見出し画像

夏と忘却

夏が終わる。なんて言ってるけど、全然暑いのでまだ夏。思い返せばいつもより楽しい夏だった、気がする。

手持ち花火は4回した。毎日のようにアイスを食べて、夏のプレイリストを作っては夜歩きながら聴いていた。海を見た。夜の海も見た。馬鹿みたいに飲んだくれた居酒屋、汚い灰皿、ぷかぷかと流れる副流煙。地べたに座って笑った深夜2時。珍しく友達も増えた。好きな人もできた。空の写真をたくさん撮った。夏の大三角だけが私たちの住む街の夜空に浮かんでいた。明け方のピンクと青が混ざった空に霞む白い月、夜と朝を紡いで眠った。この夏の突拍子のない出会いは私の人生を彩り、私を安堵させた。

それも全部終わり。寂しくなりそうだけど、もう秋は隣にいる。そしてそれもすぐに終わって、また冬がやってくる。繰り返しの中でまた新しい自分を見つけては愛して、それもまた忘れていく。

忘却を繰り返し、それでも忘れられないものだけを抱えて生きていく。忘れられてしまっても、それでいいと思えた。そんな夏だった。

この記事が参加している募集

夏の思い出

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?