【レポート】初めて遠征して、本屋さん主催のイベントに出店した話
さて、前回の準備編に続き、11月9日(土)、10日(日)の2日間、高知蔦屋書店と高知県長岡郡大豊町が、廃校を活かした書店による「地域密着&コミュニティ形成」を目指して共催された『出張高知 蔦屋書店 in おおとよ小学校』のレポートを。
私は鳥取でお仕事があったので、特急と高速バスを乗り継ぎ、5時間半ほどかけて、7日の夜に高知入りした。前回も触れたが、陸路も好きなのである。
ホテルに着いたのは、20時近くだったが、食いしん坊なので、いそいそと荷物を置き、まずはカツオのたたき。
英気を養えたので、まちの雰囲気を見たく、翌日は30分ほど歩いて、高知蔦屋書店ニシタニさんにご挨拶。
11時前に着いたのだが、3階の子育てフロアで読み聞かせがあったり、1階のカフェでは仕事をしている人がいたり、人の出入りが多く、建物も地元に根付いていることがよくわかるつくりだった。
ニシタニさんとお話しながら、私は思っていた。
「絶対、この人は食いしん坊だ!」(偏見)
出張先で食いしん坊と思しき人に出会うと、必ず、美味しい店を聞くようにしている。
今回一緒に出店する、倉貫書房の運営元ソニックガーデンのフジワラさんとは、この日のランチから合流する予定だったので、お薦めのお店を聞くと、待ち時間に良いお店とお薦めの美味しいものを教えてくれただけでなく、荷物まで預かっていただいた。
食いしん坊は皆、いい人なのだ。
食いしん坊の薦めてくれるものに間違いはない。
とさのさとAGRI COLLETTO、ファーマーズマーケットでランチ前なのにつまみ食いをしたりして、フジワラさんの方が先に到着するほど長居をし、「高知に初めて来たらまずはここ」と薦めていただいたお店で、がっつりランチを頂く。
思えば、これがフジワラさんと私の、胃袋の限界を超えろ旅の始まりでもあった。(注:本のイベントに出店に来ました)
ランチ後は、おおとよ小学校の下見へ。
ポンコツナビの私は、いつもどおりフジワラさんの問いに適当な返事をし、高速を逆方向に走らせたので1時間以上かかったが、通常なら高知市内から車で30分ほど。
まずは、来たことがあると言うフジワラさんお薦めの、小学校の向かいにある「杉の大杉」と「美空ひばり遺影碑・歌碑」を。
多くは語らないが、歌碑では絶対にボタンを押してほしい。間違いなく素晴らしい体験ができる。ちなみに私は、無料なのにお金を払いたい気持ちになり、そっと小銭を置いた。
いよいよ小学校へ。
廃校になったのは2年前とのことで、空調もあるし、洋式トイレもある。町の人たちが掃除をしてくれた後だったこともあり、きれいだ。2階の教室は、広いベランダもあり絶景。鳥取から移動して来たこともあるが、高知は天気が良ければ暖かく、出店側でなければ、ここでまったりしたい。
今回は使用しなかった3階も見せてもらったのだが、音楽室には楽器や図書室の本が残されていた。家庭科室もあり、料理も作れそうだ。近くに温泉もあるようなので、旅慣れた私なら、寝袋でしばらく住める。
そして、もう仕上がっていたTSUTAYA中万々店の部屋に衝撃を受けた。
書店員の山中さんの100冊が並べられていたのだ。
もはやTSUTAYA中万々店というより山中書店である。
我々も搬入を済ませ、駐車場に指定されていた、主催曰く徒歩10分の大豊学園に行ってみる。
大杉の駐車場を貸してもらえたら小学校まで徒歩1分もかからないのだが、そう甘くはないらしい。大人の事情というやつなのだろう。
駐車場から、絶景の橋を渡って会場に向かう。
かつて通学路だったと思われる道を見つけ、、、、
めっちゃ急やないか!
