主観的な「痛み」

これは男の性役割である家族を養う賃労働と家事育児介護のケア労働を男が一手に引き受けて見返りを求めずに働き続けるという社会を目指す人にとっての正解じゃないかと思うのである。

つまりは女性は体が弱いのだからいつ働けなくなるかわからない。だからこそ男がその性役割として高給を稼ぎ、家族の生活の基盤を作るべき。なので男ならば年収一千万くらい当然稼ぎ出すべきだという女性の要求は当然でしょう。女性が働いているからと言って男が専業主夫になるのはおかしくて、男なら自分の食い扶持くらいは稼ぐのが当然。なぜ女性が男の生活費を払わなきゃいけないんですか。

こういう主張はジェンダー平等を叫ぶであろう女性たち。ツイフェミさんから聞いたことがあるわけである。で、ワンオペ育児なんておかしい。家事育児介護のケア労働を女性が担うなんて女性差別ということになる。

全部とは言わない。女性だって自分の料理技能を見せびらかしたい時があるだろう。そういう時には女性も料理してあげる時はあるだろうけれど、男がフルタイム残業付きの仕事なんていうことは言い訳にならない。残業時間を1時間くらい減らして子供の保育園の17時のお迎えくらい行けるはずだからそれくらいの努力をしてよ!という女性もいたと思う。

いやいやそれは、分身の術を使って会社で仕事しながら保育園のお迎えを両方やるの?というと、そんなの男なら簡単でしょ。と言われたわけである。

いやいや、女性がそれをできるのは時短勤務だからでしょう。時短勤務にすれば男も女性並みに収入は減るよ?というと、それはダメ。家族が安心して暮らせる収入は当然でしょう。その上でガンガンケア労働して。女性の苦労を考えて!というわけである。

「そんなの死んでしまいます。」というのがその時の結論だったけれど、女性側はそれには納得していないわけである。

男なら女性がどんな無理を言っても「ああいいよ」と聞き入れてくれるはず。少女漫画のやしい男性ヒーローなら主人公のヒロインのわがままを全部聞いてくれるのだから現実に女子が困っていることを全部男が叶えてくれるのが男女平等、ジェンダー平等のはずというのがフェミさんの願望なのだと思う。

女性たちの精神世界では「自分は百パーセント頑張っている。それでも足りないのだから暇そうにしている男がちょっとはやるのが当然。それをやらない男どもはDVモラハラ」というのがフェミさんの本心なのだろう。

かの上野千鶴子御大が「男が300万、女が300万稼いだら共働きで世帯を持てる」と言ったことがあるが、多分、多くの女性たちは「自分は目一杯働いて300万だから家事育児介護のケア労働は無理だけれど男は本来1000万稼げるはずなのに300万しか稼がないということは本来の力の30%しか使っていない筈。だから男たちは家事育児介護をガンガンできるはずよね。」と誤解したのではないか。

フェミニストさんの心の奥底には男女の給与格差というものがあるが、同一労働同一賃金ということであれば説明できない給与格差は15%程だそうである。

女性たちがフルパワーで働いて300万、男どもはサボりながら働いて300万だから家事育児介護のアンペイドワークは男たちが全部担える筈!と女性たちが勝手に妄想しても実際には男たちもフルタイム残業ありでその給料だったからケア労働をやる余裕がなかったというのが現実のところであろう。

現実と妄想がマッチしなかったので上野大先生も「おひとりさま」の境地に向かうしかなかったということであろう。

男女共同参画が「男と女のペイドワークとアンペイドワークの比較では女性の方がアンペイドワークの時間が極端に長いが、それは男たちが長時間の賃労働をやっているからであり、ペイドワークとアンペイドワークを足せば男女とも同じくらい働いているよ!」と言ったにも関わらず「男はアンペイドワークが少ないからもっとアンペイドワークを増やせ!」と合唱したフェミさんたちである。現実を見る能力についてはいささか欠けているというのが本当のところだろう。

残念ながら男女平等について男女が合意できる可能性は特にフェミさんとは困難そうである。恐らくは上野大先生は「知ってて煽っている」とは思うのである。けれども、そのお弟子さんたちは極論すれば「男99%の負担で女性様が1%も負担している!これは男性優遇!女性差別だ!」と何の疑問もなく言えてしまう人たちかもしれないのである。

客観視すればおかしいというだろうけれど、主観的に女性の苦労を感じればそうなっても不思議はないわけである。だって女性には男の苦労や苦しみはわからないのである。これは横の人が殴られたとしてもその痛みを共有することはできないということである。痛みを感じているのはその人自身のものだけである。客観視するということは他人の痛みも想像するということであるが、主観の人は「自分の痛み」だけについて言及するわけである。

なので、男女平等については合意点に達することは困難と言えるのかもしれない。

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