2023/3/2 仕事選びと情熱

『科学的な適職』(鈴木祐 2019.12)という本を読む。今の職場にそれほどの不満はなく、今のところ転職するという可能性も薄い。だが読んでみて、職場づくりや学生の仕事選び、キャリア教育にとても役に立つ実践的な知識を得ることができた。
 本書の中では、「職業選択にありがちな7つの大罪」を挙げている。その一つ目が「好きを仕事にする」というものだ。これは職場を見回しても納得できる。教師という仕事は、生徒との関わりがメインだが、そこが好きだからという動機でこの仕事に就くと、無駄に時間を食う。生徒と関わる時間が長い方が、その教師の満足度が高いからだ。極論すれば、生徒のできが悪い方がその教師にとっては都合がよく、一を聞いて十を知るような生徒は、自然と関わりが薄くなってしまうので、よろしくない。生徒を成長させるどころか、成長を妨げてしまうことさえある。生徒が精神的に自立するのを、なんとか引き延ばそうとし、ダラダラと時間をかける。そして生徒が自立したときに、勝手にショックを受ける。生徒に依存しているのである。
 ある教師は、クラス編成のときに、課題などの提出率が悪い生徒を一手に引き受け、更生させると意気込んだ。そんなものに許可を与えてしまった学年主任にも問題があるが、そのクラスは学級崩壊とはいかないまでも問題が多発し、担任が代わることになった。
 私は今の仕事が好きだが、生徒の関わりという部分によって仕事を選んだわけではない。仕事量や給料が安定していて、読書ができるほどの余暇があり、個人の裁量である程度の本が買えるという点が動機であった。どちらかというと生徒や保護者、同僚たちとの関わりは苦手であり、妻からは「人間嫌い」のレッテルを貼られているくらいだ。
 仕事というものに過剰な期待をせず、やるべきことを淡々と、少しの工夫をもってやり続けることが長続きのコツなのだと再認識したのである。


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