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NHK「100カメ 東京メトロ」を偶然見て思ったこと

「駆け込み乗車はおやめください」というアナウンスを聞いて、先日見たNHKの「100カメ」という番組を思い出した。特に見る予定もなくなんとなく見始めた番組だったのだが、東京メトロの駅や運転席、そして総合指令所にカメラを置いて働く様子を撮る番組だった。
東京メトロというと、路線数の多さと本数の多さが他の地方都市に比べても断トツだと思うが、その分、緊急事態が発生すると影響が絶大である。なんとはなしに見たものの、目が離せなくなった。

まずびっくりしたのがそのアナログさ。
問題が発生すると電話で総合指令所に電話し、総合指令所の方も定規とか使って紙で時刻表らしきものを見ているのだ。そしてどのように運転を調整するか判断し、また電話で伝える。
紙と定規!!!それにどれほど驚いたか。
そしてどう対処するかは、指令する人たちの手腕にかかっている。
緊急事態は次から次へと発生し、こっちの駅で急病人が出たと思ったらあっちの駅でも、そっちの駅ではお客様の鞄が扉に挟まっている。同時に3つくらい発生していた。
ついにはいつもは自動で切り替わっている線路を主導で切り替えなくてはいけなくて、そこの駅員さんがタイミングを見計らって切り替える。
マルチタスクをめちゃくちゃ神経使ってこなしていく、しかも色んな人たちが、という仰天の状態だった。

それを見ていてIT業界に長く居た身としては、デジタル化した方がいいんじゃないかと思ってしまった。
それこそAIに今までの緊急事態のデータと、それにどう対応したのかのパターンを膨大なデータとして読み込ませて、今後似たような状況が発生した時に、瞬時に「こうしたら良い」という提案ができたらいいのではないか。
最終的な判断は指令所の人間になるかもしれないが、下した結論を自動的に関係各所へ伝達され、場合によっては線路の切り替えのシステムに伝達され、自動的にイレギュラーな切り替えを行う。
そんな状態を想像していた。

もしかしたら既に構想があるのかもしれないが、それでも残る”手動”部分はあるんだろうなと思った。
それはコミュニケーションである。
番組を見て驚いたもう1点は、皆さん、びっくりするくらい丁寧に挨拶をしているのだ。
どんなに緊急事態で一刻を争っていそうな場面でも「おはようございます。〇〇の△△です」と挨拶をすれば、緊急事態の情報を受け取った側も「ありがとうございます」と必ず御礼を言う。また、大変な事態を乗り切った後にまた総合指令所から連絡をする時には「皆さん、朝のラッシュのご対応ありがとうございました」から始まっているのだ。
特に総合指令所なんてあちこちでピンチが発生しているのに、それを感じさせない緩やかさで挨拶や御礼を言っているものだから、ただただ「すごいなぁ」と感心してしまった。
それと同時に、こうした丁寧さがあるから、どんなにピンチなことであっても皆で乗り切ろうとする団結力が生まれているんだろうなと思った。

そんなわけで、もしデジタル化されることがあっても、このコミュニケーションは重要になってくるのだろうと想像したのだ。
デジタル化されたところで、各駅での細々とした作業は人間に残る。例えば電車内の汚物の掃除であったり、急病人の対応であったり、もしかしたらお客様同士の喧嘩の仲裁もあるかもしれない。急病人の対応はまだしも、対応によっては正直、嫌だなと思うものも多々あるだろう。
もし全てがデジタル化されて、とある駅に自動的にピコンと「〇号車汚物掃除」と指令が出たらイラっとするかもしれない。同じ対応内容でも、人間同士の良いコミュニケーションの中で依頼されれば、随分と印象が変わるだろう。
パフォーマンスを上げるためにデジタル化するところもあれば、逆にあえてデジタル化させないところもあるのだと気付かされたのだった。

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