webtoonとは何者なのか?
こんにちは。
山あり谷ありナカタニエイトです!
マンガ原作者でもありますが、ITサービスの経営企画をやってたりします。
というわけで、今日は唐突に「webtoonってなんなの?」について、いま僕が考えていることをまとめてみたいと思います。
はじめに
ザッとした考えはTwitterに載せていますが、より丁寧にまとめていければと考えて、この記事を書いています。
webtoonのみならず、本・マンガのさらなる発展・進化を期待する一人の読者としてwebtoonに関する考察を述べます。
いわゆる個人の見解というやつです。
また、決してwebtoonの方がマンガよりも優れているという気もなく、他方、マンガの方がwebtoonよりも優れているという気持ちもありません。
なぜならば、webtoonとマンガはあくまで「フォーマット等の違い」であり、そこに優劣は存在しないと考えているからです。
優劣があるとすれば、それは各個人の感覚の違いだと思います。
マンガ表現が好きな人もいれば、webtoon表現の方が好きな人もいる。Aという作者の作品が好きな人もいれば、Aという作者の作品が苦手な人もいる。それくらいの感覚です。
要は、コンテンツの良し悪し・好き嫌いという観点であり、それはwebtoon・マンガという括りではなく、「エンターテイメント」「コンテンツ」という括りの中で、個々人が個々の感覚において判断するものであり、他者が決めるべきものではないと考えている次第です。
なので、今回はコンテンツとしての優劣ではなく、主に「webtoonというビジネスと未来について」を中心にお話ができればと考えます。
以上、「はじめに」でした。
Executive Summary
webtoonはコンテンツの総称であり、フォーマットの総称であり、プラットフォームの総称でもあり、マンガ版のNetflixと言える
マンガ含めたコンテンツは「静的媒体」と「動的媒体」で異なる(もしくは相互補完的な)発展を遂げる
webtoonは①デバイスの発達 ②クリエイターの増加 ③AIによる製作補助を背景に成長したイノベーションである
webtoonはメディアミックスに特化した仕組みである
「webtoon」とは?
webtoonとは「スマホでも読みやすい縦読み&フルカラーが特徴的なデジタルコミック」のことです。いわゆる「縦読み漫画」のことですね。
実際にはもっと複雑な要素が絡んでくるのですが、少なくとも現時点では、この理解で問題ないでしょう。
なお、ここ記事では便宜上「マンガ=日本で親しまれている横読みの漫画作品」「漫画=絵と文字で表現された物語」と定義しておきます。
しかし、webtoonはただの縦読みマンガというコンテンツのみならず、フォーマットであり、プラットフォームでもあるという話をこれから進めたいと思います。
「webtoon」だけじゃない!〜デバイスの進化が読書体験を変えている
人類と情報伝達
人類の歴史は「情報を伝達すること」で発展してきたと言えます。
少し前の本ですが「インフォメーション 情報技術の人類史」(著者:ジェイムズ・グリック)に、人類がいかに情報を伝達することで進化、発展を遂げてきたのか。また、いかに人類が情報に支配してきたのか(支配されてきたのか)がまとまっています。
さて、どうして唐突に「人類と情報」の話をし始めたかというと、webtoonもその系譜に則っていると考えているからです。
情報伝達の手段は、大きく2種類の方法に分類できます。
・口で伝える
・書いて伝える
です。
「口で伝える」というのは、その瞬間にその場にいる人に対し物事を伝える手段です。
今でこそ録画機器が発達し、「話し言葉を記録する」ということができるようになりましたが、機械のない時代には当然「話したことを残すこと」はできませんでした。
口伝などによって伝えることはできても、「本人」ではなく第三者を介することになってしまいます。あくまで「話したこと」というのは、誰かの心に残るなどは別としても、完全なる再現ができないものであり、その瞬間に消費されてしまうものです。
そうした中で、人類が発明したものが「絵」と「文字」で「残すこと」です。
・絵を描いて残す
・文字を書いて残す
いずれもその場に記録を留める作業となります。
古来、人類は「壁画」として絵や文字を残しました。その後、「木簡・竹簡」「石板」「粘土版」「巻物」等を経た上で、ついに「冊子」に辿り着き、現在のような「紙本」に形態を変えてきました。
人類は「情報を残すこと・伝えること」の利便性を向上させてきたのです。特に「携帯性」「保存容量」が重要なファクターと言えると思います。
つまり、大容量の情報を簡単に持ち運びできるようにしてきた、ということです。だからこそ、人類は「インターネット」を生み出し、「携帯電話」を発明し、いま現在の「スマートフォン」へとデバイスを進化させていったのです。
今後はメタバースなど自らを情報と一体化させようとしているのは、非常に興味深い進化のような気がします。
メタバースといえば、『攻殻機動隊』というマンガを基にした押井守監督の映画『イノセンス』で、登場人物のバトーさんはこう言っています。
最終的に「人類は情報の中で生きる」という予言めいたものなのかもしれません。
攻殻機動隊にインスピレーションを受けたとされるキアヌリーブス氏主演の『マトリックス』も、まさに情報の中で人類が生きていましたね。
こうして考えると、人類の歴史とは「情報と自らをより融合させて、進化・発展を遂げていった歴史」とも言えるのではないでしょうか。つまり、情報を持ち運びできるようにし、さらに、いつでも取り出せるようにしてきたというわけです。
洞窟に掘られた壁画という情報伝達手段から、手のひらの上で膨大な情報にアクセスできるスマホへと形を変えていったのも納得できることだなと、個人的には感じます。
さて、お気付きのように、ここに来てようやく「スマホ」という言葉が再登場しました。
という本記事の冒頭に戻ってきたわけです。
多くの人がスマホを持ち、膨大な情報を掌の上に保存し取り出せるようにしていく過程で、人々はスマホというデバイスに特化した形式の情報を取り扱うようになりました。
PCとスマホとwebtoon
インターネットが普及していくと、人類は「紙大陸」から「PC大陸」に足を伸ばし、今度は「スマホ大陸」へと活動の場を拡げていったのです。
しかし、ここで疑問が生まれます。
どうして「PC大陸」でwebtoonライクな「PCナイズされたマンガ」が生まれなかったのか?という疑問です。
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