気軽に「キモい」と言う女を許すな

 先日、女性向けシェルターに自民党議員が集団で押しかけ女性蔑視的な言動をした事件がありました。手続き的にも横暴であり、また活動の趣旨も理解せず慈善団体を利用しようとしたという点でも傲慢で許されないことだと思います。

 しかし、それを告発した仁藤氏のその後のツイート。『シリーズ キモいおじさん』と題して男性の言動を非難していくというもの、これもまた表現として非常に悪いものであり、あってはならないものだという話をします。

 「キモい」という言葉は、自分の価値観で他人をなじり、攻撃するものです。「バカ」とか「ブス」と同じ。そこには根拠をもとにした理路整然とした理屈は必要なく、「自分はキモいと感じたから」というだけで発することができます。本来他人の言動を咎める上で「バカ」だの「キモい」だのを使うべきではありません。非難と罵倒は異なります。しかし、若い女性の中にはカジュアルに「キモい」「キショイ」と発言し、それを悪いと思っていない人が多いのではないでしょうか。

 これは、若い女性というだけで寄ってくる男性が多いので、自衛の為に拒絶する必要があるというのもあると思います。また、まだ世間をよく知らず身勝手さを残しているとも見られます。「女性はチヤホヤされて傲慢になっている」と見ることも可能でしょう。

 しかし、女性が気軽に「キモい」と言えるのは、決して女性が尊重されている為ではありません。逆に女性が軽んじられているからこそ看過されているのです。

 男社会の中には、「女の我儘に付き合うのが男らしさだ」というマッチョイズムが存在します。これは女性を主体的に考え発言する一人前の人間と捉えず、非力で身勝手な庇護対象だと捉える価値観です。また、中には女性に嫌がらせをして「キモい」と拒絶されることに快感を覚える人たちさえいます。それ自体も女性の感情や発言を軽んじ本気で捉えていないが故の行為です。

 女性を一人の人間として意思表示をする主体的な存在であると認めるのであれば、当然「キモい」と軽率に他人を罵倒する行為は咎めるべきです。セクハラを告発し、他人を非難する時は感情的な罵倒をもってするのではなく、理路整然と行わなくては他人に伝わりません。「女の子を怒らせちゃった笑」と笑われるだけです。

 私はフェミニストに同情する立場であり、ミソジニーに基づいてフェミニスト叩きをする輩に与したくはありませんが、ただ一つアンチフェミニストに褒められる点があるとすれば、フェミニストの発言に関心を持ち言論として精査する目を持っていることです。「所詮女の子の言うことなんだから大目に見てあげなよ笑」という、“男らしい”有害な善意よりはマシでしょう。

 言葉は丁寧に扱うべきです。特に誰もが気軽に全世界へ発信できるようになった今、自分の価値観で誰かを罵倒する言葉を安易に使うべきではありません。もし使うのであればはっきりと対象を限定し、根拠を並べ立て、発言の責任を自分で負うという覚悟を持つべきです。

 私のこの記事も、私の偏見に基づいて「安易に『キモい』って言う若い女性多くね?」と雑に語るものなので、当然誰かを怒らせることもあるでしょう。怒ったら何かしらのアクションを頂けると幸いです。発言の間違いを看過せず指摘すること自体が一種の尊重の形なのですから。

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