USMLEStep1 4ヶ月受験体験記
おねがい:2022年12月14日注
筆者は,日本の医学生にもっともっと海外に出て行く勇気を持ってほしいと本気で思っています。本記事は,そのために若い医学生の一助となればという思いで執筆したものです。そこで,いくつかのお願いです。
①(情報商材自体にそこまで悪い印象は抱いていませんが、)情報商材で学生から金を取ろうという思想はとても嫌いです。少なくともusmleという界隈からは撲滅したいと思っており,そんな記事を読まなくても済むくらいのクオリティを一応目指してます。記事の質向上にご協力くださる方は大募集です。
②自分にできることなどさしてありませんが、何かご相談があればなるだけお受けします。
③是非,広めてください。また,この記事から何か使えるものがあれば使っていただいて構いませんが、その際は出典の明記をお願いします。
始めに
背景
2022年4月から3ヶ月間,スウェーデン カロリンスカ大学附属病院で実習をする機会を頂き,長年の夢だった北欧生活を送ることになった。
スウェーデンでの診療はスウェーデン語が中心だろうとは思うものの,日本語しかわからないよりははるかに良いだろうという事で,(訳あって)4ヶ月間の短期集中で医学英語の勉強がてらUSMLE Step1を受けることにした。本記事はその体験記。
全く知らない状態からでも一通りイメージが持てるように,USMLE Step1 Journeyにおいて起こりうる一連のイベントについてなるだけ詳細に記述した(つもり)。
※自分で言うのもあれだが,自分はそれなりに無駄を省くのが得意な方であると自覚している(というか,そうあるための努力をしているつもりである)。今回の受験においても,なるだけ最短経路を通るための努力をしてきた。本記事では極力その過程を文字に起こしたつもりではあるが,どうしても文字に起こせていない部分もあると思う。何が言いたいかというと,同じことをしたからと言って誰でも100%4ヶ月で合格できると保証するものではない。よくある「これで誰でも最短攻略!」みたいな記事ではなく,あくまでただの体験記。開始時点での立ち位置も人それぞれだろうし,全く以て再現性を保証する記事ではないことに十分注意してもらいたい。
USMLEについて
何となく聞いたことがあるかな〜くらいの低学年の医学生向けに,簡単にUSMLEについて情報をまとめておく。
United States Medical Licensing Examinationの略で,いわゆる米国医師国家試験。Step1,Step2 CK(Clinical Knowledge),Step2 CS(Clinical Skills),Step3にわかれている。日本で言うと,Step1はCBT,Step2 CKは国試,Step2 CSはOSCE(実技の試験)の様なイメージ。ただし,受験の順番は自由である。
米国でのいわゆる卒後臨床研修に必要なECFMG certificateを取得するためには,Step3以外の3つの試験に合格していることが必要となる。本記事はその中のStep1について。いわゆる座学の試験であるStep1,Step2 CKはいずれもScore(点数)の出る試験であったが,2022年始めからStep1に関してはScoreが廃止となり,Pass or Failという形式になった。(そのため,こんな感じで最短合格!を目指す学生は今後増えてくると考えられる。)
Step1はCBTのようなものとは言ったものの,当然出題範囲は日本のCBTとは比べものにならない程多い。(特に日本の医学生が苦労するのはMicrobiologyとPharmacology。前者では微生物の名前や各々に対して使用する薬剤,後者では基本的な薬の名前とそれぞれの働きを覚えていく必要があり,文字通り地獄。)
米国の医学生は4年制の通常大学を卒業した後で,4年間のMedical Schoolに通う。そのMedical Schoolの中で,以下の画像によるとStep1は2年目に受験するのが通常とのこと。Medical Schoolの3年目から実際に臨床実習に出るということなので,座学と臨床実習の間に位置するという点でも日本のCBTと同じポジションと言えそうだ。(日本が米国の制度を真似て導入したのがCBTなので当然と言えば当然であるが。)
日本の医学生のUSMLEの取得については,早い人でも4年生の終わり頃に,一般的には6年生の夏頃にStep1(+国試後にStep2 CK)を取得できていればひとまず上出来と言ったところの様に思う。(※出典はない,体感)
余談だが,6年時の実習班が僕と同じだった班員Aは優秀すぎるがあまり,臨床実習が始まる前の4年生の夏頃にStep1を受けようとしたらしい。しかしながら,東大の教務課が臨床実習開始前のUSMLE受験を許可していないらしく(※後述するが,USMLEの受験には所属大学の認可が必要),その結果彼はStep1受験前にすることがなくなってStep2 CKの勉強も開始してしまった。それも瞬く間に終えてしまったのか,彼は臨床実習開始後,Step1 & Step2 CKを光の速さで(それも超高得点で)取得していた。こういう話もあるので,低学年の間に受験するのはそもそも制度上無理なのかもしれない。とりあえず何度生まれ変わっても自分とは縁の無い話である。バケモノめ。
Step1の合格率は以下の通り。
(当然のことではあるが,)見ての通り米国医学生とその他では合格率に大きな差がある。さらに,ここで言う「その他」の中には日本人よりも優秀な成績を修めているであろうインドやパキスタンの医学生などが入っていることを考えると,日本人医学生の合格率はより低いと考えるのが自然である。なめてかからない方が良いのは言うまでもない。
なぜ受けるのか?
