読書紹介 そういえば読んだことない 編Part10 『グレート・ギャツビー』
どうも、こぞるです。
本日オススメする小説はスコット・フィッツジェラルド作の不朽の名作『グレート・ギャツビー』です。日本では映画の邦題にもなった『華麗なるギャツビー』でも知られていますね。
超有名作な気がしますが、本格的に売れ始めたのは、作者の死後だそうです。ゴッホみたいですね。
ー作品内容ー
豪奢な邸宅に住み、絢爛たる栄華に生きる謎の男ギャツビーの胸の中には、一途に愛情を捧げ、そして失った恋人デイジィを取りもどそうとする異常な執念が育まれていた……。第一次大戦後のニューヨーク郊外を舞台に、狂おしいまでにひたむきな情熱に駆られた男の悲劇的な生涯を描いて、滅びゆくものの美しさと、青春の光と影がただよう憂愁の世界をはなやかに謳いあげる。
今回読んだのは村上春樹訳のものでした。村上春樹さんといえば、大のヤクルトスワローズファンとして有名で、毎年スワローズのホームページにエッセイを寄稿されています。
必要性のある無駄
よく、小説など、物語の新人賞の審査員コメントなどで書かれることに、無駄が多いという言葉があります。「事件が始まるまでにぐだぐだ話しすぎだ」とか、「不必要な会話でシーンが間延びしている」だとか。でも、だからといって、本当に物語に必要な物しか書かなかったら、それはほとんど箇条書きなわけですが、そういうことじゃなくて、その場でそれが書かれることに必然性があれば、どれだけ大したことのない内容であっても、許容されるのだと思います。
そういった意味で、この作品には非常に多くの必然性がある無駄が描かれています。
物語は全て、ギャツビーの隣に越してきたニック・キャラウェイの語りで進んでいくのですが、ニックのちょっとした感情や、2度と登場しない人物たちの名前や職業など、本筋には関係ないことがそこかしこに登場します。しかし、それがこの物語の厚みを確実に増してくれているといえます。
文学の面白さ
私のnoteを何度か読んでいる方はご存知かと思いますが、基本的に読書をエンターテイメントとして楽しんでいる傾向があります。なので、ジャンルとしてはミステリーやファンタジーが多いです。前述の審査員コメントもそういったものでよく見かけるものになります。
そういったエンターテイメントとしての面白さも十二分に含まれているのですが、それ以上に、多彩な文章表現で、一見必要のなさそうな情報を見事になじませ、そこに必然性を生み出していく、文学的な面白さをこの作品には強く感じました。特に、最終章。悲劇的な事件が起きた後のニック・キャラウェイの語りには、ものすごい引力とゾクゾクを感じさせらました。翻訳ものが苦手であったり、外国人の名前が覚えられないという方でも、ぜひ、読んでみてください。あの最終章の質感や温度感はまさしく名作と言えるものとなっています。
いちおう、言い訳を入れておきますが、ミステリーやファンタジーが文学的でないわけじゃないですよ。もちろん。
オールド・スポート
私が読んだ村上春樹訳の特徴として、訳者あとがきにも書かれていますが、「オールド・スポート」という言葉があります。これは、ギャツビーが作中で何度も口にする言葉(口癖)で、原文の「old sport」をそのままカタカナ表記にしたものになります。意味としては、「やあ友人!」とか、「my friend!」みたいな親愛さを表す、当時のイギリス言葉だそうです。
アメリカ人であるギャツビーがこの言葉を使っていることの意味や理由なんかも読んでいて見え隠れしたり、想像できるんですが、私が個人的にそれ以上に感じたのは、やたらこれいってくるやつ信用できないなというものでした。
なんでも「大丈夫、大丈夫」っていう人見ると不安になるみたいな。やたらと「オールド・スポート!」って言ってくる人って、絶対親愛なる気持ちもってないだろって気持ちになっちゃいませんか?文化の違い?私が捻くれすぎ?
でも、実際私だけじゃないからこそのお話なんだろうなあとも思うので、この言葉の本来の意味と、作中での響きの差を感じてしまいます。
二人
読んでいて、ギャツビーとニックの関係性に吉田秋生先生の漫画『BANANA FISH』のアッシュと英司というキャラクターを思い浮かべました。知らない方は想像つかない例えで申し訳ないです。別に二組の関係性が似ているわけではないのですが、なんとなく脳裏を過ぎるなと思い調べてみると、アニメ版『BANANA FISH』の各話副題に、フィッツジェラルド作品など(サリンジャーとヘミングウェイも)のアメリカ文学作品が使われているということでした。
アメリカの自由で華やかなイメージと、目の前の現実における様々で陰鬱な障害。そういったところに、私は似たイメージを重ね合わせたのかもしれません。
さいごに
正直、初めの二〜三章ぐらいは読むのに苦労しました。けれど、一度人物や設定が飲み込めてからは早かったです。中学生の頃に親に渡されたヘミングウェイでアメリカ文学に正直苦手意識を持っていたのですが、それが払拭されるぐらいの名作でした。
それと、最近映画化したものでのギャツビー役がレオナルド・ディカプリオということですが、キャスティングをした人の気持ちが痛いほどわかります。このシーンの表情をディカプリオにしてほしい!と何度も思いました。
外国の文学作品に苦手意識がある方ほど、村上春樹訳verは読みやすいかもしれません。当たり前ですが、日本語での文章表現が上手いので変な硬さを抜きにして読めます。なので、ぜひ、お手に取ってみてください。
それでは
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