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隣で飲んでる唎酒師

あなたは日本酒は好きですか?
タイトルに呼ばれていらした方は、お好きなのでしょうね。
それとも、興味をお持ちの方でしょうか。

私は居酒屋で日本酒をほぼ毎日飲んでいます。
米と水と米麴などの菌が原材料のシンプルなお酒なのに
作った場所で全く味が違う奥深さ。
これが判ってしまうと、あれこれと飲んでみたくなるはず。
自己紹介記事にも書きましたが、
日本酒が好きすぎて、唎酒師の資格を取得したりしています。

今回は唎酒師だとばれた時の私の思い出の一つをお話します。

ある日、
行きつけの居酒屋でいつも通り飲んでいると
隣に40~50代のご夫婦が着席されました。

“何にしようかしら、これ美味しそうね”
奥さんがメニューを見て楽しそうにする間、
旦那さんはお酒のメニューを真剣に見ていました。
(あら、いきなり日本酒。二軒目かしら。)
そっと隣で見ていると、店長が注文を取りに来ました。
“ああ、まだお酒が決まらないんだ”と旦那さん。
そこで店長が何故か自慢げに「隣のお客さん、唎酒師ですよ」と話す。
瞬時に心の中で叫ぶ私。
“え!そうなの!”ご夫婦がぐるんと首をこちらに回す。
風景から突然、登場人物になる瞬間です。

“オススメありますか?”

皆さんも隣に唎酒師が座っていることがあったら、
是非覚えておいて欲しいことがあります。

唎酒師に“オススメありますか?”は難題です。
何故に難題なのかは下記にて、ぬるっと徐々にご説明します。

突然隣のモブから唎酒師に昇格した私が最初にする事は、
旦那さんがお酒を迷う間、奥さんが注文していた料理を思い出す事。
“だし巻き卵と、カツオのたたき” バッチリ私にも聞こえていました。
だし巻き卵は、出汁の香りと卵の甘味を楽しむ料理。※イメージ
カツオのたたきは、燻されたカツオの風味と食感を楽しむ料理。※イメージ

唎酒師がすべきなのは、
卵の甘味を殺さず、カツオの燻製の香りを引き立て、
且つ料理に負けない個性が伝えられる日本酒を選択することなのです。
ね、大変なんですよ。特にぼーっと飲んでる時に聞かれるのはっ

次にお店のメニューを頭で浮かべ、その中から最適な日本酒を探します。
他の唎酒師の方はわかりませんが、
私はお店にあるお酒の中からオススメを選択します。
店長もその意図で私が唎酒師であることをばらしたのでしょうから…

この時私が選んだお酒は
澤屋まつもと(京都府)
を、ぬる燗で!

出汁の香りとぬる燗から上がる香りが程よく混ざるのでは?(※想像)
カツオを少し噛んで、お酒を飲めば、
「まつもと」の持つコクとマッチするのでは?(※想像)
と考えてのことです。

ご夫婦は日本酒をお二人で愉しまれておりました。
そして徐々にモブに戻…れはしないのです。
そこから、日本酒の作り方や、どこのお酒はどうだとか
大抵、質問の豪雨がやってきます。
お客様忘れないでください、私も今の今まで飲んでたんです
全然思い出せない。明日にしてほしい

それからの私は
カウンターで隣り合った人の職業や趣味を
想像して酒を呑むという趣味が1つ増えました。

4年ほど前のことです。

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