本題に入る前に,USMLE Step1を受けることにどのような意義があるのかをまとめておきたい。世間からの評価や自己満足みたいなものを除けば,大きく分けると,以下の3つとなると考えている。
1. 将来的に米国医師マッチングに参加することができる
真っ先に挙げられるのがこの点であろう。米国でいわゆるレジデント(= 研修医に近い存在)として働くためのマッチングに参加するには,USMLE STEP1・2 CK・2 CSに合格してECFMG certificateを取得するということが必須である。卒業して研修医になれば程度の差はあれど忙しくなるのが目に見えているので,ある程度時間は確保出来る医学生のうちにこれらの試験を突破しておく,という戦略は決して間違っているものだとは思わない。
無論,マッチングに関しては,ただでさえ過酷な道である上,近年マッチングに参加するDOや日本以外のIMG(International Medical Graduates)といった対抗馬が増加傾向にあることも考えると茨の道ではあるだろうが,下図によると,IMG全体でのマッチ数自体は増加傾向にあるということだ。米国留学を目指すというのであればトライしてみる意義は大いにあるだろう。別に失敗したとしても人生が詰むわけじゃない。
ただし,学生のうちから受験するという事に関して言うと,USMLEにはStep1,2 CK,2 CS(,場合によってはStep3)までを最初の合格から7年以内に取り切らなければいけないというルールがあるので,あまりに早すぎる受験というのは後悔することになりかねないので注意されたい。
以下の画像の通りこの7年ルールはECFMG certificationの話であるので,通常はStep1,Step2 CK,Step2 CSの3つについてであるはずだが,州によってはStep3も含まれる可能性もあるという話も聞く。その点については筆者も理解出来ておらず,詳しくは本記事では保証できない。
2. 医学英語のレベルが上がる
今回自分が受験した理由は主にここに当たる。オールイングリッシュでテキストを熟読し問題を解きまくっていると,嫌でも医学英語は身に付いていく。
恥ずかしながら自分は4年生の終わりまで医学英語をほぼスルーしてきたため,医学英語のレベルに関してはなかなか目に余るものがあった。ブラウザの検索履歴にgout(痛風)やemphysema(気腫)といったレベルの単語がボロボロ並んでいるのがその証拠である。習慣的にForein Affairsを読んでいたりしばしば原語で洋画を見たりするので,英語力自体は絶望的というふわけではないと思うが(TOEFLでいうと「それなりの対策をすれば3桁には乗せられる」くらい),それでもこと医学の原著論文は基本的にDeepLに丸頼みという体たらくであった。
この状況からUSMLEの勉強をしていく中で,なんだかんだたくさん問題を解いていると,最終的にUWorld(USMLE問題集)を解くスピードはおよそ2.5倍に成長した。( UWorldは問題の解答にかかった時間を自動で記録してくれる。)これを医学英語を読むスピードと同じという都合の良い考え方をすると,同じ時間を掛けることで医学の英文(論文など)が2.5倍の量読めるようになったという考え方をすることができる(かもしれない)。これだけでも,若いうちの投資としては十分payするのではないかというのが個人的な意見である。
因みに執筆現在スウェーデン留学中であるが,英語での診療現場では,会話の理解という観点からは特に不自由を感じていない。(カンファや上司へのプレゼンにおいては大いに苦戦しているが…。)なお,スウェーデン語の診療現場に当たった時は….。
3. 医学知識のレベルが上がる
これも受験の理由として十分に理解ができる。USMLE受験者が口を揃えて言うのは,「日本の医学部がいかにぬるいかを思い知った」というものである。
日本のCBTに関しては,基本的に「こうくればこう」というパターン認識を繰り返せば余程のことがない限り80%(※この数字はかなり適当です)には乗せられる使様になっているが,USMLE Step1においては,パターン認識でとれるものは40%程度(※この数字はかなり適当です)で,ただの暗記に終わらず(暗記もなかなかのボリュームを求められるが),暗記した知識を総動員して一つ一つのケースで何が起こっているのかを推察するスキルがないと,合格点とされる65%まで持っていくことはできない。早い話が,字面だけ追って丸暗記をする勉強をしているようでは絶対に合格できないということである。(裏を返せば,きちんと一つ一つの知識を有機的に繋げながら習得していけばより効率的に点数を攫っていけるということでもある。)
個人的にはこの違いというのは,そっくりそのままCBT受験後,あるいはStep1受験後の両国の医学生が後の臨床実習で発揮できている価値の違いに直結していると思っている。CBTを受験して間もなく始まった臨床実習の初日,「こんなんで実習なんて参加しても大丈夫なのか」と思いながらトボトボ病院に向かった,あの日の恐怖心というのは今でも忘れない。(CBTはパターン認識で乗り切っただけだったので,臨床実習でまともに使える様な知識はほぼほぼ持ち合わせていなかった。)日本の医学生でも体系的な勉強をして,臨床実習に主体的に参加し,診療の現場で価値を発揮している人はいるとは思うが,それほど多くないのではないかな…。そんなことないのかな…。
自分のスケジュール
ここから,実際に自分が通ってきた受験スケジュールを簡単に振り返る。
受験日は2022年4月1日。(当初の予定は3/20だったが,5年続けたアルバイトの最終勤務日前日だったこと,直後に予定していた米国留学がなくなったこと,シンプルに自信がなかったことの3点で少しだけ延期)
受験決意:2021年9月
