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【読書感想】エンジェルフライト  国際霊柩送還士

AmazonPrimeのドラマを見て、
ノンフィクションのこちらの本が基になっていることを知り、
早速読んでみました。

ドラマも大変面白かったですが、
やはり、すごくきれいに、かっこよく描いてる部分があり
(ドラマなんで当たり前ですが…)
本のほうが少しだけ、
国際霊柩送還士という仕事の過酷さが伝わってきました。
と同時に、大切な人との別れについて考えさせられました。
読んで感じたこと、考えたことを簡単に残しておきます。

1.国際霊柩送還士という仕事

 「国際霊柩送還士」なんてドラマを見るまで聞いたことはなく、
 海外からのご遺体の搬送については、テレビのニュースを見ながら    
 漠然と「高そうだなぁ」と思ったことがあるだけでした。
 「ご遺体の搬送」と一言で言っても、言語や文化の異なる国から荷物ではなく、「ご遺体」を出国させる手続きはとても複雑。
 素人ではどうしていいかわからないその手続きを代わりに行ってくれるのが、この本で紹介されている「エアハース・インターナショナル」。
 そして、そこで働く方々が何よりも大切にしているのは、
 ご遺体とご遺族の気持ち。

 ご遺体って飛行機にのると体液がもれてきたり、
 亡くなった国によっては、しっかり防腐処理が施されていなかったり、
 亡くなった理由によっては、傷が残っていたり、
 日本に届いた時点では、変わり果てた姿で届くことが多い。
 それを、ご遺族の悔いが残らないように最後のお別れができるよう
 生前の姿に近づけて、届ける。
 それが、「国際霊柩送還士」。

 亡くなった方にも、ご遺族にも心を配って、誇りをもって、
 身を削って、この仕事に従事されている方々がいることを
 もっとたくさんの方に知ってほしいし、知られるべき仕事。
 
 一生お世話にならない人のほうが多いし、
 関係ない人生を送るに越したことはない。
 でも、もし海外で大切な人を亡くした場合、そのご遺体の搬送って
 残された者にとっては、一生を左右するような出来事になる。
 中には悪質な業者もいて、ひどい状態でご遺体を保存・搬送し、
 高い料金をふんだくる。最悪、ご遺体が返ってこない場合もある。

 そんな中、亡くなった方にも遺族にも
 こんなにも寄り添ってくれる方々がいる。
 この本からはエアハース・インターナショナルで働く方々の
 仕事ぶりと、仕事にかける気持ちがひしひしと伝わってきて、
 読んでいると胸が熱くなるし、頭が下がる。
 国際霊柩送還士という存在意義の大きさを多くの人に知ってほしい。
 

2.大切な人との別れ

 この本を読みながら常に考えていたのは、家族との別れ。
 もし、海外で夫を亡くしたら、娘を亡くしたら…。

 そんなに信心深いほうではないけれど、やっぱり海外で火葬して…
 という気にはなれない。
 なんでだろうか、海外で火葬してしまうと、例え遺骨を持ち帰っても
 なんとなく亡き人を海外に置いてきてしまったように感じてしまう。
 日本でお別れをしたいと考えてしまう。

 日本に帰ってこれても、そのご遺体が苦しそうだったり、
 傷だらけだったりしたら、最後まで苦しめてしまったような、
 亡き人はまだその苦しみから抜け出せていないような
 気持ちになってしまうだろう。
 最後に見た、最愛の人の表情が苦しそうだと、
 それが一生心に残ってしまうだろう。
 だから、エアハースの方々は、生前の姿に近づけて、
 できるだけ穏やかな表情でご遺族に送り届けることに苦心する。
 最後のお別れの際に心残りなく送り出せたら、残された者も救われる。

 本には、小さな娘をエアハース・インターナショナルに日本からフランスに搬送してもらった方の話が出てくる。
 (※引用にでてくる「利惠さん」とは、エアハースの社長さんです。)

 理沙のためにもっといろいろなことをしてあげたいのに、もう何もできないそう泣き叫んでいた私たちに、それでもまだできることがあると教えてくれたのが利惠さんたちです。
 私たちも利惠さんと出会えたから、理沙のために、『ここまでやってあげられた』という満足する気持ちで、やっと先へ進めたんだと思います。

「エンジェルフライト 国際霊柩送還士」 佐々涼子著

最後の別れ方次第で、遺族は苦しみもするし、救われもするんだなぁと。
それは、海外で亡くなった場合に限らず、どんな形で大切な人を亡くした場合でも同じなんだろうと思う。
その点について、著者はエアハースでドライバーとして働く、
古箭さんの言葉を紹介しているので、引用させていただく。

「人って区切りをつけることが必要なんですよ。海外で故人を送るのと日本で送るのじゃやっぱり違う。きちんとしてやれた、と思えることが、これほどの悲しみの中でもほんの少しの救いになるんです。葬式なんて普段は必要ないと思うでしょう? でもね、そういう現場をいくつも見ていると、思います。ああ、やっぱり必要なんだなって。そして、きちんと葬式をしてやれたってことは大事なんだなって。あんなにつらい目に遭っている人がすごく感謝してくれるんですよ。ありがとう、ありがとうってね……」

「エンジェルフライト 国際霊柩送還士」 佐々涼子著

私は、母(今も健在です、念のため)から昔、
「もし自分が死んだら葬式はしなくていい。墓もいらない。骨は海に撒いてくれればいいから」
と言われて、そうかぁと思っていたのだけど、
今回、この本を読んで、改めて考えてしまった。
やっぱりお別れはきちんとしたいなぁと。
いわゆる「葬式」という形でなくても、
「ちゃんと送り出せた」と自分が思えるように、
後から後悔して苦しまないように、お別れをしないといけないなと…。

まぁ、まだまだ先の話なんですけどね。


なかなか重たい本で、育児中に読むにはつらい部分もありましたが、
娘という存在ができて、
改めて家族の尊さというものをしみじみと感じているからこそ、
いろんなことを考えながら、読めました。

ぜひ多くの人に手に取っていただきたい一冊です。



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