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鹿島アントラーズは魅力的なサッカーを目指すべき

2022年7月下旬。
鹿島アントラーズは暫定2位でまだまだ優勝を狙える好位置にいる。
そんななかでこのようなタイトルの記事を書くことにしたのは、いまのクラブのやり方に将来性があるのか疑問があるからだ。

鹿島アントラーズが抱える問題

鹿島アントラーズを取り巻く事情はなかなか厳しい。
大金をはたいてネームバリューや能力のある選手を獲得するクラブの登場。有望な若手の海外移籍。
困難になった戦力維持。
それに伴うタイトル欠乏。
優位性を失った移籍市場。
訪れる少子化と人口減。
立地による集客問題。
などなど、考えれば考えるほど鹿島アントラーズの将来は厳しい。
わたしはその解決策のひとつとして、魅力的なサッカーを目指してほしいのだ。

魅力的なサッカーとはなにか

まず魅力的なサッカーとはなにかという話をしよう。
魅力的なサッカーにもいろいろある。
ひとつは鹿島アントラーズやレアルマドリードといった勝利という結果にこだわったサッカー。
時には退屈に感じるが最終的には勝っていたりする。
勝つ喜び(魅力)に勝るものは多くはないだろう。
もうひとつは、独自性を感じるスタイルで見てて単純に面白いと思えるサッカー。タイトル獲得は難しいが多くの人を虜にする。
Jリーグでいえばサガン鳥栖やコンサドーレ札幌だし、ヨーロッパならアタランタやリーズといったクラブになるだろうか。
そして、最後は見ていて楽しくもあり、勝利という結果すらも手にしてしまうサッカー。
Jリーグでいえば今は横浜F・マリノスだろうし近年の川崎フロンターレ。海外ではマンチェスターシティやリヴァプール、アヤックスなどなど最近は面白い上に強さを両立したクラブは珍しくなくなってきた。

このクラブ分けにいやいやそれは違うだろうと思われる方がいらっしゃるだろうが、そこは正直どうでもいいので各々納得するところにクラブを置いてほしい。
重要なのは"面白い上に強さを両立したクラブが珍しくなくなってきた"というところだ。

面白いは機能的

アントラーズファミリーが考えないといけないのは、近年面白いサッカーは機能的という図式が成り立つようになってきたというところだろう。
機能的であれば、主導権を握りやすくなる。
もっと言えば、面白いサッカーをすることは勝利に近づく方法と言えなくもない。
逆に言えば、面白くないサッカーは機能不全をどこかしらで起こしている。
つまり、勝利から遠のいているとも言えるのだ。

岩政コーチの言葉で言えば『躍動』と表現できるかもしれない。
選手が躍動していれば、観衆というものは自然と面白味を感じるものだ。

さて、今の鹿島アントラーズは面白いサッカーをしているだろうか。
アンケートを取れば、9割が面白いというような結果にはならないだろう。
甘めにみて、6割が面白いと言ったら結果を疑うぐらいには二分するのではなかろうか。
もちろんこれはわたしの偏見なので、読者の方は「いや、めちゃくちゃ面白いから」と反論されるかもしれないが。

ただ、「面白いと感じるかアンケート」を横浜F・マリノスが取ったらどうなるだろうか。
おそらく高い割合で面白く感じるという結果になるはずだ。
それは単に勝っているからではない。
チームが機能的であり、選手が躍動していると感じられるサッカーだからだ。

鹿島アントラーズは現在2位だ。
それなのにわたしは選手が躍動しているようには見えない。
もちろん、先日の安西の爆走や和泉の気迫のように部分的な躍動は見られる。
でもなぜだろう。
選手はちっとも楽しそうじゃないのだ。

もう一度言おう。
鹿島アントラーズの選手たちは全然楽しそうじゃない。

楽しくないサッカーは身を滅ぼす

鹿島アントラーズのサッカーの面白さはなにか。
それはこれまで勝利という結果だった。
しかし、近年はその結果が出ない。
結果の出ないアントラーズのサッカーになにが残るか。
サポーターはもちろん、これは選手にも波及する。
客は面白くないサッカーをわざわざ見たいと思わない。
そして、選手もまた面白くないサッカーをわざわざやりたいとは思わない。
面白くない、楽しくないというサッカーは負のスパイラルになる。
その解決策はすぐに結果(魅力)を出すか、あるいは魅力的なサッカー(面白い上に強い)をするかだ。

