スプレッド解説:レシオスプレッド
前回のデビットスプレッド、クレジットスプレッドの記事から少し間が空いてしまいましたが、今回は「レシオスプレッド」について解説していきます。
タイムディケイを取っていく売り戦略の中では、クレジットスプレッドよりも使う機会は多いですが、その分証拠金も高くハイリスクです。
まずは基本形をしっかりと理解し、後半は逆に動いた際の手仕舞いポイントやヴァーティカル変形での逃げなど撤退戦の考え方まで見ていければと思っています。
それでは「レシオスプレッド」についてみていきましょう。
レシオスプレッドとは
アット・ザ・マネーに近いところを1枚買って、遠いところを2枚売る
これがレシオスプレッドの基本です。
CALLで仕掛ければ「コールレシオスプレッド」、PUT側で仕掛ければ「プットレシオスプレッド」と呼ばれます。
例えばこんなポジション。原資産が22750円として、
08 C23750 買 1枚 90円
08 C24000 売 2枚 59円
売りが59円*2枚=118円ですから、すなわち118,000円を受け取って、90円=90,000円を買うわけですから、差し引き28000円を受け取ることができます。
クレジットスプレッド同様に、売りが大きいのでその差額をプラスにして建てるのが基本です。
レシオスプレッドの損益グラフ
損益グラフはこんな感じ。
買いが23750円ですから、SQがこれ以下ならどこであっても28000円の利益となります。
そしてここからさらに上昇して、売り建てポイントの24000円でSQが決まればMAXで278,000円の利益となります。なかなかデカイですね!
ただし、さらに上昇してしまうと24270円が損益分岐点となり、それ以上の上昇は売りの方が1枚多いわけですから損失無限大のマイナス地獄・・というチャートを描きます。
そして白い期中のグラフを見ると、早い段階で上昇してしまうと、売り2枚のプレミアム上昇で大きく含み損になるリスクがあることが分かります。
レシオスプレッドの特徴
レシオスプレッドは売った価格帯でSQを迎えれば大きなリターンが得られるというギャンブル性がありますが、一歩間違えると地獄となりますし、逆に動いている間は期中の含み損にも耐えないといけない場面が出てきます。
なので、中級以上向けのポジション戦略と言えます。
レシオスプレッドの使い方
使い方としては、初心者のうちは裸売りと同じ感覚、すなわちここを売れば絶対大丈夫・・と思えるファー(遠いところ)で仕掛けることが重要です。
そして残存日数が15日以下になってくるとリスクの割に取れるプレミアムが少ない形になってくるので、比較的当月限のスタート地点で組み立てるのが基本線となります。
また売りで入ってタイムディケイ(時間的価値の減少)の恩恵を受ける戦略ですから、日経平均VIが20以上のようなボラが高い時が有利となります。
そういう意味ではコロ助の下落と戻しが一服したにも関わらずまだ日経VIが20以上で推移している今は絶好の仕掛け時と言えます。
そして、SQでガツンと利益が増えるイメージで狙わないことが重要です。
レシオスプレッドはSQが狙った位置で収まれば大きな利益が出るので、つい欲をかいて損切りが遅れたりするので注意が必要です。
ポジションをずらして複数建てて、その中でアット・ザ・マネーを狙うみたいな立て方なら別ですが、1本2本のレシオスプレッドでアット・ザ・マネーを狙いに行くのはリスクの方が大きいのでやめましょう。
繰り返しますが、慣れるまではあくまでファーの裸売り同様の発想で安く遠いところで立てるということです。そして、取れる値幅も30円くらいのプラスプレミアムで良しとすることですね。
行使価格の幅はできれば250円以上開けたいところですが、ファーの絶対到達しないであろう位置で仕掛ける場合は125円幅でもありでしょう。
こんな感じ。
08 C24125 買 1枚 46円
08 C24250 売 2枚 36円
この場合、MAX利益でも151,000円ですし、125円幅なのであっという間に損失ラインへ落ちるので、到達しない位置をしっかり見極める必要があります。
じゃあ、別に裸売り1枚でいいじゃない・・となりますが、次に説明する撤退戦にも移行できますし、買いがあることで裸売りに比べて含み損の増え方が序盤は緩やかにもできます。
欠点は裸売りに比べて2枚売る分、少し証拠金が高くなるということですね。
撤退の見極めが非常に難しい
