学習的な楽観的思考
緊急事態宣言発令で長時間家にいられる間に試していること一つが、これまで積みに積み上げた積読に手をつけることです。読書はその時のブームがあって、我が家には読む時間を取れないうちに興味をなくしたり、買って満足しただけのもったいない本が沢山あります。特に洋書はある程度の気力がないとなかなか読まないので、この機会に1冊でも2冊でも読み切りたいです。
Learned Optimism: How to Change Your Mind and Your Life(邦題:オプティミストはなぜ成功するか)
大学院では教育心理学の授業も取っていた関係で、心理学の論文も沢山読みました。その中で出会ったマーティン・セリグマン博士の唱えた"Learned Optimism"(学習的な楽観主義)という概念がとても興味深く、現在その本を読んでいます。
"Learned Helplessness"(学習性無力感)の研究は知っている人もいるかもしれません。学習性無力感とは、簡単に説明をすると、様々な経験から「自分は何をやっても駄目だ」と無気力になってしまうことです。これは鬱病の原因にもなりえるもので、これまで盛んに研究されてきました。しかし、セリグマン博士は鬱になる人と、逆境に耐え抜いていける人との違いに興味を持ち、物事を前向きにとらえてピンチをチャンスに変えられる人の要因を探り、その結果Learned Optimismという概念を提唱します。
逆境に強い人
本著の中で繰り返し書かれているのが、3つのPです。
Permanence(永続性)
Pervasiveness(浸透性)
Personal(個人性)
何か自分にとって良くないことが起きた時、前向きな(Optimistic)な人は、それを一過性のもの(永続性が低い)、それは特定のものに対して起こったもの(浸透性が低い)、そして自分(もしくは相手)が悪いわけではない(個人性が低い)と考えます。
本の中で紹介されている実験の一つが、生命保険のセールスで業績を上げる人たちの特徴です。ある保険会社ではCareer Profileというテスト(日本でいうSPIのようなもの?)の合格者を採用していたのですが、1年で半分がやめてしまうという状況でした。そこで、セリグマン博士が協力して、どの様な特徴をもつ人材が中途退職せずにセールスで業績を上げるか、を調査します。結果は上記の3つのPが低い人でした。つまり、新規開拓の営業電話を断られても「きっとタイミングが悪かったんだ」「この人はもう別の生命保険にはいっているけど、まだ入っていない人はほかにいるはず」「自分のやり方が悪いわけではない」などと考え、どんどん次の電話をかけ続けられる様なタイプです。
コロナが広まる今、わたしたちが出来る事
また、本著では世界恐慌をくぐり抜け、成功できた人とそうでない人を追跡調査した長期的な研究も紹介されています。これはセリグマン博士の研究ではないのですが、幼少期に世界恐慌を経験し、経済的苦難に直面しても、子どもでいる間に「逆境は乗り越えられる」という経験をした人は、老後の割と早い段階から精神的にも身体的にも充実した生活を送っていたそうです。一方、幼少期に同じように世界恐慌を経験しても、その後に「逆境は乗り越えられる」という経験を持たなかった人は老後の生活も苦しかった人が多かったそうです。
国の経済力が落ちると、失業率はあがり、それに比例して自殺率もあがります。現在、多くの企業が休業、廃業に追い込まれたり、学校が何か月も休校になっています。どう考えてもストレスが溜まって悲観的になってしまう状況ですが、そんな中でも乗り越えられると信じて行動することが必要だと、この本を読んで改めて思いました。一人ひとりが出来ることをして、この危機は乗り越えられたんだと将来の成功体験に出来れば、その後の回復が早くなると思っています。
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