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教えることと育むこと

教育とは、「教える」ことと「育む」ことを併せたものだと言われています。教えるとは短期的に結果を出せる分野であり、育むとは長期的に結果を出せる分野です。教える分野では解答は100人いても1つだけど、育む分野の解答は100人いたら100通りある。だから、100通りの解答を受け止める体制をつくる。

これは、「つまづく子ほど大きく伸びる」(生駒富男さん著)という本に書かれている内容です(表現は多少変えています)。

「教える」と「育む」

私は今年度から教室に入れない子の居場所づくりの支援をするという仕事をいただきました。決定権はないものの子どもとは一番密に関わることができます。なので一から居場所づくりについて勉強を始めました。

居場所とはなにか。不登校とはどんな段階があるのか。最終的なゴールはどこに設定すべきか。親御さんの気持ちはどうか。

そんな中、冒頭の言葉に出会いました。シンプルだが、奥深い。

私は学級担任をしていたころ、多くの時間は、単元ごとに授業を行い、テストをする。模範解答を示し、知識・理解を教えていました。つまり教えることの方が多かったのです。

ただ「教える」分野は必ずしも教員が教えなくてもいいわけです。もちろん普通に自習するより、授業をした方が、より面白く、より分かりやすく伝えられると思います。しかし、教員が教えようが、ウィキペディアで調べようが、親御さんが伝えようが、事実は変わりません。

一方「育む」分野は違います。育む相手の状況によって、何をいつどのように伝えるのかが肝です。そして私は「育む」ことこそ教育者の腕の見せ所だと考えています。

例えば、野球のピッチングフォームの型はもう大勢に知られています。もし野球を知らなくても、経験者の人に見せてもらえばいいし、テレビでプロ野球の試合を見せてもいいし、youtubeの動画を見せてもいいでしょう。まず左足を後ろに下げて・・・と、言葉で説明してもいいでしょう。だから教えることはできます。

しかし、子どもにやらせてみせても、すぐにきれいなフォームになることはないでしょう。「左足をあげたときに、体を回転させながらバランス良く立つんだよ。」「違う違う。左足あげるのと同時に回転するんだよ」「いや違うって。」
単に知っているだけでは、教えることはできても育むことができません。

野球を教えることを専門で行う人は、正しいフォームを言い続けたりはしません。目の前の子どもができている部分とできていない部分を瞬時に見極めます。そして、その部分を補うアドバイスをします。「まず横向きになって、右足で立ってごらん。まずそれから投げてみよう。そう。手首を使うことはできているね。じゃあ、正面の状態から、右足の片足立ちの状態になってごらん。・・・」

これはあくまでも例です。目の前の子どもに合わせてアドバイスも変化していくでしょう。目の前の状態から情報を読み取り、必要な部分を把握する。これが見極める力であり、教職が専門職と言われる所以だと思います。

見極める力

さて、この見極める力。見極める力をつけるためには知識を勉強する必要があります。しかし、私はなまじ知識だけを身につけると大切なことを見落とすのではないかと考えました。

教室に入れない(一般的には不登校)状態を例に考えてみます。不登校について勉強していくと、いろいろな人が不登校の段階を定義しています。

一般社団法人不登校支援センターさんは6段階で定義していて、それぞれの状態の特徴を紹介しています。

また、不登校の親子を支援する臨床心理士の福本早穂さんは、5段階で設定していて、それぞれで必要な関わりを提案されています。

今回お伝えしたいのは、この段階設定は目の前の子どもを見極めようとするのではなく、目の前の子どもを段階の枠組みで考えてしまう危険があるのではないかということです。

日本語がややこしくなってますね笑。

つまり、目の前の子はこういう様子である→今はこんな支援が必要であろう→こういう状態は〇〇段階と筆者は言っているのだと思いますが

見極める力がない読者だと、

不登校は5段階ある→この子の不登校になってからの時間がこれくらいで、こんな様子だから〇〇段階だろう→〇〇段階はこんな支援が必要だ。となってしまうのではないかということです。

何が言いたいのかというと、知識に引っ張られるのではないのかということです。せっかく知っている知識ですから使いたくなる気持ちも分かります。

しかし、先に示したように、不登校の段階ですら人によって違います。学んだ知識だけに頼るのは早とちりを行いかねません。

まとまってないまとめ

一般の親御さんは専門家ではないので、段階の枠組みに頼らざるを得ないかもしれません。教師だって絶え間ない勉強をしないと全然だめです。

落ち着きがない、おとなしい、勉強に興味がない、人見知り、集中力がない・・・世の中にはいろんな枠組みがあります。

そして、その枠組みに効きそうないろいろなことを「教え」たくなってしまうかもしれません。

しかし、まずは目の前の子どもを見て、どんな状態なのか、どんな支援を求めているのかを見極めて、子どもを「育もう」という意識は持ち続けておいた方がよいなと思います。

釈迦に説法だったらすみません。私の勉強の途中にふと思いついたことを書いたまでです。最後までお読みいただきありがとうございました。何かの参考になれば幸いです。素敵な一日をお過ごしください。

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