見出し画像

週刊レキデンス ~第12回~ 経口避妊薬と低用量ピルの始まり

最近低用量ピルとか緊急避妊薬の承認が・・・とかよくニュースで聞きますよね?経口避妊薬低用量ピルとは一体何なのでしょうか?
まずは、その入り口となる薬の歴史について探ってみましょう。

画像2

ある2人の出会い

時は遡る事 1950年 マーガレット・ヒギンズ・サンガー(Margaret Higgins Sanger, 1879年9月14日 - 1966年9月6日)が、生物学者 グレゴリー・グッドウィン・ピンカス(1903年4月9日– 1967年8月22日)と晩餐会の席で出会った際に、「女性自ら行え、しかも確実な避妊法はないものだろうか?」と相談したことがありました。

画像3

その1年後、1951 年 カール・ジェラッシ(Carl Djerassi、1923年10月29日 - 2015年1月30日)によってノルエチステロン が発見されました。(1)これは、 テストステロンの 17α-エチニル誘導体を合成したところ、アンドロゲン作用はほとんどなく代わりにプロゲスチン作用を示すことが判明したのです。ちなみに日本では、1958年に塩野義製薬が製造承認を経てノアルテン®錠として単剤での販売されました。(2)

同時期、1953年にはフランク・ベンジャミン・コルトン Frank Benjamin Colton 1923年3月3日- 2003年11月25日 )によって ノルエチノドレル が開発されます。 (3)この開発がのちの Enovid® に繋がっていきます。

1955年に日本で講演を行ったピンカスは、黄体ホルモンによる避妊効果について報告を行います。

こういった報告から、プロゲスチン(黄体ホルモン) 単剤投与では破綻出血あるいは投与中止後の無月経などがみられていましたが、エストロゲン(卵胞ホルモン)を混合すると症状が減少し、かつ少量で月経困難症などに効果が得られることが分かってきました。この辺りから黄体ホルモンと卵胞ホルモンの配合剤の有用性を認めるようになってきました。

配合剤の誕生

そうして、1957年ノルエチノドレル 9.85 mg/メストラノール 0.15 mgの合剤 Enovid® 10 mg 月経異常に対して使用が始まり、1960年には経口避妊薬として適応が追加になりました。 

血栓症の報告がもたらしたもの

しかし、1961年以降 Enavid つまり、合剤による血栓症の報告が上がってきます。(4)これをきっかけとして、FDA1969年エストロゲン量を50μg以下に制限するよう勧告が行われました。

これによって時代はエストロゲン含有量の低用量化に進みます。
この様な背景によって、エチニルエストラジオール( EE )の用量が 50μg 以上は高用量、50μg は中等量、50μg 以下は低用量 そして30μg 以下を超低用量と区分していることになったのです。

画像1

参考

1. Djerassi,et al.J. Am. Chem.Soc.1954,76(16)4092–4094 doi:10.1021/ja01645a010
2.ノアルテン錠 インタビューフォーム
3. Colton FB.Steroids. 1992 Dec;57(12):624-30.PMID:1481226
4. Jordan WM. Pulmonary embolism. Lancet 278(7212):1146-1147,1961

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?