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オンライン演習講義のデザイン:状況可視化の重要性

オンライン型の演習講義では、誰が何をやっているのかが見えないので、学生さんの不満がたまりがちです。また、教員も学生さんのことを把握できないので、何がどうなっているかわからず困ります。

先日投稿した下記の記事に書きましたが、

私が担当しているプログラミング演習の講義では、120人の学生が毎回講義中に課題に取り組み、その課題を提出することでプログラミングを習得していくという形をとっています。

毎回、3つ程度の基本課題(講義時間中に解き、正解であると採点されることが必須の課題)、2つ程度の発展課題(講義時間中に解くと加点される課題)が提示されます(例えば、ある回の課題はこんな感じ)。

発展課題については講義時間中には採点しないのですが、基本課題については講義中に採点してフィードバックを学生さんに返していく必要があるので、講義実施側(教員・TA)も、演習講義中はずっとバタバタしています。

で、この基本課題の採点状況が学生さんに見えていないと、いつ採点されるんだ?と学生さんからの不満がたまります。だいたい、Twitterで学生さんが不満を書いているのはこの手のいつ採点されるのか? 飛ばされていないか? などの話だったりします。まぁ、これは病院などで待ち時間が長くなるとイライラするのと同じですね。

ちなみに、できた課題はGoogle Driveで提出するようにしてもらっていたのですが、学生さんが提出し忘れているのに(またはミスを指摘して修正するよう依頼したものについて、再提出し忘れているのに)、「いつまでたっても採点されない!」との不満も出ており、自分がちゃんと提出できているのかということを確認するための仕組みも重要であることがよくわかりました。

ということで、橋本典久先生と高橋治輝先生により、学生さんが課題をGoogle Driveに課題を提出してから、Google Formで課題提出を申請して、Google Spreadsheet上で申請したことが確認できるようにしました。

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その採点がSpreadsheetの上から順になされるということであと何人なのかという順番待ちが分かりやすくなりました。また、教員・TAで採点が重複していた問題も、Google Spreadsheet上でカーソルをその課題に誰かがあてると、その課題は誰かが採点中だと判断して次の課題をチェックすることができるといった感じで、最適化されていきました。

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提出し忘れについても「提出されていません」というフィードバックを返すことで、学生さんはすぐに自分が提出し忘れていることに気づくことができるようになりましたし、どういった問題があるかについてもフィードバックを返すことができるようになったのでとても良い感じでした。また、このどこに問題があったのかというフィードバックが、採点基準の明示になって、他の学生さん達にも参考になったというのもよかった点です。

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さらに、再提出の学生さんには、どこを修正したのかなどオプションでコメントを投稿できるようにになっていたので、学生さんがどう直したのかも明示されるのもよい感じでした(右端を黒にしました、15の倍数の時の挙動を変えたなど)。

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ちなみに、上記のシートでは、提出順にならんでいるだけですが、課題の提出・クリア状況については別のシートで確認できるようになっていたので、学生さんは自分の達成状況を把握できるだけでなく、ほかの人がどの程度終わらせているかが見えましたし、教員からしてもこの学生さんはまだ手が止まっているのでケアが必要だなということが見えてきて、とても良い感じでした。

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なお、一つも課題を提出しない学生さんは、このシステム上で可視化されないので、途中から講義の最初に「check」というファイル自体は何も提出しないものをまず登録してもらい、出席しているのに何も提出できていないという学生さんが可視化されるようにしました(ちなみに、「check」課題は、その申請をだれが最初に行うかというRTAになって一部の学生さんが遊んでいたようでした)。

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ここまでが、演習講義の課題提出およびチェックに関する可視化の話ですが、それ以外でも、講義を実施していたRemo Conferenceでは、どのテーブルに空きがあるのか?(欠席がどれくらいいるのか?)とか、マイクや映像のON/OFF状況や、画面共有の状況が左上のアイコンで示されるので、このテーブルどうなってるのかなということが少しだけ可視化されていて良い感じでした。

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また、質問応答を受け付けるaskTAでも、「TA待ち」「TA対応中」「TA終了」「TA保留」「学生キャンセル」といった情報が可視化されていたので、どれくらい質問待ちがあるのか、自分は何番目なのか、あとどれくらいTAを派遣すればいいのかといったことが見えていて良い感じでした。

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この講義ではありませんが、Zoomでやっていた10人程度の演習タイプのゼミで、「課題として提示した演習課題ができたらカメラをOFFにしてね!」とやると、下の図みたいな感じで、徐々にカメラOFFが増えていくなど、自分の置かれた状況が可視化されるので良い感じでした。私も、学生の状況を把握しやすかったですし。

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ということで、とにもかくにもオンラインタイプの演習講義においては、今何が起こっているのかを可視化する仕組みが重要だよというお話でした。

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Satoshi Nakamura
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