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何かが変わるトキ


なかなか本気を出しきれない子がいます。

本当の彼は、センスがあって、キレイな字を書けて、発想が良い。
しかし、挑戦する気持ちがありません。
恥をかくことに大きな抵抗があります。
そして、思いやる気持ちに欠けたところがあります。

振り返ると、彼にしつこくしつこく声を掛けてきました。
掛けても掛けても変わらない。
聞いても聞いても話さない。
その心が開くトキは、なかなかやってきませんでした。

表情が穏やかになってきた。
周りとのトラブルが減ってきた。
そんな事が言われるようになっても、学校生活で出し切る力は10%といったところ…

無気力は、一番の難しさだと、感じる毎日です。

語って、叱って、たくさん泣かしてきました。

何が影響したかはわかりません。
今週、何かが少し変わったように見えました。
本当に”少し”。

・国語のテストの作文課題を書き切っていたこと。
・背中を叩いて気合いを入れた算数で時間いっぱいやり切っていたこと。
・総合的な学習の時間で、時間いっぱい取り組んでいたこと(字は汚い)。
・紙を丸めて作ったボールがなくなった時に、「先生やろ」「その顔は怪しいなー」「やってない証拠がないあなたは容疑者でーす」と可愛くしつこく周りをうろつき続けていたこと。
・授業中のつぶやき(いや、おかしい!だって!)がよかったこと。
・授業が終わってから、「わかったで!みんなこう言ったけどこうやろ!」と説明しにきたこと。
・加配の先生がこぼした水が足にかかったけど、文句を言わなかったこと(40分静かに靴下を触り続けていた)。
・人権の授業で「障害のある人にかわいそうと言ってはいけない。その理由は、かわいそうと思って関わってしまうといいところが見えなくなってしまうからです」と書いたこと。

月曜日、ブスッとした表情で登校しました。その1日は、人と距離を置いて過ごしていました。
火曜日、大縄が流行り始め、跳べないのか跳びたくないのか、近くにいるだけ。
水曜日、大縄の列に並んで、自分の順番になると、跳びもせず通り抜けもせず、大縄の横を走るという意味不明な行動を取る。体操服に着替えるも、跳び箱を跳ばずにウロウロする。7人程いた跳べなかった子が全員跳べるようになり、跳び箱めっちゃ面白い!という雰囲気に取り残されたか…

人間関係の裏にある彼の思いは、どういったものだろう?
彼の場合、普通の考えを当てはめると、少しズレてしまいます。
少し違った見方を要する難しい場面。
ただよくわからないので、決めつけず、本人に聞くことにする。

「先週、めちゃくちゃよかったけど、イイコトあったか、困ってるやろ?」

こんな感じ。私と彼の関係は、こういう距離感がいいと思います。
きっと返ってくるのは、

「フゥン」
「別に」
「そーなん?」

大切なことは”良い”が伝わること。
もっと具体的に褒めた方が良いように思うかもしれない。
それは、この距離感では通用しない。

天邪鬼の彼は、褒められたことをやめていくと思います。
「先生は、自分の何かを良いって感じたんだな。何なんやろ?」
これ位がいいと思う。

金曜日、テストの最後についているアンケートに答える。
◎思いやりのある人になりたいと思いますか?

「そんなこと思うわけないやん!そうじゃない?」と、本当に思っている表情で友達に共感を求める。

友達は「嘘ぉ!」と言った表情で、驚いて何も答えられない様子。
ここが、彼の一番の課題だと思っています。
本当に、そう思っている。
目の前にある課題は大きい。
残された時間は短い。
しかし、信じて関わり続けるしかない。
彼を信じて、自分を信じて。

ちなみに…
月曜日の様子は、先週の金曜日にきつく叱りつけたからだと思います。
「人と関わらんかったらいいんやろ!」という極端なアイデアを実行したのかもしれない(母は「そういうことじゃないのに、ホンマにアホなやつやわ!」と)。何が月曜日の彼を作ったかはわかりません。
でも、月曜日に感じたことが何かを変えたかもしれません。
これまでの関わりが何かを変えたかもしれません。
これが、教育の難しいところであり、面白いところでもあります。
彼に影響するものは、無数に考えられるため、原因を一つに絞れません。
「エビデンスがはっきりしない」「法則化できない」という問題です。
でも、

想う気持ちは伝わる

これは間違いない。イラッとさせるような子どもほど、想う事が大切だと思い、書き認めるに至りました。

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