少女

過去の再演。トラウマとフラッシュバック。

寝かしつけていたはずの少女が目を覚ます。

「まだ眠っていていいんだよ」

なんて言えるはずがない。殺したのは僕だから。心の烙印がいつも君を想起させていたのだから。

僕は君のアドボカシーには決してなれない。罪の意識に耐えられないから。
君の言葉を理解できないから。無意識に拒絶してしまうから。

何よりも君を生んだのは僕だから。

「ごめんね」

そう何度も呟いて。結局、誰に言っているのかも分からなくなって。それでも言い続けるしか無くて。

君には悪意がない。常に純粋で嘘をつかない。だからこそ、逃げ場所が無くて、八方塞がりになる。

「あの山の奥に行きたい!あの山の奥にはキレイな花がいっぱい咲いてるんだよ!だから連れてって!」

はるか遠方を指差して、健気に笑うこの子の姿を直視することができなかった。

君は生きられなかった僕なんだ。あの時、この世界から消えてしまった僕なんだ。

山の奥にあるものが何かを僕は知っている。この子にとって良くないものであるということを。

だから、だから僕には…

「ん、どうしたの?泣いてるの?」

不思議そうに覗き込んできたこの子を見て、更に涙が零れ落ちた。

あぁ、僕は何をやっているのだろうか。僕は君の生きられる世界を創りたかった。君が死ななくてもいいような世界を。

できなかった。

僕は何もできなかったんだ。

「ごめんね」






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