西鶴屋橋(横浜駅西口付近)のサウンドスケープ雑記
大学院の研究がひと段落したところで、身近なサウンドスケープスポットの情報を聞きつけました。横浜駅西口近くにある「西鶴屋橋」には、日本初となる橋へのサウンドスケープデザインが施されているとのことです。早速行ってみましょう。
上記の通りの奥に、今回のフィールドレコーディングスポット、西鶴屋橋があります。
そして、石碑には橋に込められたデザインの意図が記載されていました。
特に最後の一文に、デザインに込められた願いが伺えます。この橋は35年前の1988年、横浜駅西口とオフィス街である鶴屋町をつなぐ役割を担って建設されたとのことです。多くの人々の通勤路として橋の上を行き交うことが予想された中、都会的なハイテクなデザインに加え、人々に自然を感じさせ、文化が生まれる場所になってほしいというサウンドスケープデザインが施されました。
そして、マイクを立ててフィールドレコーディングした音が、こちらです。場所柄かなりノイズが入りますが、音に入り込むことで、確かに「都会の林」とも捉えられるような音風景が広がります。
(実際の現場ではもっと騒々しいです)
サウンドスケープデザイナーの大家である庄野泰子さんと(株)GK設計によるもの。
当時、このエリアの4つの橋には、「自然を感じさせる媒体としての橋」というテーマ設定がなされており、二の橋は「水」、北幸橋は「風」、今回取り上げた西鶴屋橋が「風」、鶴屋橋が「光」と、それぞれコンセプトのもとで建設されたとのことです。
都市部におけるノイズとの調和を図り、自然の林に擬態するようなサウンドスケープデザインが施されていたのは、現在も重要な視点だと思いますし、35年前の当時も先進的だったのかもしれません。よく聴くと確かに、木々がそよぐような音を、聴きとることができます。
このように、「気づく」ことがサウンドスケープの本質であり、その結果として「聴き方」に変化がもたらすのが、サウンドスケープデザインの本意のように思えます。
建設当時の活気が現在の橋の上にあるのかはわかりませんが、当時の様子や音風景に込められた意図に思いを馳せながら西口を眺めると、変わりゆく横浜駅周辺への期待と寂しさが込み上がり、愛着が増してきます。
それでは、ごきげんよう。
【参考】
・西沢健「西鶴屋橋<横浜市> : 重厚で精微な樹々の中からささやきを奏でる橋」、『デザイン学研究』第70号、pp.80-81、1989年。
・庄野泰子「Silence Bridge」、「office shono/soundscape design」(2023年2月16日閲覧)
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