【400字小説】木
ハマチは近年、集中力が続かなくなっている、老い。
「50越えた途端、ガクンと来てさあ」と
ハマチはオオモリに愚痴る。
「そんなの良い方だよ。俺なんて40すぎに老眼になるわ、
忘れっぽくなるわですよ」
ふたりはビールを飲んで興奮している。
平日の昼間から居酒屋で飲める立場のふたり。
ハマチはコピーライターで、常時フリー。
オオモリは中小企業の社長で、たまにはフリー。
オオモリが訊く。
「正直さ、してるの? 今でも奥さんと」
「露骨だねえ。まあ、たまにはするかな」
「いいなあ、俺ノもう使い物にならなくてさ」
「こんなこと言ったらアレだけど、
オオモリの奥さん、きれいじゃん?
それでもダメなの?」
「ダメなものはダメだねえ。
街路樹の枝みたいに簡単に折れちゃう。
性的にも感じにくいし」
「それは受け入れがたい」
「性の喜びを奪われるのは老いだって、
簡単に整理がつかないよ……」
すると突然、オオモリが号泣。
ハマチも共感してもらい泣き。
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