新しいことを消化して、表現する力

「豊かさ」って何だろう。

一般的には豊かさを考える時、財力などの物理的な豊かさがベースにあって、その上に精神的な豊かさが積みあがっていくと思います。明日生活していけるかの心配がある中で、精神的に豊かでいる、というのはなかなか難しいのではないでしょうか。もしかしたら、映画「ライフイズビューティフル」のグイドの様に、極限状態においては人間は物理的な不自由さを超えて精神的な豊かさを生み出せるのかもしれないけれど。

ここでは物理的な豊かさではなく、精神的な豊かさについて書いていきます。

私にとって、豊かさとは新しいことを消化して表現する力です。

新しいことを消化する

私の豊かさの定義は2段階に分かれていて、この「新しいことを消化する」が第1段階です。自分のこれまでを振り返ると、学生時代、教員時代、留学期間、転職、と新しいことを沢山経験してきたけれども、それを「経験した」で終わらせずに、自分のものとして「消化できた」ものが自分の人生の豊かさにつながっていると思います。

例えば新米の教員時代。生徒との関係がこじれた、保護者からクレームがあった、生徒が授業が楽しいと言ってくれた、保護者に信頼された、・・・こういった学生時代に出来なかった新たな経験を「辛い」「嬉しい」という経験だけにせずに、自分はどう向き合ったか、同じようにする(しない)ためにはどうするべきか、と次につなげるところまで自分の経験を掘り下げるか、で自分の人生の豊かさにできるかどうかが決まってきたと思います。

しかし、これを続けるのはなかなか難しいのは自分の経験値が上がってくると、「新しい経験」が相対的に減ってくるからです。ただ、「経験」にこだわらなければ「新しい」を見つけるのは意外と簡単だと思います。新しいジャンルの本を読む、新しい言語を学んでみる、新しい料理のレシピを試してみる、といったことでも十分新たな発見に出会えると思います。

一方で、個人的には「新しい経験」が減ったメリットも最近感じるようになりました。それは悪く言えば「鈍感になった」、よく言えば「対処できる幅が広がった」「(少しの事では)動じなくなった」とも言えるかもしれません。以前だったら、ものすごく心配になったり悩んでいただろうことも、自分なりに色々と経験を積んできたことで「まあ、いいか」と考え方に余裕を持てるようになりました。未知の経験であっても、少し対応能力が身についたことで「新しい経験」と認識しなくなったのだと感じています。

表現する力

豊かさの定義の第2段階は新しく経験したことを表現する力。今後、私が伸ばしていきたいと思っている能力です。表現する力が大切なのは、

①第1段階の「自分のものとして消化する」に貢献する

②自分の経験を誰かと共有できる

からです。

ここでは、自分が一番効果的に表現できる方法を見つける、ということがとても大切になってくるのだと思います。表現について考える時、私がいつも思い浮かべるのが、下のフレーズです。

We dance because we cannot express in words.            (私たちは言葉で表現できないから踊るのです)

これは、So You Think You Can Danceというアメリカのオーディション番組を見ている時に耳にしました。この番組は全米で行われるオーディションを勝ち抜いてきた男女20名が、毎回踊りを披露して、審査員や人気投票によって最終的に全米で最も人気のあるダンサーを目指す、という番組です。各ペアやソロダンスの後に、審査員がコメントを出すのですが、上のフレーズは審査員の一人が言ったコメントです。何年も前のことなので、一字一句正確に覚えているわけではないのですが、このような趣旨の発言でした。

各ダンスには表現しているテーマやストーリーがあり、とても明るい気持ちになるものから力強いもの、また胸を締め付けられる様な苦しさ、切なさ、寂しさ、を表現しているものもあり、見入ってしまうことがしばしばありました。ダンスの多くは、メッセージ性が強く、言葉や文化の違いを超えて、振付師とダンサーが表現しているものを痛いほど共感できる作品が多かったです。

ダンサーたちは作品を作り上げていく中で、振付師とテーマを共有していくのですが、それを表現出来た時、ダンサーたちの人生は豊かになったと思うし、そのメッセージを受け取った観客の多くが精神的に豊かになったと思います。

表現の仕方

人それぞれ、自分の一番得意とする表現方法があると思います。楽器演奏、歌、スポーツ、演技、絵画、写真、言葉、手話・・・私は新しいことを経験すればするほど、言葉以外の表現方法に興味を持ち、理解したいと思うようになりました。自分の気持ちを的確な言葉で表現できない時、自分以上に自分の気持ちにぴったりとくる歌詞に出会える時もあれば、歌詞のないメロディーが自分を励ましてくれたり、慰めてくれる時もあります。自分が見たことの無い景色を映している絵や写真が、新しいことにチャレンジしようと背中を押してくれることもあります。

これからも少しずつ自分の豊かさを積み上げていけたらと思っています。

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