8月に外部病院実習で出会った沖縄の医学生からUSMLEの話を聞いて興味を持っていたところ,スウェーデン留学が決定したことで受験を決意。時間がかかると聞いていた受験手続きだけこの時点で開始。情報収集:2021年10月半ば
5年時の実習班にStep1合格者(班員B)とStep1勉強中の班員(班員C)が一人ずついたため楽だった。相談の結果,PassだけをめざすならRxは不要と判断し,いきなりUWorldを半年コースで購入。(この辺りはまた後述する。)ここでしばらく安心する。勉強開始:2021年11月末
上記の班員CがUSMLE模試を受け,「普通に受かるくらいの点数がとれた」と言われる。あまりに開いている進捗の差に,ようやく焦り始めてUWorldを開始する。UWorld1周終わり:2022年2月末
本当は1日60問で2月上旬には終わらせるつもりだったが,なんだかんだで1日40問ペースとなり,ちょうど3ヶ月かかってしまった。First Aid詰め込み・UWorld復習:2022年3月上旬
UWorldの1周目で間違えた問題だけを解き直しつつ,First Aid(テキスト)をひたすら詰め込んだ。ちゃんと通読してみると知らないことだらけでこの辺りから焦り始める。UWorld Self Assessment1:2022年3月14日
UWorldに付属している模試。せっかくFirst Aidのおかげで焦り始めていたのに,Score 230辺りが出たこと(300満点で合格ラインは195程度とされている)で,「まあ受かるか〜」と安堵してしまう。これが過ちだった(後述)。First Aid詰め込み:2022年3月下旬
UWorldよりもFirst Aidを詰めた方が得点に繋がりやすいと判断し,First Aidの詰め込みに特化。とは言いながらも,もう既に受かった気でいるので,今思えばかなりお気楽で緊張感に欠けていた。先輩にそこそこ高いご飯を奢ってもらったり,帰省して家族とディナーに行ったり,と落ち着いて振り返ると受験直前期の行動とは思えない。どうかしていた。UWorld Self Assessment2:2022年3月27日
UWorldに付属している模試。2週間でどれだけ成長したかな〜,と受けてみると,まさかのScore 200切り。今思えば長らく問題演習ができていなかったことによる勘のなまりや,周囲が少しうるさいと言ったような環境の悪さなど色々とコンディションが良くなかったと思うが,そんなことを考える余裕など当然なく,本気で焦る。人生で最も勉強した4日間:2022年3月28日〜2022年3月31日
本気で焦って,朝から晩までとにかくFirst Aidを覚えまくった。欠かさずログインをしているスマホアプリ「プロ野球スピリッツ」のログインすらしなかった。4日間で70時間くらい勉強していた。やればやるほど,いかに暗記が不足していたかを思い知った。睡眠を削ったというよりは,Failの恐怖で眠ることすらできなかった。文字通り地獄の4日間。受験当日:2022年4月1日
使いあぐねていたクレジットカードのポイントを使用し,都内の高級ホテルに宿泊することで万全の体調で当日を迎えた。なぜかこの日はよく眠れた。朝7時にはホテルを出発し,直前4日に学習したことの詰め込みに絞って復習をしながら御茶ノ水駅に向けて出発。流石に直近4日分の学習内容は頭に入っていることを確認して自信とし,御茶ノ水ソラシティに向かう。
少し話が逸れるが,自分は自宅からソラシティが徒歩圏内なので何度か訪れたことがあり,特に当日問題は生じなかったが,少しだけ構造がややこしいので予め把握しておくと良い。(事前視察が必要な程ではないと思うが。)下図の通り,ソラシティはアカデミア側の入り口とオフィス側の入り口があり,プロメトリックの会場はアカデミア側の入り口から入らないとたどり着くことができない。
さてあとは受験するだけというところで,まさかの事態が起こる。
まさかまさか,こんなところで学科同期に会ってしまったのだ。とても優秀であることで有名な人で,僕などでは足下にも及ばない次元の存在である。そんな彼も,どうやら同じ日に同じ試験を受けに来ているということらしい。流石に信じられない運の悪さである。案の定彼は余裕綽々といった体で試験に臨もうとしており,せめてもの対抗として自分も余裕を醸し出す努力をしていたが,そんな己のあまりの器の小ささに試験直前に自己肯定感を喪失するという最悪の展開で本番が始まった。
試験の形式は,各ブロック60分40問×7セット。休憩時間は合計60分で配分は自由。トータルで8時間の長丁場。相当疲れるかと思っていたが,直前4日間に地獄の様に勉強していたので,それに比べれば脳みそへの負担は軽かった。試験当日についての情報は後に改めてまとめる。
ここから,これまでの経験を通して,もう一度やり直すことができるのであれば自分ならこうするという点も含めて一連の流れを掲載する。
①受験申し込み(2021年9月版)
あらゆる試験の始まりは申し込み。USMLEはこの受験申し込みが少々面倒くさく,時間がかかるので早めに取りかかっておきたい。また,システムは刻一刻と変わっていくので,常に最新情報を追いかけるように注意されたい。
基本的には,USMLE試験情報で有名なこちらのセザキングこと瀬嵜先生のサイトを参照しながら手続きを進めた。複雑なプロセスが網羅的に取り扱われており,大変秀逸な記事である。
こちらのサイトを参照しつつプロセスを簡単にまとめていく。
1 ECFMG IDの作成
米国およびカナダ以外の大学出身の受験者はECFMGを通してapplyする。ということで,まずはECFMGのオンラインページに自分のIDを作成するところから始める。
2 ECFMG certificateの申請
STEP1・2 CK・2 CSの突破後にもらえるのがECFMG certificate。このECFMG certificateが欲しいです,という申請をする。この段階で150USDが必要。
3 公証