すれ違う年配の方が平気な顔で降りてきたり、通学路であったことを考えると、「私の体力の問題か!?」と思いながら、ぜえぜえ言いつつ急勾配の坂を上り切ると、そこは運動場でした。
イージーモードの道はないか、帰り道はぐるーっと回ってみる。
絶景、絶景、また絶景。
途中で川に降りられる道を見つけ、フジワラさんと私は、お互いに「この人、川に入りたいタイプ」という確信があったので、何も言わず迷いなく進む。
より川に近づけるルートがないか探った結果、フジワラさんは川に落ち、左足の靴下を脱いで運転することになったので、遠慮なくゲラゲラ笑い、ソニックガーデンのメンバーに告げ口しておいた。
こんな大人になってはいけない。
徒歩15分ほどかかるが、このルートが気に入り、翌日も翌々日もこのルートを使った。
今後、何か開催することがあるなら、絶景ポイントを記した地図をつくればいいのに。
この後、私には重要な任務があった。
私たちの教室は、はるばる四国4県から、素敵な本屋さんや創り手さん10店に集まっていただいたので、「できるだけ多くの人に知ってほしい」という思いがあった。
インスタグラムやXで、各店のご紹介をし、高知蔦屋書店さんにもイベントページでの紹介や、SNSでシェアいただいていたが、それだけで届くわけがない。
さらに、共催の大豊町とモデルビレッジが配っているチラシにも、「倉貫書房」と書かれているだけで、我々が1ヶ月も前に提供した情報は何も使われていなかった。
四国で本のイベントを成功させている方は、動員をシビアに見ておられ、様々な策を取っていらっしゃるので、何度も大丈夫なのか確認したが、温度感が伝わっているように思えなかった。
そこで、私は最悪の場合の仮説を立てた。
高知蔦屋書店は本の売り場面積より、それ以外が大きく、地元の人の高知蔦屋書店のイメージは「本屋」ではない可能性がある。さらに、本来、開催地の傾向を良く知る共催が、企画に合わせて集客施策を打つのが良いが、その知見・ノウハウがない可能性がある。
それで、急遽、せめて本屋と思わずに来場された方々にも興味を持っていただけるようポスターを作ることにしたのだ。
出張前日ギリギリまで作業し、移動しながら、高知から出店される方に現地で印刷できる会社がないかご相談し、ご紹介いただいた会社にすごく親切に相談に乗っていただいたのだが、結局、Canvaが早くて安かったので、鳥取での仕事の合間に、納期ギリギリに滑り込みで入稿した。
そんなバタバタ作ったポスターを、高知の宿泊先に納品するよう手配していたのだ。チェックインと同時に、預かってもらっていたポスターを受け取って、出来上がりを確認する。私はデザインを仕事にしている人ではないのでヒヤヒヤしていたのだが、PP加工も入って、それなりのものができていた。
安心したところで、私はずっと誰かと一緒に行動できるタイプではないため、ひろめ市場で再会することを約束し、フジワラさんとはいったんお別れする。
細々した仕事を片付け、いざ高知の本屋さん巡りへ。
始めに向かったのは、徒歩15分ほどの「十月」。
ただ、歩いているうちに、さきほど見た「TSUTAYA中万々店」に行ってみたくなり、通り過ぎて、さらに20分ほどかけて到着。
「明日買おう」と思っていたはずなのに、我慢しきれず山中賞を入手。
「やっぱり来て良かったなー」と思いながら十月に戻ると18時で閉店していた。Googleマップを信じすぎてはいけない。
時間ができてしまったので、高知蔦屋書店のニシタニさんから聞いていた地元の本屋さん「金高堂書店本店」に向かう。途中で、見つけた「オーテピア高知図書館」にも寄っていると圧倒的に時間が足りない。
高知、おもしろいじゃないか。
お休みだったので断念したが、鳥取で複数の人から聞いていた「うずまき舎」にも、いつか行ってみたい。
ひろめ市場でフジワラさんと合流。
食いしん坊なのでテンションが上がる。
お店がいっぱいあってわからないので、とりあえず、明神丸のかつおのタタキ。フジワラさんが、でっかいアジフライ、安兵衛の餃子なども買ってきてくれる。
なるほど、うまい。
より美味しいものを求めるモンスター化した私は、食いしん坊センサーが働き、隣のご夫婦をナンパする。
地元の方と思って声をかけたのだが、なんと関西から。しかも車で下道。
かつおに魅了され、5月の初鰹、11月の戻り鰹の時期に来るらしい。しかも、お店に予約が取れていないのにダメ元で来たそうだ。
地元の方ではなくても大当たりの、本物の食いしん坊である。
すでにおなか一杯だったのだが、聞いてしまったら食べないと後悔する。
我々は、追加で、やいろ亭のかつおのタタキ・塩(1時間振り・3回目)、味太郎のめひかりの唐揚げを食べた。
