声楽タイムズ第6回「あんパンと音楽」

日本声楽家協会事務局の木村雄太です。

皆さま、あんパンはお好きでしょうか。
元々、西洋より伝わってきたパンに餡子を組み合わせることで
ポピュラリティを得た日本独自のパン、自分も好きな食べ物です。

さて、上記のあんパンのように
異なる国・地域の文化が組み合わされることで
新しい価値を持つものが生まれることがあります。
日本の文化も西洋の芸術に多大な影響を与えています。
ジャポニズムという言葉にみられるように
過去、万国博覧会をきっかけとして、日本の文化は
フランスを中心に西洋の画家や作家、音楽家を刺激し、
それがきっかけで素晴らしい作品の数々が生まれました。
モネやゴッホに影響を与えた葛飾北斎の浮世絵は
ドビュッシーの管弦楽曲「海」のスコアの表紙になっています。

オペラの作品でジャポニズムといえば真っ先に挙がるのが、
長崎を舞台としたプッチーニ作曲《蝶々夫人》です。
途中、さくらさくらや君が代の旋律が
取り入れられている部分もあります。
蝶々夫人が日本を舞台とするオペラでは圧倒的に有名ですが、
他にも日本モチーフのオペラはいくつかあります。
例えばマスカーニ作曲のオペラ《イリス》。
大阪や京都という名前の登場人物が出てきます。
また、蝶々夫人の話の元になった「お菊夫人」も
オペラになっております。
フランス語のオペレッタを沢山書いた作曲家であるメサジェが
曲を付けており、普段の軽やかな作風と一味違う
どこか蝶々夫人に通じる曲想です。

もちろん《夕鶴》をはじめ、日本語のオペラも沢山あります。
これも異なる文化の幸せな融合だなと思います。
西洋の芸術であるオペラを学び、携わる者として、
自国の文化を大切にすることで、異なる文化を尊重でき、
そこからまた新しい文化が生み出されるのかなと
餡子を優しく包み込んだパンである「あんパン」を見て感じました。

次回の「木村雄太の声楽タイムズ」もどうぞお楽しみに!

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