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コンセプトからコア・アイデアを「創る」──『プランニングの基本』から【8】


『この1冊ですべてわかる プランニングの基本』
(高橋宣行著)一部公開、第8回です。
創造的プランニングの工程、STEP3は「創る」──コア・アイデアの発見。抽象的なコンセプトを、どうリアルな形に具体化していくか。

「第3章 プランニングの工程──創造的プランナーの段取りとコツ」より

夢をカタチに─ランドマークをつくろう

STEP3「創る」〈コア・アイディアの発見〉は、STEP2「想う」のコンセプト発見に続く、「シンボル」づくりです。

ようするにコンセプトを実現させるための「コア・アイディア」を見つけ出すことが最大の仕事です。抽象的なコンセプトを、どうリアルな形に展開していくか。あらゆる創造物の中心となり、すべての作業に影響を与えていくコア・アイディアを創ることです。

プランニング図19

「こう変わりたい」「こんな方向に向かいたい」「これを伝えたい」…。

その考えをどう言うか。それをみんなにわかりやすく、共感できるようなシンボルができないか。

ランドマークのような、街の誇れるシンボルのような、コア・アイディアがつくれないか。STEP3は、ここがポイントです。

広告の世界で話をすると…

広告の世界で言えば、TV、ネット、新聞、雑誌、販売促進物などなど、各メディアに統一したコア・アイディアがあるかないかで戦略に雲泥の差が出てしまいます。

イメージ(抽象)をカタチ(具象)にして、よりコミュニケーション効果を高めようとするのですから当然です。より早く、より深く、より長く、人々に自らのコンセプトを伝えるために、「カタチ」を創る創造力の発揮が求められます。

おなじみのソフトバンクの広告で言えば、「白戸家」であったり「お父さん犬」であったり。このコア・アイディアがあるだけで、あらゆる戦術へと広がっていきます。

STEP4「動く」〈全体戦略の構築〉へと無理なくつながっていくのです。また、それを持続することで企業ブランド形成へ…。いいコア・アイディアはその後の仕事をとても楽にしてくれるのです。

コンセプトとコア・アイディアの連携

・JR 東海の集客キャンペーン
一時、日本人の旅行客が減少した時期に、あらためて「日本の良さを、美しさを再確認してほしい」と始めた集客促進の例でお話しすると、

コンセプト:「そうだ 京都、行こう。」
コア・アイディア:「世界一の絵ハガキをつくる」
(長く続くカレンダーのシリーズのようにしていきたい)

結果、キーワードと絵ハガキのような写真が、もう30年近くも続いています。コア・アイディアがしっかり立ち、京都の映像そのものがシンボルとなり、JR 東海のブランドイメージにもなっています。

このコンセプトとコアがあるかぎり、展開の仕方は次々に生まれてくる。だから持続する…。コア・アイディアが奇をてらうことではないことを理解していただけるでしょう。

・サントリー「伊右衛門」
緑茶のカテゴリーで低迷していた中で、「本当においしい緑茶を飲んでもらうこととは…」。その本質探しから始まります。

コンセプト:「百年品質・上質緑茶」(お茶は、日本人の心、そのものだ)
コア・アイディア:「老舗・福寿園(茶舗とのコラボ)と、頑固な職
人の世界」(伊右衛門・本木雅弘と妻・宮沢りえ)。

老舗と職人の2つが1つの世界をつくり、強力なシンボルとなる。この「伊右衛門」も2004年以来のロングラン商品です。当然、このシンボルがあるからこそSTEP4の戦略・戦術のアイディアも生まれやすいし、展開も容易になる。このコア・アイディアなら、誰もが展開案を創れそうな気になってきます。

すべての仕事のど真ん中に何を置くか。いいコア・アイディアがあれば、次々に発信者が変わってもブレることがないものです。

独自のコア・アイディアがほしい

私たちはよく、「HOW(いかにつくるか)」より、「WHAT(何を)」が大事だ、と言い続けています。

いいコンセプトがあれば、仕事は終わったも同然とも。しかし、どんなにいい考え方でも、その先のアウトプットに魅力がなければ、効果は激減しますし、かえって足を引っ張ることだってあるのです。

上記の2つの例を見てもわかるように、具体化するアイディアの力は想像を超えます。想像力を惜しみなく発揮し、すべてのより所となるカタチづくりに取り組んでください。

1枚の絵で、日本中を感動させることだって、できるかもしれないのですから。

プロフィール

高橋宣行(たかはし のぶゆき)

1968年博報堂入社。制作コピーライター、制作ディレクター、制作部長を経て、統合計画室、MD計画室へ。制作グループならびにMDU(マーケットデザインユニット)の統括の任にあたる。
2000年より関連会社を経て、現在フリープランナー。企業のブランディング、アドバイザー、執筆活動などで活躍。著書に『高橋宣行の発想ノート』『高橋宣行の発想フロー』『高橋宣行の発想筋トレ』(以上、日本実業出版社)、『博報堂スタイル』『今どきの、発想読本 「コラボ」 で革新』(以上、PHP研究所)、『オリジナルシンキング』『コンセプトメイキング』『「人真似は、自分の否定だ」』(以上、ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『発想職人のポケット』(小学館)他がある。


※著者が本書のねらいを語った「はじめに」も小社公式サイトで公開しています。

※『この1冊ですべてわかる ○○の基本』シリーズラインアップはこちら!


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