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ヲススメラヂオの小説 part5 『砂漠の女ディリー』

 どうも、こぞるです。ヲススメラヂオ第5冊目で浜野風花さんに紹介していただいた、『砂漠の女ディリー』について書いていきたいなと思います。他の記事のような紹介文より、少し内容に触れたものが多いかもしれません。ご注意ください。
 ラジオは以下のリンクから別ページに行くとありますので、先に聞くと、よりこれを書いている奴が何を言いたいのかがわかりやすくなるかと思います。30分に満たないので、課題や作業のおともにいかがでしょうか。

小説っぽい

 こちらの話は自叙伝を編集して作り上げたものになるのですが、そこいらのフィクションよりも、ドラマチックでスリリングになっています。もはや、実は盛っていましたと言って欲しいぐらい。
 色々な方の自伝であったり、半生を描いたものっていうのはありますが、その中でも、良い意味でダントツで、小説っぽさがありました。
 リアリティがあって、現実の問題への警鐘がありながら、そのお話としての面白さや魅力が溢れている。おすすめです。
 

生命力

 ラジオ内でも、ゲストの風花さんが何度も発言されていましたが、主役で語り手のワリス・ディリーさんの生きるための力、前に進む行動に圧倒されます。
 おかしいと思ったことをおかしいと思い、相手に伝えることの大変さというのは、現代社会を生きていれば、多くの方が経験済みだと思いますが、ディリーさんは幾度となくその壁を乗り越えていきます。
 そして、それを武勇伝として自慢げに語っている部分もあるのですが、(和訳ではありますが)その語り口調から「いやあ、昔こんなことがあったのよ!あっはっは」とでも聞こえてきそうな調子があり、不快感がありません。
 社会的に見て成功した人が、自分の半生を語って嫌味がないって、これはすごいことだと思います。

自虐しない強さ

 人がなぜ自虐をするかというと、色々な理由があると思いますが、それは例えば辛い過去を笑いで清算しようだとか、行き過ぎた謙遜という部分がその多くにあるでしょう。
 ですが、ディリーさんは、謙遜することはあっても自虐することはありません。たとえ、どれほど悲惨な過去(砂漠で1人死にかけ、レイプ未遂、女子割礼、ストーカー被害などなど)があっても、それで自虐することはありません。この強さったらないです。
 自分の失敗も、他人の醜さによる被害も、その事件としてそのまま述べています。
 もちろん、その際の感情はあるのですが、そこに変な偏りが無いことが、このお話をより小説的にしているのかもしれません。

女子割礼のつづき

 ラジオでも幾度となくワードが出ますし、この本の最大のテーマの一つでもある女子割礼。どういうものかというと、まあショッキングです。心臓の弱い方や、痛い描写が苦手な方は調べる際気を付けてください。でも、気をつけながらでも調べた方が良いです。

 すごく短く言うと、女性器切除です。
 それが手術室などではなく、何の設備もない岩場の上なんかで、何の資格も無い人によって行われています。
 宗教上の理由とされているそうですが、ディリーさん曰く、コーランにそんなことは一言も書いていないそうです。コーラン読んだことないですが、まあ、凡そ宗教の原典にそんなことを書くことはないんじゃないかと。

 この行為への非難や、問題点なんかはラジオでも語ったし、この本にも書いてあるので、ぜひどちらかでチェックして欲しいところですが、この話の個人的タイムリーだったこととして、ラジオ収録の2日後にこんな記事がネットに上がっていました。

「女性器切除を犯罪化 スーダン統治機構が承認」
https://www.afpbb.com/articles/-/3293305

 ディリーさんは、WHOなどと一緒に女性器切除の断絶運動を行なっています。その活動が実際に今も行われていて、まだまだ小さな一歩なのかもしれませんが、成功している現在が、この本は何の終わりでもないんだということを感じさせてくれました。

さいごに

 社会問題というテーマを孕んだ作品なので、最初は表紙をめくる手が重かったのですが、あれよあれよと読み進めて、気づけば一瞬で背表紙にたどり着きました。
 単純にエンタメとしても面白い本なので、1人の女性の一代記としても楽しめる作品となっています。
 あと、ディリーさんがすごく好きになります。スーパーモデルなんで当たり前ですけど、調べるとめちゃ美しいので、名前で画像検索するだけでも楽しかったりします。
 日本ではあまり知られていない内容や、スーパーモデルというものに触れられるものにもなっていますので、ぜひ読んでみてください。

それでは。 

https://www.amazon.co.jp/砂漠の女ディリー-ワリス-ディリー/dp/4794209207



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