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特許法 判例 Wayback Machine記録情報の特29条1項3号該当性 平成30(行ケ)10178号 知財高裁

 特に、企業HPで開示された製品情報や、パンフレット(紙)の内容は、事後的に「証明する」ことが難しい例が多いです。
これは、HPの内容は事後的に改変することができますし、パンフレット(紙)は国会図書館等では保持されずに捨てられることが多いからです。

 本判決は、企業HPに開示された内容を事後的に確認できるWayback Machineの信頼性に関します。また、Wayback Machineの信頼性に関する情報は、特許庁で公開されている「PCT国際調査及び予備審査ガイドライン」にも記載されています。

1.本判決の内容

1.1 Wayback Machineと、本判決の結論

 ”Internet Archive Wayback Machine”では、過去のHPの内容等を確認できるサービスです。利用する際には、Internet Archive Wayback Machineにアクセスして、確認したいHPのURLを入力して、「BROWSE HISTORY」を押します。

 このWayback Machineに記録された情報が、特29条1項3号の発明に該当するか否かが示されたのが、本判例(平成30(行ケ)10178号)です。本判例では、「Wayback Machineに記録された情報が、特29条1項3号の発明に該当する」ことが判示されました。

 ただし、HPの内容等は事後的に改変される可能性がありますので、別の方法でも公知技術になったことを証明できることが望ましいです。

1.2 判決文(抜粋)

 前記アの記載によれば,甲1は,2017年(平成29年)9月 1 日に インターネットで検索して表示された「ドラコレ旅日記 GREE のアプリ 「ドラゴンコレクション」を楽しむ管理人の日記」と題する「FC2ブロ グ」のコピーであること,同ブログは,広告欄の「スポンサーサイト」, ブログ本文の「11/25 更新情報」,「最新コメント」,「関連記事」等の 各項目で構成されていること,「11/25 更新情報」の項目の右横には「20 11.11.25 23:18 Cat:旅日記」(画像3)との表示があること,同項目欄\nに掲載された記事(本件更新情報)には,「「友情のきずな」キャンペー ンを開催中です。」,「期間:11/25(金)14:00~11/29(火)14:00」と の記載があること(画像4)が認められる。 上記記載から,本件更新情報は,「11/25 更新情報」の項目の右横に表示された「2011.11.25 23:18」(2011年11月25日23時18分) に更新され,保存されたことが認められる。 したがって,本件更新情報は,本件出願前(出願日平成25年9月27 日)の平成23年(2011年)11月25日,電気通信回線を通じて公 衆に利用可能となったものと認められる。そうすると,本件決定が本件更新情報に基づいて認定した引用発明1は, 本件出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に該当するものと認められる。

しかしながら,上記①の点については,前記(イ)認定のとおりウェイバックマシンにおける保存日時は,URL の数字部分にUTC(「協定世界時」)によって表示されていることからすると,甲35の1のウェブページは,「日本標準時」(協定世界時より9時間早い。)では,2019年1月18日2時07分23秒に保存されたことになるから,同ウェブページ中の「日本経済新聞 平成31年1月18日(金)」の表示との間に矛盾はない。また,乙3には,ウェイバックマシンに関し,「閲覧しているページの中にあるリンクから遷移する際は,「閲覧しているページの収集日に最も近い日付に収集したページへと遷移します。」との記載があること,同年4月3日にウェイバックマシンで検索した URLの数字部分が「20190117183539」である日本経済新聞電子版(「日本経済新聞 2019年1月18日(金))の上部欄には,「日経平均 20,333.17」との記載があるが(乙2,5),この数値は,同年2月8日15時15分の大引価格「20,333.17」(2万0333円17銭。乙6)と一致することに照らすと,ウェイバックマシンによって保存された日本経済新聞電子版の上部欄に表示される日経平均株価は,リンク付けされており,保存日時の前後を問わず,閲覧しているページの収集日に最も近い日付に収集されたリンク先の数値が表示されるものと認められるから,甲35の1記載の日経平均「21,149.80」の数値が保存当時と異なるものであるとしても,URL の数字部分が保存日時を示すことを否定する根拠にはならない。上記②及び③の点については,一般論として,ウェイバックマシンに表示された保存日時の記録の内容が改変されることがあり得るとしても,前記(ア)の甲4の記載事項については,保存日時である「2013年(平成25年)4月27日10時37分28秒(協定世界時)(日本標準時同日19時37分28秒)」に掲載されていた内容が改変されたことを疑わせる具体的な事情は認められない

2.PCT国際調査及び予備審査ガイドライン

 特許庁で公開されている「PCT国際調査及び予備審査ガイドライン」を確認したところ、信頼度が不明であるウェブサイトに掲載された情報の公開日を知るための手段の1つとして、"Internet Archive Wayback Machine"が挙げられています(詳細は、ガイドラインの11.17 (c)参照)。

 したがって、Wayback Machineを一つの公知例として扱うことも可能と思われます。

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