実は私もオプション投資を始めた当初は、あまりリスクを感じずこのレシオスプレッドをCALL、PUT両サイドで2-3セット建てたりしていました。
レンジの時は放っておいても含み益が増えていきますし、仮に逆張りが綺麗に刺さると「なんてオプションは簡単なんだ!」と勘違いしてしまう危険なスプレッドでもあります。
しかし、先年秋の上昇ラリーや先日のコロ助ショックのように大きなトレンドが出てしまうと、先に書いたように含み損が膨らんできます。
その後相場が落ち着いてプレミアムが減価すればいいのですが、そのままトレンドが継続するとSQ決済時に1セットで数十万の損失を出してしまいます。
そうならないためには早めに損切り決済をするしかありませんが、まだトレンドが継続すると判断できるのであれば売りを1枚損切り決済することでヴァーティカルスプレッドに変化できます。
08 C23750 買 1枚 90円
08 C24000 売 2枚 59円
先程書いたこの例で見てみましょう。
ポジションを建てた時は日経平均が22700円だったのですが、そこから上昇トレンドが鮮明となり、1週間足らずで23400円になったとします。この時プレミアムはどうなるかと言うと
08 C23750 買 1枚 170円
08 C24000 売 2枚 125円
みたいな感じになると思います。
買い側で+8万ですが、売り側で-13.2万となって含み損が5.2万まで膨らんできたという状況になります。
ここで上昇も一杯、一旦押すだろうと判断できればいいのですが、余程自信がない限り恐怖が襲ってくる水準だと思います。
何せ23400円という事は、売りポジの24000円まで600円しかなく、損益分岐の24270円まで870円です。
ここからまた2-3日で200円300円上昇してしまうと含み損は8万を超え、もうSQでは24300円を抜けてくるようにしか思えなくなります。
こうなってしまうともう8-9万の損失を出して全決済するか、7.5万くらいの損失を確定させて一発逆転を狙うしかなくなってきます。
ですので、チャートを確認しながら逆にトレンドが出てると判断したら、3万円前後の損失で早めに全決済するか、片側だけ決済してコールデビットスプレッドに変化させる必要があります。
08 C23750 買 1枚 120円
08 C24000 売 2枚 90円
の時に売を1枚損切りして、
08 C23750 買 1枚
08 C24000 売 1枚
のデビットスプレッドにしてしまいます。
損切りで31円=31000円を確定したので、もともとのコスト31円と合わせてMAX損失62000円になった形です。
もともとのコストとは、買が90円、売が59円ですから1枚づつの場合31円の買いコストということです。
前回「スプレッド解説:デビット/クレジット」で記載しましたが、デビットスプレッドに変化するとこのような損益チャートへと変化します。
トレンド継続して仮にSQで24000円を超えてくれれば、250円-31円=219円 すなわちMAX利益219000円となります。
この計算はもう暗算でサッとできるようになっていますか?
250円というのは買いと売りの権利行使価格の差 24000-23750=250の部分ですね。そして売りプレミアム59円から買いプレミアム90円を引いて、-31円ということです。
250円-31円で219円 219000円がMAX利益という計算です。
というわけで、コスト62000円で219000円を狙う形に逃げれたということになります。もちろんこんな都合よくいきませんし、もともと125円幅で建てていたらチャラにするので精一杯ということになります。
ただ、レシオスプレッドを建てて、思惑と違う方に動いた場合に、日柄と合わせてどこまで耐えるか、どこでレシオからデビットに逃げるかをイメージしておくことが重要です。
常に損益シミュを回して、最悪どこでデビットスプレッドで逃げるかをチェックするようにしてください。
以上がレシオスプレッドについてです。
このレシオは売りでタイムディケイを取っていく際の基本形と言えますので、まずは欲をかかずCALL側のファーで仕掛けながら、含み損が出ている時期は、ここでデビットスプレッドに移行したらどういう損益になるかをイメージする練習を是非してみてください。
実際ポジション取らないと本当のところは見えてきませんからね。
それではまた!
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