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團菊祭五月大歌舞伎

今日、日帰りで東京は歌舞伎座、團菊祭五月大歌舞伎を観てきました!
帰りの新幹線の中、興奮冷めやらぬなかで書いてます。

五月の公演は、右近さんが弁天小僧を初めて演じると聞いて、しかも周りも若手で固めてると知り、さぞや華やかな白浪五人男なんだろうな、観たい!と思ったのがきっかけで。
それが三部、二部には大好きな演目「土蜘蛛」をこれまた大好きな菊之助さんが演ると知って、更に観たい!となり。
せっかく行くから全部観ちゃえ!と突然豪気になってチケット買っちゃいました。

結果的に、よかったーーー!!!
特に、ついでにのつもりで(申し訳ない)観た一部がとても良くて、なのにお客さんが少なくて、声を大にして言いたくなりました。「一部もかなり面白いから観て!」って。

ということで、簡単に感想です。

第一部

一、祇園祭礼信仰記 金閣寺

タイトルにある通り、金閣寺が舞台のこの演目。しかも桜が咲き乱れてるので、豪華絢爛の一言に限る!

松緑さん演じる松永大膳は悪役で、雀右衛門さん演じる雪舟の孫、雪姫夫婦たちを幽閉しています。
夫を助けるために一時は大膳の言うことを聞こうとした雪姫ですが、大膳が実は親の敵でもあると知って斬りかかり、逆に抑えられて木に縛られてしまいます。
降りしきる桜吹雪の中で、雪舟の涙の鼠の逸話を思い出し、桜の花びらで鼠を描くと、あら不思議、本当の鼠になって縄を噛み切ってくれたのでした。
というのが、ざっくりとしたあらすじ。

いや〜雀右衛門さんの雪姫は可愛いし、松緑さんの大膳も本当によかった!
松緑さん、常々、立ち回りの姿がかっこいいな〜と思ってたのですが、こういう骨太の悪役で、立ち回りとなると、更に迫力あってよかったーー

あと、最後の方に福助さんが出られたのですが、大病の後復帰されてから初めて拝見して、本当によかったとちょっと泣きそうになりました。

二、あやめ浴衣

もうお腹いっぱい!というくらい豪華絢爛な「金閣寺」の後、爽やかな舞踊「あやめ浴衣」。
演目の構成、最高としか言えない。

舞台設定も、「金閣寺」は金閣寺の建物が舞台の大半を占めていたので圧迫感があったけれども、「あやめ浴衣」は一転して広々とした景色。

パンフレットを見ると、芸者を演じてらした魁春さんが「デザートを味わう感覚で」と言われてたのですが、まさにフルコースのあとのシャーベットみたいな爽快感。
良い第一部の終わりでした。

第二部

一、暫

久しぶりに海老蔵さんが歌舞伎座に立つからか、はたまた菊之助さんの朝ドラ効果か、それとも両方か。
とにかく、私がチケットを取ろうとした時には遅く、一等席でも二階席しか空いてませんでした。
そして後から見たら完売!

「暫」は、去年のオリンピックの開会式でも海老蔵さんが演じられてましたが、すっごい衣装着たヒーローが、悪者に殺されそうになってる人を助けて、悪者を倒すという話です。
とにかく人がたくさん出てきて、しかも皆、派手な衣装やらキャラ濃いやらで、舞台がみっちりってな感じです。

第一部とえらい違いの大入りで、拍手の音の大きさも違って、ちょっと切なくなりました。しつこいですが、第一部もめっちゃいいから観て!

それはさておき。
「暫」は古典中の古典なんだろうけれど、不思議と今でも受ける演目なのですごいなぁと。
台詞もちゃんと分かって笑えるし、やり取りも普通に面白いし、あまりに荒唐無稽で笑えるし。
こんなにも楽しめる古典ってなかなかないんじゃないかな~と思いました。

二、土蜘蛛

「暫」を褒めましたが、私、本当〜〜に「土蜘蛛」という演目、大好きなんです。

これは松羽目物と言われるもので、お能の演目を歌舞伎化したものです。
平安時代の武将、源頼光が病に伏せってるところに、僧が祈祷にやってきます。
しかし実はこの僧、土蜘蛛の精で頼光を狙ってやってきたのでした。脇に控えていた太刀持(これを丑之助くんが演っててめちゃくちゃ可愛かった)が見抜き、頼光は刀で斬りかかり、土蜘蛛の精は糸を放って引っ込みます。
後半は、頼光の家来たちが、土蜘蛛の血を追って古墳にたどり着き、大立ち回り。
というあらすじ。

