【400字小説】人
「レニクラ、ダサいけど『自由への疾走』の
リフはカッコいいよな~」
「『ロックンロール・イズ・デッド』もな」
結局、それなりにダサいくらいが、ちょうどいい。
ケンバもトキタも自分のダサさに気づいてない、
音楽評論家気触れ。
「ISSAもせつないだろうね、
何年も『U.S.A.』ばっか歌わされて、ダサいのに」
「ISSA、自分でダサいって、わかってんのか?!」
地下のバンド練習室でふたり、
部屋に缶詰めしてる。
ドラマーのユウジロウは仕事で来られていない。
半年ぶりのライブまであと2週間。
ユウジロウは仕事優先で
練習にポチポチとしか来ない。
そのことにケンバとトキタは不満を持っている。
でも、口には出さないので、お互いに知らない。
ユウジロウがバンドのリーダー。
彼が練習に来ないのは、バンド存続の危機。
誰もレニー・クラヴィッツにはなれない
くらいだからセンスはある。
でも、逆に言えばISSAになるくらいの
覚悟もないってこと。
つまり、自分は自分だけなんだ。
◆◆◆
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?