よくわからないけど必要なプロセス。指示に従っていれば基本的には乗り越えられる。
ECFMGのマイページにForm186(上図)が入っているのでダウンロードし,ドキュメントにあるURLからNotaryCamにアクセスし,登録&必要事項をアップロードしていく。
正しく必要事項が埋められたら,Notarycamからメールが届く。
突然「今電話できるかい?」みたいなメールが来て「できるかー」となるくだりが多分発生するが,「◯◯時間後に対応できる」といったノリで返信すると向こうが時間を合わせてくれる。
その後,送られてくるリンクに指定した日時にアクセスすると,電話が開始。確かサインをするだけで終わりだった気がするので,そこまで時間はかからない。この電話も含めやたらとパスポートを使うので,公証のステップの時期はパスポートを携帯しておくと楽だと思う。
4 Step1申し込み
ECFMGのオンラインページから,Step1の受験申し込みをする。Status Verificationと呼ばれる,いわゆる身分証明(?)の様なプロセスがなかなかに登録事項が多く,それなりに面倒くさい。
その面倒くささも自らの所属大学がEMSWP(ECFMG Medical School Web Portal)に登録されているか否かで変わってくるよう。幸いにして東大はここに登録されていたので,オンラインフォームを埋めることさえできれば後は東大とECFMGの間でやりとりをしてもらえるらしい。されていなかった場合の手続きはわからない(ごめんなさい)。
因みに,いわゆる受験期間(Eligibility Period)の決定はこの段階。USMLEの試験日程の決定は2段階に分かれており,①まずECFMGとの間で3ヶ月の候補期間(Eligibility Period)を決めた後,②試験実施の代行機関であるプロメトリックとの間で候補期間(Eligibility Period)の中から試験を実施する日程を決定する。このうちの第一段階がこの時点で行われるということ。
後でも変えられないことはないが,面倒くさいのでよくよく考えて期間を決定すること。特に地方の方は御茶ノ水(または大阪)まで遠征することになると思うので,まとまった休みが取れる可能性の少しでも高い期間を選択する必要があるだろう。
また,当たり前のことであるが,例えば3月に受験を考えているのであれば,Eligibility periodは基本的には1月〜3月にするよりは3月〜5月にした方が良いとも思う。試験日程を先延ばしにすることこそあっても,前倒しにすることは基本的にはないんじゃないか。
また,受験料の支払いもこの段階で発生する。1155.00 USDということでこの時点でも十分高かったが,当時はまだ112.3円/USD。執筆時点(2022年4月)で申し込んだ場合…😨
申し込みを終えると,以下の様なメールが届く。10日程度待ってくれということで,気長に待つことにした。が………。
4.5 受験申し込み,できず
ここで事件が発生する。ちょうど10日後,ECFMGからメールが届いたのでワクワクしながら開いて見ると…。
申し込みにエラーがあり,受験登録に失敗してしまったらしい。どういうこと!?となって詳しく調べてみると…。
要は,登録フォームで登録する内容の中に「取得予定の学位」という欄があるのだが,そこに自分が登録したもの(確か"M.D.")が間違いだったらしい。どういうことかと言うと,「USMLEについて」でも少し触れたとおり,米国の医学生は通常の大学で学位を取ってから医学の専門学校でMedical Degreeを取るのに対し,日本ではいきなり医学部に入るため,日本の医学部で取得するものは"Igaku (Bachelor of Medicine)"という別物扱いになるということらしい。よくよく読んでみるとちゃんと書いてあった。このため,またゼロから登録フォームを書き直す羽目になり,本当に最悪だった。筆者以外にも同様のミスを犯した医学生は観測されているので、多分それなりに気をつけてほうが良い。
5 受験日の決定
今度こそ,Scheduling Permitが届く。
ここまで来れば,後はプロメトリックのページから,「STEP1」という試験を選択して受験日を決定するだけ。下のようなメールが届いたら,これで受験手続きは一段落。
②勉強の方針
ようやく本題という感じだが,受験申し込みを完了させて,ではいざどのような勉強をしていくのか?という章。
米国の医学生の平均的なStep1対策
※とある米国病院のオンラインセミナーに参加した際に聞いた情報。あくまでそのレベルであり,どこまで普遍的なものであるかは保証できない。
試験前6〜8週間
1日最低10時間は勉強
週に1日はoff day を作る
とにかく問題集をベースに学習をすること。2000問は必ず解くこと。
試験本番2,3日前には勉強を終わらせるスケジュールで
これを踏まえると,どれだけ低く見積もったとしても米国の医学生でも
10h/day*6day/week*6week=360h
は勉強をしているという計算になる。
しかしながら,逆に言うとそんなものである。もちろん日本の医学生がたったこれだけしか勉強をしなければほぼ確実にFailとなるだろうが,そうは言っても,①医学英語という観点で米国医学生に追いつく労力,②医学知識という観点で米国医学生に追いつく労力,③米国医学生と同じ分の労力と,超絶適当な計算で米国医学生の3倍の時間を要すると考えたとしても,概算1000時間ほどの目的意識を持った勉強時間を確保することができれば,十分Passだけであれば目指すことは可能ではないかと思う。
(自分はアルバイトや研究にかまけて少し気が緩んでしまっていた時期もあり,totalで750時間ほどしか確保出来なかった。こうしたら良かったという反省もいくつかあるし,正直10回受けたら3回くらいは落ちていたんじゃないかと思う。)