何が好きって、まず前半。僧、実は土蜘蛛の精、という、歌舞伎がお得意の「実は〇〇」っていうのがいい味出してるんです。
祈祷をする振りして、ちらちらと出る本性。そこに妙な色気が滲み出るんですよ…
菊之助さんもかっこよかった…

そして…音楽がまたいいんです。
特に後半。テンションが上がる上がる。血が湧き踊ると言うんですかね。

もちろん、細い蜘蛛の糸がぴゅーーーと投げられるのも美しいです。
お能から来ているこの演出、「土蜘蛛」といえば…の特徴的な演出です。
蜘蛛の糸がきれいな線を描いて投げられ、人々に絡まるのは観てて楽しいです。

因みに、今回は頼光を菊五郎さん、土蜘蛛の精を菊之助さん、太刀持を丑之助くんという親子孫三代で演られてて、そういった楽しみもありました。
親子喧嘩だ!みたいな(違う

第三部

一、市原野のだんまり

だんまり、という歌舞伎特有の演出が一幕になったもの。
だんまりは、暗闇のなかで敵同士が何かを探る、というシーンをスローモーションで見せる演出です。
大概、お芝居の一幕として出てくるので、今回みたいにただだんまりだけっていうのは珍しい気がします。

梅玉さん演じる平井保昌(何気に同一人物が「土蜘蛛」に出てきてた)が、風流に笛を吹きつつススキの野原を歩いてると、隼人さん演じる盗賊の袴垂保輔、莟玉さん演じる鬼童丸が現れ、保昌に襲いかかります。
月が出たり隠れたりするなかで、お互い見えなくなったり、また見えたりを繰り返します。

第三部からの人を、歌舞伎の世界に誘う風流な感じの演目でした。

ニ、弁天娘女男白浪 浜松屋見世先の場、稲瀬川勢揃いの場

あーもうね、一言、かっこいい!!!!
これに尽きる!!!!!

白浪というのはいわゆる盗賊で、日本駄右衛門ひきいる盗賊五人の物語なのですが、今回はとても有名な弁天小僧菊之助のお話。

浜松屋という呉服屋に、武家のお嬢様が家来を連れて婚礼のしたくといって訪れます。
お嬢様が帰ろうとしたところで、呉服屋の番頭が呼び止め、お嬢様が万引をしたと言い、それを認めないお嬢様を番頭をはじめとした店員たちが打ち据えます。
ところが、万引したと思った生地は別のお店で買ったもので、その証拠もちゃんとありました。
青褪める番頭たち。お嬢様の額に傷がついたといい、番頭たち全員の首を斬る!と言い募る家来。
なんとか百両払って穏便に済みそう…となったところで、奥から別の武士が出てきて、この人たちは偽物だ、お嬢様も本当は男だ、言い当てます。
お嬢様は弁天小僧菊之助、家来は南郷力丸という白浪五人男の一味で、こうやって強請りたかりを生業にしていたのでした。
呉服屋の人たちは騙されなくてよかったよかったと武士にお礼を言うのですが、この武士も二人の仲間、日本駄右衛門だったのです。
最後、五人は捕らわれそうになって、それぞれ名乗りをあげ、立ち回りをして終わります。

この弁天小僧を右近さんが初めて演じられた分けですが、よかったーーー
額に傷を負わされ、懐紙で額を抑えつつ、ずっと俯いているのですが、男だと見破られて、わなわなと懐紙から顔をあげた途端、さっきまで可憐なお嬢様だったはずなのに、めっちゃきりりとかっこよくなってるーーー!!!!すごい!!!
おそらく、番頭たちに打ち据えられてる時に後ろを向いて、額の傷を付けてたのですが、その時に眉毛も描き変えていたんじゃないかなぁと…(全然確証ないので、間違ってる可能性大!)
とりあえず、その豹変ぶりが鮮やか!かっこいい!!!

そしえ総揃いの場。かっこいい!!!(語彙力よ)
揃いの番傘に、紫の着物、下駄を履いて、ずらりと五人並んだ時の壮観な眺めよ!
ありがたいことに、上手寄りの三番目の席に座っていたので、目の前には彦三郎さんの日本駄右衛門と右近さんの弁天小僧が!
お二人の美声がびんびんと鼓膜に響いて痺れました。多分私、その時、息してなかった。召されそうでした。

もう夢心地で、歌舞伎な一日が終わって大大大満足です。

気付けばもう新大阪。夢の世界から帰ってきてしまいました(涙)
でも今日のこの素敵な時間を糧に、また素敵時間を費やせるように月曜日から仕事を頑張れそうな気がします。


ここまで長々と読んでくださってありがとうございました。
歌舞伎最高!!!

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