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郷愁に浸る~10年ぶりに訪れた甲子園で感じた時代の変化~

藤川球児に憧れる野球少年だった。
わかっていても打てない豪速球で三振の山を築いていく。
そんな姿に憧れて、中学時代はストレートで押していくスタイルで白球を投じていた。

そんな憧れの藤川球児が引退する。
球場から遠ざかっていた足はこの特別な事態を受けて、甲子園球場へと向かった。小学生以来の生の阪神戦だ。

本当に久しぶりに訪れた球場は時代の変化を感じさせた。
ファンクラブ会員だった少年時代に全てを覚えていた応援歌は、選手の入れ替わりに伴って変わってしまった。
だが、それ以上に応援やグッズ、ファンの動き等々、野球を取り巻く環境に大きな変化を感じた。幼さ故の記憶違いもあるだろうが、少しばかり綴ってみようと思う。

梅田のサラリーマンとスマホの普及

僕が小学生のころといえばまだスマホが一般普及し始めた頃。当時の情報伝達はテレビやメルマガが主流だった。毎日の阪神戦の試合結果は親のガラケーに届くメルマガで確認していた。結果を知ってから眠るのがルーティンだった。
そんな古き良き平成中期の時代。仕事帰りのサラリーマンも今のように手元のスマホで試合の情報を簡単に手に入れられたわけではなかった。それでも、帰るまで待ちきれないのがファンというものだ。

甲子園に試合を見に行き、藤川球児のユニフォームを着て帰宅する。すると必ずと言っていいほど、阪神電車から御堂筋線に乗り換える移動の時に仕事帰りのおっちゃんから「お兄ちゃん、今日は勝ったんか!?」と聞かれる。「勝ったで!」と答えると一緒に盛り上がるし、「負けた!」と答えると一緒に悔しがったり愚痴ったりする。正直知らないおっちゃんにいきなり声をかけられることに怖さも覚えていたが、それ以上に楽しさがあった。

阪神ファンが気さくに話しかけてくるのは今でも変わらない。でも、駅で、帰り道で一喜一憂するあの関係性はスマホの普及によって失われてしまったのだろう。先日の帰り道に妙に感じたもの寂しさの正体がここにあった。

それと同様に、他球場の試合展開への関心も薄くなっていたように感じる。
阪神戦のチケットを取り逃して、代わりに京セラドームにオリックス戦を見に来た阪神ファンたちが甲子園の試合状況のアナウンスを見て盛り上がる。甲子園に集まった阪神ファンたちが、巨人が押されている展開を知って盛り上がる。あの楽しさももうなくなってしまったのだろうか。

スマホの普及によって情報を早く簡単に取れる時代が到来した。その一方で、失われてしまったコミュニケーションも存在する
この変化は消化試合ということや、コロナ禍のシーズンということに由来するのかもしれないが、あの時のようなコミュニケーションが生じても、そこで生まれる感動の性質は変わってしまっているんだろうなあ。

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選手のグッズとマーケティング

大山選手が打席に立つとスタンドが赤く染まる。梅野選手が打席に立つとスタンドがピンクに染まる。選手の名前が印刷されたプリントタオルをファンが掲げていた。(写真は公式オンラインショップより)
・・・昔からあったっけ?
記憶に間違いがなければ、昔の(少なくとも阪神の)応援タオルは大体同じ色合いで、選手の背番号と名前が違うだけといった商品を展開していたはずだ。だから近くで見ないと誰のタオルなのかわからないし、それを掲げて目立つ形でスタンドを覆うことなんてなかったと思う。赤星選手の打席で手作りの赤い☆を掲げるくらいじゃなかったかな。

商品展開がうまいと思った。応援グッズとして使えるから、複数の選手のを1試合の中で使えるから無駄にならない。選手もそれを見て気持ちを高められそうだ。そういう意味でアイドル化しているようにも感じたが、球場の一体感を出すのにも、グッズを販売するのにも上手いなと感じた。

グッズ展開といえばスマホケースとかも売られていたけど、昔はあるはずがなかった。グッズからも時代の変化を感じさせられた。

コロナ禍ならではの、、

グッズといえば藤川球児の引退記念グッズにマスクケースがあった。
禁止されてるジェット風船の代わりのジェット風船タオルといい、去年までのだれもが想像していなかったであろうグッズの存在に笑ってしまった。

コロナ禍ならではの変化は他にも見られた。
第一にチケットが一席飛ばしで販売されている。
正直な話、非常に快適だった。というよりちょうどいいスペース感だった。隣に人がいると思うと窮屈だと感じた。

その感覚を得て去年までの動画を見ると信じられないほどに人で埋まっている。そんなこと考えたこともなかったが、信じられないくらい観客が密になってギュウギュウ詰めになっている。

コロナ禍という状況でも観客を入れて試合をするためのイレギュラーな設定が快適さを生んでいた。人で溢れる球場の醍醐味もいいけれど、こういう観戦スタイルもたまにはあってほしいなと思った。

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おわりに

他にも子どものころには気にしてなかったことに色々気づいて面白かった。
めっちゃみんなお酒飲むやん!とか、スタンド裏の店多いな!とか、この角度ならあのあたりの席が見やすそう!とか。

ただ、それ以上にやっぱり、時代が変わったなあということを選手以外の要素から実感した。
古き良き時代とはよく言ったものだ。
こうやって当たり前の出来事が少しずつ過去になっていくのかなあ。

そんなことを考えた10年ぶりの甲子園だった。

・・・球児出してほしかったなあ。

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