使うもの
First Aid(テキスト)
First Aidにはテキストと問題集があるが,問題集は使わない。テキストの方だけ。できればGoodnotes版で準備したい。(検索したらすぐに出てくるし,いかようにでもできると思うので,この方法は各自で調べてほしい。)UWorld
オンライン問題集。だいたい3600問ある。米国医学生の平均で正答率65%程度。はじめは40%程度しかとれないが,そんなものだと信じて進むしかない。
使わないもの
その他の問題集
Step1で有名な問題集は簡単な順番にFirst Aid,Rx,UWorld,AMBOSSといったところがある。一般的にはUWorldが1番本番の難易度に近く,かと言っていきなりやるには難しすぎるので,Rx をこなした後にUWorldという流れが推奨されているが,今回はPassだけを目指すということでRxもいらないと判断。結局はUWorldが出来る様になれば良いわけなので,最初の手も足も出ない辛い時期さえ乗り越えればUWorld単体で十分やっていける。我ながらこの判断は大正解だったと思っている。Anki
細かい知識を詰め込むのによく使われる暗記用アプリ。自分も細かい知識まで完璧に覚えるくらい本気で取り組みたい試験ではよく使用している優れものである。USMLEとAnkiは珈琲とチーズケーキくらいよく知られた相性の良いペアであり,また他の人が作ってくれたデッキが山ほど転がっているため自分でセットアップする必要がないという点でもコスパは良いのだが,今回に関してはここまでやっているとほぼ確実に最優先の学習が終わらないと判断し,一切使わなかった。何事においても,捨てる勇気も重要なものである。
③学習の進め方(あくまで一例)
どれくらい勉強したか?
開始時点での学力:CBTのとき(ちょうど一年前)にMedu4を全科目一通り受けた。当時はある程度覚えたが、勉強開始時点ではほぼ忘れていた。ただ,このときに大枠の考え方を身につけていたことは大きいように思う。
とりあえず1000時間の勉強時間を目標にはしていたので,1000時間/120日≒8時間/日を一つの目安にはしていた。現実はそう甘くはなかったが。
ただし,結果的に750時間程度の勉強時間しか確保出来なかったものの,電車内,バイト前の隙間時間や
実習中のしばしば訪れる退屈な時間などに暗記を回す努力はしていたつもりであり,そういったものを足し合わせるともう少し増えると思う。平日は実習があったが,コロナの余韻も残っておりオンラインまたは半日で済む実習がほとんどであったため,バイトがない日,研究室に行かなかった日は大体13時から23時まではデフォルトで勉強時間を確保していた。
週末に関しては,丸1日空けた日は朝8時半から23時くらいまではスタバやら図書館やらワーキングスペースやらに閉じこもっていた。(うち1〜2時間くらいはご飯あるいはyoutubeを見ていたので勉強時間は12時間くらいかな。)ただし,全週末空けていたかというと全くそんなことはなく,メンタルヘルスを保てるくらいに食事や散歩の予定は月1〜2くらいで入れていた。
Subjectごとの特徴
UWorld の分類によると,Step1のSubjectは以下の13種類。
①Anatomy(解剖学)
②Behavioral science(行動科学,医療倫理)
③Biochemistry(生化学)
④Biostatistics(生物統計)
⑤Embryology(発生学)
⑥Genetics(遺伝学)
⑦Histology(組織学)
⑧Immunology(免疫学)
⑨Microbiology(微生物学)
⑩Pathology(病理学)
⑪Pathophysiology(病態生理学)
⑫Pharmacology(薬理学)
⑬Physiology(生理学)
この中でも特に重点的に学習する必要があるとされているのが,以下に示すいわゆる4P。
⑨Pathogens(Microbiology,微生物学)
⑩Pathology(病理学)
⑫Pharmacology(薬理学)
⑬Physiology(生理学)
(+⑪Pathophysiology, 病態生理学)
このうち,⑨Microbiology(微生物学)と⑩Pharmacology(薬理学)は正直日本の医学部ではほぼ扱わないので,ゼロからFirst Aidを全て覚えきるぐらいの学習が必要。
⑪〜⑬Pathology(病理学)とPhysiology(生理学)(とPathophysiology)は,日本のCBTで扱う内容と被る所も多いので,比較的とっつきやすくはあると思う。(注:ややこしくなるので詳細は省くが、pathologyの中にもpsychiatryのようなほぼ日本ではやらない面倒な単元は存在する。)First Aidを丸暗記というよりは問題を解きながら慣れていくことが重要な分野。全部併せると1500問以上あるので,焦らず1ヶ月半程度かけて解き進めていく。
その他の分野に関しては以下の通り。
①Anatomy(解剖学),⑤Embryology(発生学),⑦Histology(組織学)
First Aidがそこまで充実していない。UWorldをただ解くだけではなく,解説まで丁寧に習得する。
③Biochemistry(生化学),⑧Immunology(免疫学),⑥Genetics(遺伝学)
MicrobiologyやPharmacologyのように,First Aidを丸暗記する。その一助としてUWorldを使えばOK。ただし,出題頻度を踏まえると何もかも覚えるのは割に合わないので,イラストや表としてまとめられている部分を集中的に詰め込んで行く,という学習が効率的であると思う。
④Biostatistics(生物統計)
