回のLee Ritenourで解説しました、Fender Rhodesのような浮遊感のある音で弾いております。そして、アウトロです。3分59秒、最後の最後までギターは止まりません。速弾きです。最高ですね。

参考までにAllan Holdworthバージョンの動画も貼っておきます。
彼の教則ビデオに収録のものと、2006年のライブバージョンです。

M6 "A Delicacy"

Greg Howeによるアコースティックなギターソロ曲です。2分程度と短いですが、ベースラインとメロディーラインを同時に弾き分けており、素晴らしいメロディーメーカーであることがわかります。

2001年、Greg Howeは日本のフュージョンベーシストである櫻井哲夫のソロ作、"Gentle Hearts"に参加したことに伴い、Dennis Chambersと共に彼のツアーに帯同するため来日しました。その際のソロコーナーで"A Delicacy"を弾き、そこから1曲目の"Extraction"に移行する様子は、横浜Motion Blueでのライブを収録したDVDの中で見ることができます。

M7 "Lucky 7"

この曲、7曲目であり"Lucky 7"というタイトルであり、7拍子でもあります。なかなか遊び心のある曲ですね。ギターとベースのユニゾンも非常にハネたリズムになっており、ファンキーな仕上がりです。Greg Howeのカッティング奏法(詳しくはこちらを参照)も素晴らしいです。

2分10秒からベースソロに入ります。丸々1分くらいのソロタイムです。
次にキーボードソロです。またFender Rhodesの音ですね。最後にギターソロが入ります。ワウペダルを使用して、カッティングから速弾きからバリエーションのあるソロを展開します。

M8 "Ease Up"

とてもメロウなイントロから入ります。Greg Howeのバッキングもミュートを聴かせてグルーヴィーですね。ギターも弾きまくりというわけではなく、ここではかなりメロディアスに音を選んでいる感じですね。

1分40秒くらいから、フルートのような音のソロが始まります。これはおそらくキーボードではなく、ギターシンセサイザーで弾いているのだと思います。YAMAHA G10といったギターシンセサイザーでしょうか。
(オランダのフュージョンギタリストRichard Hallebeekもこのモデルを使用しております。動画はこちらから。明らかに普通のギターとは異なった、細長く変わった形をしていますよね)

ギターシンセについて少し。1980年代、"Syhth Axe"(シンセアックス、シンタックスとも)という超画期的なギターシンセが開発されました。中古価格にして1000万を越すという話も耳にしたことがあるくらい生産台数が少なく、販売価格も高価であったため普及はしませんでした。名前は「シンセサイザー+斧(axe)」でつけられており、その名の通り斧のような形状です。

このギターシンセ、なんと前回取り上げたLee Ritenourも1986年作 "Earth Run"で全面的に使用しています。また、先ほど取り上げたAllan Holdworth"Looking Glass"、実はそのオリジナルもこのSynth Axeで弾かれているのです!!ごく一部のギタリストにしか使用されなかった伝説的なギターシンセサイザーです。ジャケットにもちゃんと描かれています笑

仕組みとしては、指板とピッキングする弦は全く別の独立したセンサーが組み込まれていて、付属のフットスイッチで様々な音を作り上げることができます。本体に鍵盤もついており、キーボードの音から笛、ホルンといった音も作り上げることができます。詳しくは上のSynth Axeにリンクを貼っていますので、その解説を参考にしてください。動画では、若かりし頃のAllan HoldworthとLee Ritenourも登場して、コメントしていますよ!!

曲に話を戻します。おそらくギターシンセで弾かれているだろうソロが3分すぎまで続いていきます。そしてギターソロに入ります。先述のように、音を選びながらもスウィープなど高度な奏法も使い、所々で速弾きもしております。そしてギターソロでフェードアウトしていきます。

M9 "Bird's Eye View"

Dennis Chambersによるドラムイントロで始まります。リズムが非常にわかりにくいですよね。拍子としては4拍子ですが、ドラムはその中を5で割っている感じで叩いているのだと思います。ドラムは5つ刻みを切り返しているので。

そしてGreg Howeがクリーントーンでのバッキングとテーマを弾いていきます。54秒あたりからドライブサウンドに切り替わっていますね。2分28秒からギターソロが展開されていきます。最初は歪みを絞って、音を選んでいます。だんだん音数が増えていき、3分30秒すぎから一気に加速していき、速弾きガンガンしていますね。「緩急ある」ソロの見本というべき展開です!

4分50秒ごろでソロが終わりテーマに戻ります。しばらく繰り返した後、最後の最後、5分50秒からドラムソロに入りますね。6分5秒からは、一瞬ですが曲が4拍子で進行している中で、異なる拍子のビートを混ぜてくる「メトリックモジュレーション」が聴けます。そして曲は気持ちよく終わります。Greg Howeのソロの動画や、ライブでも演奏されている動画がありますので、リンクからご覧いただければと思います。

あっという間の50分です。。。


以上、今回も非常に分量が多くなってしまいました。ここまでお付き合いいただいた方、ありがとうございます。本来であれば、フュージョンの歴史的大名盤を取り上げるべきであるかとは思いますが、あえてそのような「典型的・定番」な流れを避けていこうと思い、「ハードフュージョン」をテーマといたしました。

今回はリスナーというよりも、かなり楽器のプレイヤーとしての目線が多かったかとは思います。音楽的な用語、奏法にもかなり言及しています。プレイヤーの方の中には、新たな発見があった方もおられるかもしれません。

次回、何を取り上げようか考え中ではありますが、初回にも書いたとは思いますが、「多くの視点」でフュージョンの魅力をお伝えできるように努力していこうと思います。フュージョンの本は何冊も出ていますが、それらとは異なる視点でお伝えできればと思います。

ちなみに、内容で引用箇所は一切ございません。盗用・剽窃にならないように最大限、参考音源や資料等はリンクに貼るなどしてお示ししているつもりです。以降、本などを参考にした場合などは別途記載するつもりです。写真についても全て自分の所有するものを自ら撮影しているものであり、無断でネットから拾ってきているものはございません。


以上でEveryday Fusion!!!の第2弾記事とさせていただきます。
ご感想などあればお気軽にコメントをいただければと思います。

定期的に更新いたしますので、今後ともよろしくお願いいたします!!

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