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#33 「マリオカートのあいつ」を目指す

障がいのある子どもと関わる育てる、
発達支援初任者に向けたシリーズ、第3回です。

まず目指すべき基本の態度について、今回までで1セット。

子どもへの【否定・制止・命令】的な言葉かけを最小限に減らすこと

の重要性についてもう1回だけ書きます。

まずここを強く自分に刷り込んでおかないと、
ベテランになってから「クセになってしまった」振る舞いを修正するのは非常に難しい。

自分にしっくりくる・腹落ちする説明と出会ってもらうことを目標に、
色々な理論や立場でも同じことが言われているんですよ、ということを書いてみます。


審判として振る舞うことのリスク

子どもと関わる大人はたいてい、自分の役割をスポーツの審判的に捉えています。

  • 「ルールに反する行為」があったら、笛を吹いて直接指摘する。場合によっては何らかのペナルティを与える。

  • その繰り返しによって、社会的なルールを子どもたちは理解し、身につけさせることができる。

というように。

これ自体を否定したい訳ではありませんが、

「審判的」な関わり方は、逆効果に働くリスクと常に隣り合わせ

という事実を、
発達支援に関わる大人は特に認識しておく必要があります。

直接的な指摘・注意が繰り返されることによって、かえって「ルール違反」がエスカレートしてしまう場合がある

ということです。

(専門用語だと、注目獲得行動が誤学習されるリスク、と表現します。詳しく知りたい方はこちらへ↓)


審判以外のスタンス

では、審判以外のスタンスとして、どんな関わり方の可能性があるのか?

有名どころからいくつか紹介します。

○アドラー心理学

「勇気の心理学」なんて別名をつけている人もいるアドラー心理学。

「ほめる・叱る」という関わり方はどちらも、「上」にいる人が「下」の人に向けてやることだよね、という考え方が特徴の1つ。

子どもに上下関係を刷り込みたいならともかく、
対等な存在として扱い、主体性や自発性を引き出したいなら、
「勇気づけ」を基本のスタンスにしよう
と主張します。

具体的には、「私はこう感じた」という言葉の使い方を基本にする。

「すごいね」「よくできました」  
    ↓
「嬉しいよ」「ありがとう」

「ダメ」「いけません」
    ↓
私はいや」「こっちにしてほしい

という感じ。

対等に関わることを重視すると、審判からは遠ざかっていくことがわかります。


○モンテッソーリ教育

将棋の藤井聡太八冠が幼児期に受けていたことでも有名ですね。

実は創立者のマリア・モンテッソーリさんが障がい児と関わる現場で考え試したことが出発点。障がい児教育のさきがけとも言われています。

モンテッソーリ教育では、基本理念を達成するために以下のような関わり方が基本とされます。

(理念)  互いを尊重する人になる
  ↑
(手段)  評価・ジャッジを避ける 


(理念)  自分の考えを主張できる
  ↑
(手段)  賞罰によるコントロールを避ける

ここでも「審判」的ではないスタンスが推奨されていますね。


○非審判的態度

特定の流派・教育法に限らず、あらゆる福祉の教科書に必ず出てくる言葉の1つに「非審判的態度」があります。

(パイステックの7原則、という、対人支援の基本作法の内の1つ)

相手を良いとか悪いとかで判断するのではなく、
「受容」と「共感」を関わる時の基本姿勢にしましょう、というもの。

これを子ども相手であっても素直にやればいい、という話な訳ですが、
実際関わると中々難しい。


以上3つご紹介でした。

こうした理念や概念を学ぶときには、ただの言葉丸暗記ではなく、

それができてる人ってどんな人?

と自分が知っている誰かと結びつけることが効果的です。実在の人物でなくても、漫画やアニメのキャラクターでもOK。

別々の場所で出会ったものに共通点を見つけて、自分の頭でリンクさせることは、
知識や理論を身体化する最良の方法
の1つです。

早速見本を1つ。
私が「非審判的」という言葉を聞いていつも思い出すのは「マリオカートのあいつ」です。

マリオカートのあいつ

あいつとはこいつ。

マリオカートで、「コースアウトしたら釣り上げてくれるあいつ」です。
(ジュゲムという名前は今回初めて知りました)


彼の役割は3つ。

  1. スタート/ゴール、何周目かを知らせる

  2. コースアウトした時だけ、強制的に介入する (コースに連れ戻す)

  3. 逆走したら、警告表示をする

この感じが、自分が思う発達支援者の基本スタンスとかなり重なります。

  1. スタート/ゴール、何周目かを知らせる
    まずは予定の見通しを持たせる

  2. コースアウトした時だけ、強制的に介入する (コースに連れ戻す)
    危険な時だけ、強制的・審判的に介入する(前回記事であげた3つの場合)

  3. 逆走したら、警告表示をする
    →2の時以外は、「知らせる」だけ。
    強制ではなく、自分でハンドルを切って方向転換してくれることを目指す。

どうでしょう?

当たり前と思っていたことを考え直し、
子どもへの振る舞いを変えてみることで、
信頼や関係性、子どもが見せる姿・とる行動はどんどん変化していきます。

自分なりの「マリオカートのあいつ」を考え、見つけてみてください、という話でした。


シリーズ次からは、上の3つ目
「自分でハンドルを切って方向転換してもらう」ための技やコツについて書いていきたいと思います。

ではでは。

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