簡単。最悪手つかずでも何とかなる(無論UWorldを一通り解いておいた方が安心ではある)ので,優先順位はかなり低い。UWorldはほぼ全て計算問題だが,本番は知識だけで解けるものも出てくる(accuracy と precision,modeとmedian とaverage等)ので,試験直前にFirst Aidを一通り攫っておく時間は作りたい。
②Behavioral science(行動科学)
医師としてのベストプラクティスみたいなやつ。文化の違いか,普通に米国医学生に比べて勉強が足りていないだけなのか,筆者は全く合わせられなかった。というか合う気がしなかった。まわりの反応を見ていても,おそらく日本人医学生ほぼ合わせられない分野だと思う。正直自分は半分諦めていた。一応First Aidに数ページ分case study みたいなものが載っているので,それだけはしっかり答えられるようにしておけば最低限はさらえるのではないだろうか。UWorldは250問くらいあるが,やるにしても本番直前に軽く1周しておくくらいに止めておくのが賢明だと思う。
UWorldの進め方
始めに大事なのが,取り組んだ全ての問題に対して
A. 間違えた所,不安の残るところのFirst Aid通読
B. 1問1問の要点を後でさらえるように,間違えたポイント(最低限Educational Objectiveは押さえる,逆に解説を隅から隅まで押さえる必要はないと思う,終わらないし)のFirst Aidへの書き込み
は欠かさないように。目的はUWorldをパターン認識していくことではなく, First Aidを習得することである。UWorldを進めていく傍らで,いかにFirst Aidの暗記を回すかの方が重要。
UWorldには「1セット全て終わらせてから解説を表示するモード」と「1問1問解説が表示されるモード」があるが,筆者は1周目は後者で進め,1問1問解く度にFirst Aidを読んでいた。
というのも初心者は知らないことが多すぎるので,最後にまとめて40問復習すると絶対に1問1問の復習が適当になると思ったからであったが,①40問を時間を測って解いた方が集中して解けるので効率的だった②別に解説も隅から隅までFirst Aidを参照する必要はない(と思う)という点で,前者の方が良かった気もする。
とはいえそちら側で進めていた世界線の自分も「後者の方が良かった」と言っていそうなのでこの辺りはよくわからない。
これらを踏まえ,1日に40問ずつ(無論初めはもっと遅くなるであろうが)進めていく計算で話を進めると,
Part1
⑩Pathology(病理学),⑪Pathophysiology(病態生理学),⑬Physiology(生理学)の約1600問を約40日で1周。ある程度ペースを掴めれば比較的すぐにスラスラ進むようになるはず。
間違えたものは自動で「Incorrect」に分類されるので,むやみやたらに旗マークはつけない方が良い。むしろ,正解したけど不安なものにこそ旗マークをつけるべし。
Part2
⑨Microbiology(微生物学),⑫Pharmacology(薬理学)の約900問を約3週間で1周。こちらは通読だけでなくFirst Aidの該当部分を丸暗記する勢いで叩きこむ。覚えるまではアリのような進捗だが,ある程度覚え始めると逆に他分野よりもスイスイ進むようになる。
この間に,休憩がてらちょくちょくPart1の問題で間違えたものだけを集めたセットを挟んでおくとよいと思う。無論,比較的最近の記憶が残っている2周目で合わせたからと言って,試験本番の時期に合わせられる保証は全くない(というかおそらく忘れている)ので,この段階で正解となったものは全て旗マークをつけておきたい。
ここまでを一通り終えられれば一安心。
Part3
①Anatomy(解剖学),⑤Embryology(発生学),⑦Histology(組織学)
の約400問を10日で1周。進め方はPart1に近いが,より丁寧に解説を読む。
Part4
③Biochemistry(生化学),⑧Immunology(免疫学),⑥Genetics(遺伝学)の約400問を10日で1周。進め方はPart2とほぼ同じだが,Part2よりはラフで良い。
ここまでを終えられたら,あとは
Part5(進捗次第では省いても良い)
②Behavioral science(行動科学,医療倫理)④Biostatistics(生物統計)のUWorld約350問を気楽に解いていくと良い。First Aidの該当分野がかなり薄いので他分野に比べればスムーズに進むことだろう。
模試を受けよう
1日40問のペースを保ち続けることができれば,ここまで3ヶ月でUWorldを1周,さらに逐一該当分野のFirst Aidを参照しているはずなので,1周通読以上の学習は終えているはずである。この段階(もう少し早い時期の方が良いかも知れないが)で,一度UWorld Step1 Self Assessment1を解いてみると良いのではないだろうか。(UWorld問題集の購入時に無料で付属,購入プランにもよるが)
プロメトリックでは試験本番1ヶ月前までであれば無料で日程変更が可能なので,1ヶ月と少し前くらいに受けて,ある程度受かる見込みがつくのであればそのまま特攻。なかなか絶望的であれば少し延期,という判断基準にすると良い。
ただし,Self Assessment1は予測Scoreがかなり(20点くらい)高く出るので,あまり慢心しないことが大事。自分はここで230程度(195辺りが合格とされる)のScoreが出た(のとそもそも受験時点で1ヶ月前を切っていた)のでそのまま特攻を決意したが,欲を言えば1ヶ月前であったとしてもこの模試では235くらいないと安心できるとは言えないと思う。UWorldを1周したのにScoreが満足に取れていない場合は,基本的にFirst Aidの暗記が足りていないはずなのでまずはFirst Aidで優先順位の高いところを徹底的に頭にたたき込んでいく。
