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研究内容を聞かれると困っちゃう

初めての人に大学院生だと自己紹介すると、大抵の場合は「普段何してるの?」という質問が返ってくる。
私は決まって「〇〇学の研究をしています」と答える。
このnoteにも書いたように、私は研究の仕方を学んでいるという小さなプライドが、私にそう言わせる。

そう答えると、更に「何を研究してるの?」という質問が返ってくる。

…そう返ってくるのは当然だ。
私だって逆の立場ならそうするだろう。

でも、困ったことに、私はこの質問が、とても苦手だ。

◇◇◇

研究テーマと言われて、あなたは何をイメージするだろうか。
あるいは、研究と言われると、どんなイメージだろうか。

私の分野が実践に近い分野ということもあって、〇〇学を研究していると言った途端に「じゃあこういう感じ?」と言ってくれる人もいる。
本当に申し訳ないのだが、そういう予想が的を射ていることはまずない。
せっかく興味をもってくれているのだし、相手の言葉を活かすような返事をしたいのだが、大抵はうまくいかなくて微妙な空気になってしまう。

だって、研究内容について説明するって、それも専門分野が違うだけならまだしも、研究に馴染みがない人に向けて説明するって、めちゃくちゃ難しいのだ。

◇◇◇

専門外の人に研究内容について話すとき、選択肢は2つある。
①専門用語を使って短くまとめる、②専門用語を使わずに長く丁寧に話す、の2つだ。

〇〇学が五合炊きの炊飯器いっぱいのご飯を示すとするなら、1人1人の研究テーマはその米粒みたいな大きさだ。
それくらい、私たちは自分の研究テーマを絞って絞って、限界まで小さくして研究に臨む。
なぜなら、「そうしないと、論文を書けない」からだ。
大きすぎるテーマは大きすぎる問いにつながり、1本の論文にするには破綻が出る。
小さな問いを扱う論文を何本も書いて、大きな問いに対する答えを構築していくのが、研究の定石である。

そんなわけで、研究内容を短く言おうとすると、どうしても専門用語のオンパレードになる。
〇〇学の中の〇〇って言う分野の中の、更に〇〇っていうトピックに興味があって、私の問題意識は〇〇で、今追っているリサーチクエスチョンは…と言っていいなら、短く終わらせることができる。
でも、専門外の人にそんな説明では伝わらないから、なるべく専門用語を使わずに話さないといけなくなる。

専門用語を使わずに説明するとなると、かなり説明が長くなってしまう。
「△△」という言葉ならその一言で済むところを、「~~を△△って言うんですけど、それが~~で…」と言い直さないといけなくなる。
そんな専門用語がごろごろ出てくるから、それはもう膨大な長さになってしまう。

だけど、普段のテンポを楽しむような会話の中で、そんなに長く話すわけにいかない。
そもそも私の感覚では、大学院の外の人は他人の話をずっと聞くことがあまり好きじゃない。
話している内に相手が飽きてきたのが伝わってくるので、説明しきらない内に切り上げて、話題を変えるのが関の山である。

きっと、100%わかってもらおうとせずに、なんとなくのイメージができる程度に収めておけばいいのだろうけど、その塩梅がよくわからないんだよな。
ふわっと説明して誤解を招いても、それはそれでよくない気もするし。

◇◇◇

「難しいことを簡単に短く言えるのが頭のいい人」という社会通念があるが、それは内容の難易度に大きく依存すると思う。
難しいことは、難しい。
本当に難しいことは、時間を掛けないと理解できない。
時間を掛けても理解できないことだってある。

もし本当に難しいことを簡単に短く言っているのなら、どこかで説明を端折っているか、嘘をついているかのどちらかである。
多分、一般的な「難しいことを簡単に短く言う」とは、「理由や根拠を説明せずに結論だけ言う」ことを示しているのだろう。
肝心なのは理由と根拠だから、それは「頭がいい」とはまた別の話だ。

私は大学院まで来て、一般よりも長い時間を学業に費やしているけれど、わからないことは年々増えていく一方だ。
数ある先行研究を読めば読むほど、「頭がいい人ってすごいなあ」と子どもみたいな感想を抱く。
そんな世界があることを垣間見れただけ、大学院に来た価値があると思っている。

最後までお読みいただきありがとうございます。 これからもたくさん書いていきますので、また会えますように。