今のJで結果を出すのは難しい

タイトルを獲れないと様々な理由から鹿島アントラーズの価値は下がる。
価値が下がると負のスパイラルでJリーグ内での鹿島アントラーズのブランド(威光)の優位性が失われる。
解決策としてはタイトルを奪還するのがひとつの手だ。
だが、最も考えなければならないのは今のJリーグで鹿島アントラーズがタイトルを毎年のように獲得するのは現実的じゃないということだ。
それはそうだ。
先にも書いたが、鹿島アントラーズの優位性は年々減少しているのだ。
つまり、競争力の低下である。
競争力が落ちれば当然ながらタイトルを獲得するのは難しくなる。
タイトルを獲れなければ、競争力はますます落ちる。
はたして、これでどうやってタイトルを獲得できるのだろうか。

勝利至上主義という伝統

鹿島アントラーズはクラブもサポーターも勝利こそすべて、勝てればどんなサッカーでもいいし、勝てなければどれだけいいサッカーをしていても意味がない。
おそらく多くの人がこんなマインドを共有している。
実際、このマインドがあってか国内最多タイトルのクラブになった。
わたしが魅力的なサッカーを目指せと言っても、結果が大事と鼻で笑うのが鹿島サポーターじゃないだろうか。
ところが近年はこのマインドがあるにもかかわらずタイトルを獲得できずにいる。
それはなぜか?
わたしは逆にこのマインドこそが鹿島アントラーズをタイトルから遠のかせている要因だと思うのだ。

"面白い上に強さを両立したクラブが珍しくなくなってきた"

それは無冠が続くことと決して無関係ではないとわたしは考える。
鹿島が目先の勝利だけにこだわっているあいだに他のクラブはあの手この手で挑戦をしている。
鹿島が結果を出すのが先か、それとも鹿島以外が追い越していくのが先か。
わたしは後者だと思っている。

急がば回れの魅力的なサッカー

わたしは別に結果を求めていないわけではない。
逆に結果を求めればこそ、これからの時代は魅力的なサッカーを模索するほうが長期的かつ安定的にタイトル争いができると考える。
そして、魅力的なサッカーのメリットはお客さんも集めやすく、なにより選手が楽しくサッカーをできることにある。
人口減少社会に入り、これからますます集客は難しくなっていく。
おそらく、地方クラブは消滅することを覚悟しなければならない時代になるだろう。
そんな時代でも生きていくためにはアントラーズがどのようなサービスを提供できるか。
サッカークラブができる最大のサービスはサッカーというスポーツ、娯楽の楽しさ、面白さを提供することではないだろうか。
それに魅力的なサッカーができれば、地方であってもここでプレーしたいという選手が増えるだろう。
つまり、優位性、付加価値が生まれるのだ。
これは育成年代の人材確保にもつながる。
クラブの安定的な競争力の維持のためには、人材確保と育成が欠かせない。
最近は持続性というのが社会的トレンドだが、これはサッカークラブの競技面でも例外ではない。
持続性のあるサッカークラブを作るためにも、わたしは魅力的なサッカーを目指してほしいのだ。

もはや学問になりつつある現代サッカー

これはサッカーに限った話ではない。
ゲーム業界や映画業界といったエンタメ産業までもが理数系の専門知が求められる時代になった。
進歩した業界は数学的になっていくのかもしれない。
ここで問題となるのが鹿島アントラーズというクラブにサッカーという学問を追究する土壌があるかというところだ。
三竿や鈴木のように個人レベルでは意識の高い選手はいるが、クラブ全体としてこのような姿勢があるかと言えば、今のところはないと言えるかもしれない。
魅力的なサッカーを模索することはサッカーという学問に向き合うことを意味する。
鹿島アントラーズがこの面倒くさいことをやりたがるかどうか。
ただ、この面倒くさいことを楽しめる人が鹿島界隈にもいる。
その名は、岩政大樹という。

鹿島アントラーズがやろうとしていること

最後に現在の鹿島アントラーズがなにをしようとしているのか。
基本的にはスプリントサッカーと言って差し支えないだろう。
夏場になり、ボール保持の時間も増えてきたように思えるがベースは攻守に渡って豊富な運動量と効率的なアクションでゲームを支配する。
部分的には機能しているが、全体の調和はまだまだ獲得できていない。
故に、躍動感は限定的で魅力的なサッカーとは言い難い状況となっている。
ここから魅力的なサッカーを完成させられるだろうか。
どれだけ時間がかかるかはわからないが、わたしは十分に可能だとは思っている。
ただ、その過程では多くの犠牲を伴う気がしている。
これまでの鹿島アントラーズだったら使われていたような選手が使われずに移籍していくようになるだろう。
戦力維持はますます難しくなり、成績は不安定になるかもしれない。
鹿島アントラーズというクラブがその覚悟を持って、レネ・ヴァイラーと共に今の道を突き進むのか。
それともスタイルの変化を求めるのか。
どちらにせよ、魅力的ではないサッカーを続ければ続けるほどジリ貧になるだろう。

お読みいただいた方ありがとうございました。
何はともあれ、週末のマリノス戦での勝利を期待しましょう。

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