こうして,必要なら適宜試験日程の延長も挟みつつ,1ヶ月前には満足の行く状態に到達出来ると安心。あとは,繰り返しになるがとにかくFirst Aidの詰め込みと,UWorldの解けなかった問題の復習。これに尽きる。
(必要に応じて)試験日程の変更
仮に模試での成績が振るわなかった場合,日程を延期する手間を惜しんではいけない。USMLEでのFailは何としても避けた方が良い。少しでも不安が残るなら,ためらわず延期しよう。
上記の通り,31日前までであれば無料で変更できる。ただし,あくまで変更先の日程はEligibility Period以内。Eligibility Period自体を変更する場合の手続きはECFMGとの間で行う。因みに,1ヶ月前を過ぎてからのプロメトリックの予約変更料は,上には50USDと書いてあるが,実際は100 USDに値上げされているので注意されたい。遠慮なく言うが,事実と異なる値段をHPに記載しているのは相当悪質だと思う。
ECFMGを通したEligibility Periodの延期は,以下のサイトを参照されたい。「変更後のEligibility Period」の初月の月末が申し込み期限(のように見える)。とりあえずURLは貼っておくので,自分で読んでみて欲しい。
直前1ヶ月,最後の仕上げ
ここまで来ればあとは最後の総仕上げ。改めて確認しておくと,
First Aidの中で,覚えられていない「覚えるべきもの」を詰め込む
筆者の実習班メンバー A & Bがしきりに推していた方法。筆者もどちらかというとこちら推し。
「覚えるべきもの」の定義がなかなか難しい。が,何というか「First Aidでいかにもこれは覚えてね!といったまとめられ方をしているもの」である。(Geneticsの各chromosomeの異常によって起こる疾患とか,Pathologyのcancer-associated diseasesとか)
知ってるだけで点が取れる一方で絶対にまだ取りこぼしがあるはずなので,こういうのは本番までに真っ先に潰しておきたい。UWorld間違えた問題復習
筆者の実習班メンバーCがしきりに推していた方法。班員CはUWorldを復習しまくった後,やることがなくなったからか,なんと一度UWorldをリセットしてまた0からリスタートする,という凶行に出ていた。どれだけUWorldが好きなんだ。
リスタートは流石になくても良いと思うが,一通りできるようになるまで解き直すだけでも,終わりはなかなか見えない。というか多分終わらない。優先順位をつけて,この時期であれば「やったものに関しては試験本番で出ても答えられる」というクオリティで1問1問こなすのが大切である。冒頭でも述べた通り,米国の医学生が最低限これだけは解け!と言われている問題数は言うても2000問である。別にUWorldが隅から隅までできるようになっていなくても大丈夫。それくらいの気持ちで気楽に行こう。
模試を受けよう2
おそらく,まだ UWorld Self Assessment2が残っているはずなので,2週間前くらいに解いてみると良い。筆者はこの試験を5日前に受けて撃沈したわけであるが,2週間前であれば多少悪くてもそこまで悪影響を本番に持ち越さないであろう。
UWSA2に関しては人によって言うことがまちまちで,いかんとも言い難いが,UWSA1よりは本番に近いScoreが出てくるはずである。twitterとかで米国の医学生のツイートを見ていると,Best Predictorとして UWSA2を挙げている人もちらほらいた。まあ,この辺りはよくわからない。
UWorld模試の良いところは,復習ができることなので,しっかり復習は忘れないようにしておこう。
※この節はUWSA2で点数が悪かった人向け
UWSA2で点数が悪くてありえないくらい落ち込んだ筆者がとにかくポジティブな情報を集めようとかき集めてきたところによると,「UWSA2は最近(※2022年3月中旬時点)内容を大幅に改訂してとんでもなく難しくなったため,もはやあの試験のScoreはアテにならない」というクチコミを発見することができた。信憑性やら証拠やらはかけらもないが,もしUWSA2で良いスコアが出なかったという人がいたら心の支えにしてほしい。
模試を受けよう3
筆者は結局受けなかったが,NBMEというUSMLEの運営団体が出している模試があり,Score Predictorとしてはこちらが一番質が高いというのが有名。
復習がしづらいのが難点ではある(らしい)が,現時点でどれくらいのScoreがとれるか知りたいという場合は(というか普通知りたい),受けてみると良い。気になるお値段は60 USD。タカイ…。
④試験当日
ここまで来たら,あとは自信を持って本番に臨むのみ。ここからはFAQに短答形式で。
必須アイテムは?
パスポート
Scheduling Permitの印刷
(買いに行く時間がもったいないので)簡単に食べられる昼ごはん
の3つ。上2つはないと詰む。ないと詰む。
当日のスケジュールは?
8時くらいには会場に到着
→8時半くらいにチェックイン&試験の説明
→9時くらいに試験開始
→40問60分×7セットの受験
→17時くらいにおしまい
という形。
本番の形式は?
旗マーク機能,黄色マーカー,基準値参照ボタンの場所など,基本的にUWorldと変わらないように思った。少なくともUWorld純正の筆者は違和感なく試験に臨めた。
問題の所感は?
UWorldと確かに似ているが,知識単発で解けるものの割合がUWorldよりは多めなので,それのおかげでUWorldよりは正答率が上がるのではないかな,という感じ。
筆者は大体各ブロック不安の残る問題が40問中15問程度あり,(65%が合格ラインと言われる試験なので)Scoreが出るまではそれなりに不安だった。
CBTの様な「◯ブロックは□□の単元の問題」といった単元のまとまりはないように感じた。
試験会場に持ち込めるものは?
