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カラスの知的な遊び

 ワタクシは、カラスが好きだ。だが、カラス好きな人と出会ったことがない。唯一の例外はダーリンだが、カラスが縁で結婚した訳ではない。

 ワタクシが思うに、ダーリンは「カラス好き」というよりは、カラスに敵意を抱いていないとか、カラスのことを理解しているカラスを社会の隣人として認めている、という部類だ。

 彼は動物に好かれるタイプの人間だ。公園の池を泳いでいる鴨たちが、水際に座っている彼に向かって次々と寄ってきて、彼らから親愛のキスを受けたことすらあるのだ。彼は餌など持っておらず、ただそこに座っていただけだった。

 脱線した。カラスに戻る。
 とは言え、ワタクシも自分は純粋なカラス好きとはちょっと違うような気がしている。
 純粋なカラス好きの定義はさておき、ワタクシの場合は、カラスを観察するのが好きなのだ。見かけたら、ついつい注目してしまい目で追いかける。行動がおもしろいのだ。

 彼らの興味深い行動について、ひとつは既にこちらで紹介した。

 もうひとつ、飛び切りのカラス逸話を知っているので、こちらも紹介しようと思う。鳥類学者から見れば大した話ではないのだろうが、専門知識を持たないものから見れば、酒のつまみにはなる。

 ある冬の日のこと。そのシーズンは降雪が多く、道路際の雪山がけっこういい高さになっていた。当時サラリーマンだったワタクシは車での通勤中だったが、運転席から左側の雪山のてっぺんが見えなかった。

 雪国の冬をご存知ない方はピンと来ないかもしれないが、降雪後に除雪された道路の雪は、排雪されるまで道路際に積み上げられる。歩道がある道路の場合、車道と歩道の間に立派な雪山が連なることになる。

 信号待ちというか大雪渋滞というか、車は動いていなかった。始業時間を気にしていらいらしていたワタクシは、ふと目に入ってきたものに一瞬肝を冷やした。

 件の雪山の斜面から小さな雪の塊がコロコロと転がり落ちてきたのだ。

 車道と歩道の間の雪山は、とてつもなく危険だ。道路幅が狭くなるとか、視界を遮るとか、それはもちろんなのだが、もっととんでもないことも発生する。

 近くに小学校があると、雪山の上を歩いて登下校する子どもが出現する。以前、運転中に雪山から男の子が車道側に滑り落ちてきて、危うく大惨事を引き起こしそうになったことがあった。未然に防げたのは、雪山から雪の塊が転がってきたのでブレーキを踏めたからだ。

 転がる雪の塊があのときの恐怖を想起させ、心の中で「ギャーッ」と叫んだ次の瞬間、転がってきたのは…

翼を閉じた状態のカラスだった。それも2羽。

 彼らは転がる途中で羽ばたく素振りも見せず、地面に着いてから起き上がり、そして、歩いて道路を渡っていった。

 カラスは頭がいいと聞く。クルミを自動車に轢かせて殻を割るというのは、有名な話だろう。

 雪山から転がる彼らは、何となく楽しげに見えた。たぶん遊んでいたのだろう。めずらしいものを見せてもらった。 

 この話は、先日地元のFMラジオ局の番組でメッセージとして読まれた。そちらで耳にした方、あのメッセージはワタクシが出したもの。パクリではなく(笑)。

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