このご夫婦が素敵過ぎて、とても楽しく、2食分くらいの量を食べたのだが、ゴムのズボンを履いていたので問題なかったし、大満足で宿泊先に戻るのであった。
そして、いつ、出店の話が出てくるのかと思っているであろう皆様、お待たせしました。
いよいよ初日。
やり取りはしていたが、「まるとしかく」さん以外は面識がなく、搬入口が狭いこと、搬入後の駐車場が離れていること、什器が学校の備品であること、などからスムーズにサポートできるか緊張。なんとか開始までに準備していただくことができ、一息つく。
さすが、まるとしかくさんに構成まで考えていただいた上でお声かけいただいたおかげで、気付けば、めちゃくちゃ素敵な本の空間に仕上がっていた。
これは、たくさんの人に見てほしい。
何より高知蔦屋書店のニシタニさんが、すごく喜んでくれていて、「この人は本当に本が好きなんだな。書店員さんだからこそ、本と出会う機会が減っていくことを悲しんでいたのかもしれない」と感じた。
TSUTAYA中万々店の山中さんも来てくれて、「この部屋、ずっと居れる」と言ってくれて、すごく嬉しかったし、ご協力出店者さんたちに改めて感謝した。
初日のみの出店者様より、まずは今治から「こりおり舎」。
珈琲は豆から買う派で、出張先では必ず入手するので、このZINEは絶対欲しかった。
ドリップバッグもあったので迷わず購入。
選書にもツボを刺激され、思わず仕入ルートも聞いてしまった。
続いては土佐町から「合同会社風」。
先日、土佐町役場が日本地域コンテンツ大賞・内閣府地方創生事務局長賞・最優秀賞を受賞した『とさちょうものがたりzine 12号』。
2号を入手し、13号とポストカードを頂く。
「鹿の角ガチャ」では「豊穣の祈」を引き当てる。
最後は高知から「高知の歩き方」。
高知では作り手さんが出店できる場が少なく、香川や徳島まで遠征されていると聞いていたので、本に関わるすべての人を幸せにすることを目指す我々としては、こういう方々にも枠を使っていただきたいと思っていたので嬉しい。
すごく嬉しかったのが、ひろめ市場で出会った素敵な夫婦が、その場の社交辞令でなく、本当に来てくれたことだ。当然ながら、来てくれた瞬間、ハグである。
しかも、お薦めのお土産まで持たせてくれた上、本まで買ってくれた。
こういうことがあるから旅はやめられない。
フジワラさんは、ここでもまた、美空ひばりの歌碑に行くことを強く薦めていた。この人はもう、大豊町役場で副業した方がいい。笑
結局、初日の来場は、ノーゲストの時間が多く、来場数は120名程度だった。
目標は高く持った方がいいとは言えど、共催から2,000人目標と聞いており、少なくとも700~1,000人は来るだろうと思って出店したので、とにかく残念だった。
何より主催の思いを聞いたので、近隣の土佐れいほく地域(大豊町、本山町、土佐町、大川村)に住む人でさえ、「知らなかった」と言うほど届いていないことが悲しかった。
共催も良い人たちだったので、知見や経験がないことを事前に教えてくれていたら、出店者の皆さんのお力も拝借できたかもしれない、と悔やまれる。
とりあえず、何ができていて何ができていないかを簡単にヒアリングし、集客のために自分が当日でもできることを整理した。
そんな感じで、少し精神的に疲れたので、高知市内に戻った後、フジワラさんと「夜ごはんは30分一本勝負くらいで軽く食べましょう」と話し、普通の居酒屋に入った。
ところがどっこい。
この居酒屋もとんでもなくうまかった。
モバイルオーダーなのに、だ。(偏見その2)
徒歩圏内のお店だったが、路面電車にも乗りたくて予定していたのに、気付けば終電を過ぎていて乗れなかった。
初日に出店くださった「#高知の歩き方」のZINEに路面電車のことも書かれており、東京に戻ってから、やっぱり乗っておきたかったと思う。
でも仕方がない。どうにもこうにも食いしん坊なのだから。
うまいごはんで、気合いを入れ直して2日目。
昨日より1店多いので心配だったが、この日も無事、搬入を終える。
初日だけの出店者さんたちも素敵だったので、できるだけ多くの人に知っていただきたくて、個人で購入していたもので、初日だけの出店者閲覧ブースもつくる。
多くの方に、見ていただけて嬉しかった。
まるとしかくさんが、木片を持ってきてくれていて、どろん堂さんと一緒に看板を書いてくれた。黒板も素敵にしてくれた。
この日は、開始時間から家族連れが多く、初日より賑わっているように感じた。
午前中は、共催から「チラシを置いてもらっている」と聞いていた、道の駅とコンビニへ。