TOEFLみたいな感じでメモ用のボードとマーカーが与えられる。足りなくなったら変えてもらえるので,余程たくさんメモを取る人でなければ不自由はないと思う。(ていうかそもそも疫学の問題くらいしかボードなんか使わない)
耳栓は一応持っていってスタッフの方に見せれば持ち込めるが,ちゃんとヘッドフォン(聴診問題用)が用意されているのでそれで事足りたと思う。
あとはパスポート持参必須。
休憩時間は?
6度のインターバルに合計60分まで休みを挟むことが可能であり,その配分は自由。元気なうちに3つくらいノンストップで受けてしまうのが良いのではないかというのが個人的な意見。異論は認める。
筆者の実習班仲間たちは皆試験時間を60分も使わずに40分くらいで終わらせ,余った20分を(試験時間中ながら)脳みその休憩時間にしていたらしい。バケモノどもめ。
昼ご飯は?
6度の休みの間に自由にとれる。いつ食べても良い。ただし,昼ご飯に関しては前述の通り買いに行く時間がもったいないので予め買っておくのが良いのと,あまり広々としたスペースがないので簡単に食べられるパンとかにしておくのがよいという2点は注意しておきたい。
最後に
これでUSMLE体験記は終わり。
今の自分が持っている情報を可能な限り詰め込んだつもりである。本番が終わったら,もうできることは何もないので後は果報を寝て待つのみだ。大体12日後(10営業日後かな?)にScore Report availableのメールが来て,ECFMGのマイページに飛ぶとScore Reportが見られるようになっている。開く瞬間は過呼吸になるが,その緊張感まで含めてUSMLE受験の醍醐味である。最後まで楽しんでほしい。
それでは,読者の皆さんのUSMLE journey が素敵な結果で終わることを祈っている。ここまで読んで頂いてどうもありがとうございました。また,本記事の執筆においてお世話になった方々,特に重要な情報を多く提供してくださった野口医学研究所様,査読してくださった皆様,そもそも受験直前期に諸々負担をかけて皆様にもこの場で感謝申し上げます。
おまけ:暗記における工夫
学習塾で5年もアルバイトをしていたのでよくわかるが,勉強の効率というのは確かに存在する。よく「暗記ってどのようにしているのか?」と聞かれるので,(別に自分が暗記のスペシャリストだなどとは欠片も思っていないが,)暗記をする際に意識していることをいくつか載せておく。
エビングハウスの忘却曲線
暗記の話をする際によく出されるのが,やはりエビングハウスの忘却曲線だろう。気になる人は詳しくは調べて欲しいが,要は「復習しないと忘れるよ,それも皆が思っているより頻繁にしないと」というものである。これを利用したのが先述の暗記アプリ「Anki」なわけであるが,とにかく「昨日やったことを復習する時間」や「先週やったことを復習する時間」というのを思っている以上にたくさん設けておかないと,やったそばから忘れていくということだ。
少なくとも,「朝に昨日やったことを復習する」だとか,「電車に乗っている間その日やってきたことを反芻する」だとか,「定期的に2週間分くらいの学習内容を振り返る」だとかいうのは積極的に取り入れたい。そこまで人間賢くない。どうせやるなら手際よくやる。
暗記効率を上げる3つの工夫
前節で復習の重要性を説いたわけだが,何度復習しても全くものごとを覚えられないという人も多い。覚えられないなら量を増やすかやり方を変えるかだ。(大抵の場合そもそもの覚えようという努力量が足りていないことが多いと個人的には思うが,)やり方を変えるのであればやはり「Input から Outputに」というやつが重要な視点だろう。試験本番で求められるのは脳みその知識を使って考えること,いわゆる「アウトプット」であり,テキストを読むこと,いわゆる「インプット」をどれだけ繰り返してもそもそもやっていることが違うのだからできるようになるわけがない。
というわけで,どのような形で「アウトプット」の練習をするかだが,大きく分けて3つを使い分けているイメージだ。もっと良い方法もたくさんあるだろうが筆者は知らない。
問題を解く
一番しっくりくるやつ。UWorldのような問題を解くのが一番手軽なアウトプット。pathologyやphysiologyなどはこれをやりまくるのが最短経路じゃないかな。テキストの再現
一番しんどいやつ。とはいえ,テキストを再現できれば向かうところ敵なしだ。生化学のような,図でわかりやすく説明されている単元などは自分で図を書いて再現できるようにする練習を繰り返すのが一番手っ取り早いだろう。問題を作る
タイトルだけ聞くとめちゃしんどそうだが,そんな大変なことではない。というか,いわゆる「緑マーカー+赤シート」である。世間的には色々言われている緑マーカー+赤シートだが,筆者は大好きでよく使う。
とはいうものの,「おいおいFirst AidをGoodnotesに入れろとか言ってただろ,iPadじゃ緑マーカーとか引けねえだろ」という声も届きそうなものだが,iPadで緑マーカー+赤シートをすることは可能なのだ。何事も自分で調べてみるのが大事である。詳しくは以下の記事を参照。
iPadのカラーフィルタ機能で赤シートを再現し,Goodnotesの緑蛍光ペンで緑マーカーを再現することでちゃんと文字を消すことができるのである。超手軽にできるので,興味があれば試してみて欲しい。USMLE以外でも筆者の生活では大活躍をしている。
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