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プランナーとは「庭師」だ──『プランニングの基本』から【2】

「プランニングとは包括的思考であり、『情報』を集め、『問題』を探り出し、『仮説』を立て、『発酵』させ、それを『カタチ』(表現)」に定着していく一連の流れを言う」
それでは、プランナーと庭師の共通点とは?
『プランニングの基本』(高橋宣行著)一部公開、第2回です。

「第2章 プランニングとは──そもそも何ができてプランニングか」より

今どきの「プランニング」とは

「プランニング」については、古くから使われてきたわりには、意外と詳しく語られることがなかったと思われます。

とくにトレンディでも、尖った言葉でも、思想のある言葉でもない。考えることを何となく総称している。ごくごく軽く、そしてあまり思い入れのない感じに受け取られているようです。

「コンセプト」とか、「クリエイティブ」とか言われると一瞬考え込みます。「アイディア」だって、ちょっと身構えたりします。

しかし、現代の混沌としたビジネス社会に対応するには、創造性を核にした包括的思考の「プランニング」が、どうしても不可欠なのです。

今どきのプランニングは、「何かアイディアないの?」と軽く口ずさんでいるような場合ではなくなりました。

では、そもそもプランニングには何を求められているのか。ここでプランニングの重さをあらためて感じとってほしいのです。

プランニングとはビジネス活動そのもの

もう40数年も前から、私は若手の制作者たちに言い続けてきました。若手が、あまりにも狭い視野の中で、身近な情報や知識、わずかな体験から、もっともらしく成果物(アウトプット・コンテンツ)をつくることを当然としていることに怖くなったからです。

ビジネスは、背中に大変な重みを背負っています。次の図12のような言葉を若手の制作者に言い続けました。プランニングとは包括的思考であり、総合力を求められているのだ…と。

プランニング図12

ビジネス社会は、ヒト・モノ・カネを動かしてなんぼの世界です。ようするに、成果を問われ、結果で評価され、次につながることまでが目的です。「プロのプランナーとは、次につながる人のことだ」と、そんな姿勢を手渡してきました。

私はコピーライターという専門職からスタートしましたが、早くから全体からモノを見る体質を植えつけられました。コピーライターという専門力だけでは依頼主の複雑な課題は解決できなかったからです。あれから随分経ちましたが、プランニングは「社会を巻き込むビジネス活動そのものを考えること」という考え方は変わりません。

骨太な構想力がほしい

世の中が進化し、広い意味の企業の意思や社会性、人間のニーズ、シーズがより強く求められ、プランニングの立ち位置が違ってきています。

プランニングは、単なる企画、計画、企てではありません。今、もっともプランニングに求められながら、決定的に不足しているのが「全体を俯瞰してまとめ上げる力」です。

これをどう補えるか、強められるか。

経営、ビジネス、マーケティング…それら全体との関わりなしに、プランニングは考えられません。とくに典型的なのは、商品やサービスへのニーズは、企業主導型から生活者主導型へと変化していき、「人間中心」という考え方なしには人に届かなくなったことです。

ようするに、鳥の目と虫の目の複眼的な思考が、どんなプランニングにも求められるのです。これを飲み込み、「考え、創り、動かして、評判をつくる」包括的で骨太な構想が、プランニングのゴールなのです。

プランニング力とは「構想力」

辞書では、[plan]は、

「計画、企画」とあり、これに「ing」がついて、「Planning」は計画を立てること、立案すること、となるわけですが、ここに今のビジネス環境が加わり、性格が変わってきます。

今やビジネスは、全体像を科学的にとらえることが難しくなりました。

膨大なビッグデータの、事実の、合理性の、「その先」をどう読めるか、にかかっているからです。

その希望となるのが、創造性を中核とし、包括的な視点から「その先を描く」構想力です。全体から俯瞰してまとめ上げる力なのです。

あらためて定義すると、

プランニングとは、創造性を核とし、
包括的思考で「その先」を構想すること

と言えます。

辞書では、[構想]は、

「思考の骨組みを立て、まとめること。全体の構成や実行していく手順
などについて考えをまとめ上げること。独自の構想を示す。」

と、あります。ビジネス・プランニングにおいては、ビジョンやコンセプトから戦術、実行まで、全体設計図を描く力が必要になります。

第1回で述べた仕事の「3つの発見」で書いたように、「1.問題の本質の発見、2.新しい価値の発見、3.解決策のコア・アイディアの発見」を創造性で串刺しにし、全体構想をまとめ上げる…。これが今、求められるプランニングだと思います。

さらにプランニングの立ち位置は、次の図13のように「モノゴトの新しい進め方で、より良い変化をもたらすこと」と、役割は一段と広がっています。単なる企業の目的達成だけではなく、社会や人間との共感なしにビジネスは成り立たないからです。

プランニング図13

プランナーは庭師だ

私はプランナーをたとえてこう話します。それは1軒1軒、違うニーズと時代性と自らのプロとしての提案性に誇りを持っている「庭師」です(図14)。プランナーと庭師との取り組み方、姿勢をちょっと重ね合わせてみてください。どちらも包括的な思考がベースになっています。

プランニング図14


プロフィール

高橋宣行(たかはし のぶゆき)

1968年博報堂入社。制作コピーライター、制作ディレクター、制作部長を経て、統合計画室、MD計画室へ。制作グループならびにMDU(マーケットデザインユニット)の統括の任にあたる。
2000年より関連会社を経て、現在フリープランナー。企業のブランディング、アドバイザー、執筆活動などで活躍。著書に『高橋宣行の発想ノート』『高橋宣行の発想フロー』『高橋宣行の発想筋トレ』(以上、日本実業出版社)、『博報堂スタイル』『今どきの、発想読本 「コラボ」 で革新』(以上、PHP研究所)、『オリジナルシンキング』『コンセプトメイキング』『「人真似は、自分の否定だ」』(以上、ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『発想職人のポケット』(小学館)他がある。


※著者が本書のねらいを語った「はじめに」も、小社公式サイトで公開しています。

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