はじめに、道の駅に行くと、レジ前にチラシは置いてくれていたが、お客さんからははっきり見えない。お店の人が話題にしてくれない限り気付かないと思うが、このお店はお客さんが途絶えず、レジも並んでいることが多いので不可能だ。 お店のお客さんに話しかけていいか聞いてみると、いいと言ってくれただけでなく、「テーブルごとにチラシを置くといいよ」と言ってくれた。
その後は、コンビニへ。
こちらは、使っていない方のレジに置かれていて、絶対に見ない。
お店の人に、チラシを見えるところに置きなおしていいか、聞いてみたら、「昨日からやってたん!?それは、大変だ!」と、お店の入口に、いっぱい貼ってくれた。
このお店も、お客さんが途絶えず、時間を取らせて申し訳ないので、自分で貼らせてもらった。
お店で働いた経験がある方であればわかると思うが、「チラシを置いてほしい」と頼まれれば置きはするけど、よっぽど印象に残らないとお客さんにお薦めするまではしないし、何か質問されそうな内容だと面倒なので目立つところには置かない。
未だに正解はわからないが、少なくともお願いの仕方に工夫が必要とは思っているのだが、この2店舗は、本当に優しくて、こちらの意図をすぐに汲んでくれて、提案してくれたので驚いた。それだけで、良い町だとわかる。
お世話になったので、各お店で少し買って、小学校に戻ると、家族連れで賑わっていて安心した。ソニックガーデンはプログラマ集団で全国にメンバーがいるので、四国在住のメンバーも家族を連れて来てくれた。
結局、この日はノーゲストの時間も少なかったので良かった。
2日目のみの出店者様より、まずは「どろん堂」。
カニたちもめっちゃかわいい。
ZINEの『なりたいならなれよ』が、ほんわかしたビジュアルに反し、生き方の指針の本質的なものに感じた。好みが知りたくなりフリーペーパーもいただく。
続いては「ミスミアヤカ」。
ビジュアルがかわいい。
最新作品集『野鳥はチョコレートパフェのゆめをみる、というゆめをみる。』
とにかく甘酸っぱい。
始発の新幹線の世界観が一瞬で変わってしまった。
3店目は香川から「外海書房」。
SNSなどで拝見しており、渋めの古本を購入しようと決めていた。
いろいろ目移りしたが、『阿部公房の劇場』を入手し大満足。
出店される際の什器や備品も素敵だった。
最後は高知から「机屋」。
いただいていた写真のかわいさや、事前のやりとりの柔らかさから、勝手に女性だと思っていたので、当日お会いして驚く。
当日拝見し、古典が欲しいと思い、内田百閒を見つけ、ほくほくして購入。
※ブースの写真を撮り損ねました。
両日の出店者様より、徳島から「本や学びやmerkki」。
9月にオープンされたばかりですが、充実のラインナップで、悩みに悩んで、十七時退勤社さんの本を購入。
実店舗で倉貫書房の本もお取り扱いいただいております。
電子マネーが使えるのも嬉しい。
※ブースの写真を撮り損ね、一部が写った写真です。
続いては、愛媛から「まおこの本棚」。
絵本も充実しており、めちゃくちゃ惹かれたのですが、あえての『プルーストとイカ』を。
大トリは、徳島から「まるとしかく」。
構成まで考えた上で、今回の出店者の方々にお声かけいただいたおかげで、両日ともに、本好きの方々にも「ずっと居られる」と言っていただける素敵な部屋になりました。
先日の訪問時に絶対ここで買おうと決めていた本を購入。
番外編は、「TSUTAYA中万々店」。
前日に店舗にお伺いしたにも関わらず、やっぱり買ってしまった。
今回の出店はメンバーでない人と行ったのだが、その人も複数冊購入しており、山中さんのフリーペーパーやPOPコメントを見ると致し方ないと思う。
食いしん坊編。
本以外の出店者さんのところで食べたランチ。
買ったお茶。
チラシを置いてくれた道の駅で食べたソフトクリーム。
食いしん坊だと話したら、優しい人たちがお土産に持たせてくれた美味しいもの。
土佐の赤かつおにいたっては、ご飯にもパスタにも合い、東京に戻って3日目にして、ほぼ残っていない。
こりおり舎の珈琲も驚きの美味しさ。
2日間出店してみて、本当に学びが多かった。
私自身、20年も本を読まなかったのに、去年、本屋さんとの出会いから急にハマり、多分生涯続く趣味になると思う。
本や本屋さんの役割は、情報との向き合い方が難しくなっていく中で、少し変わってきているように感じており、個人の趣味というだけでなく、教育面で見直される可能性もあると思っている。
私のような人がいるかもしれないので、その楽しさに出会える機会を増やしたいと、改めて思った2日間だった。
この後、東京へ戻るのに陸路ルートを選んでいた私は、瀬戸大橋線のトラブルに巻き込まれることになるのだが、それはまた別のお話。