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【表現評論】メモリーズオフ#5 とぎれたフィルム コアレビューその15 麻尋ルート リバースカット2(終)【全作再プレイシリーズ】

●メモオフシリーズ、その他作品、様々なネタバレが含まれます。

⚫︎前回の記事

⚫︎雄介の修司評

「修司は、すごく優しいヤツなんだ」
「でもあいつの場合、優しすぎて自分にすら自信を持とうとしない。だからすぐあきらめてしまう」
「自分が、自分のことを認めてあげるのは、とても勇気がいることだけど、あいつにはその一歩を踏み出してほしいよ」
「せっかく才能があるのに、もったいないから」

メモリーズオフ#5 とぎれたフィルム

優しいとかいう、特に褒めることのない場合に発揮されるワード。せっかく才能があるのにと言っていますが、何の才能かは分からない。演出が得意なんだっけ。香月評に比べると何か他人行儀じゃないですか。お前がちょっとはなんとかしたれよ。麻尋とか香月にはストーキングレベルで付き纏ってたらしいのに。

修司にはもう部室に来んじゃねーよと言われます。映画なんてどうでもいいんだよと。映画よりあすかちゃんが重要なんだよと。ほんまそれ。そこまで言ってないけど。

⚫︎キスシーンを目撃

表ルートではあすかと春人がキスしていたこと麻尋はなぜか知ってたわけですが、リバースカットで麻尋は定期的に日名家の手前まで通っていたことがわかります。雄介から預かった? イルカのペンダントをあすかに渡すためです。ただ毎回ピンポンを押そうとしては引き返すということを繰り返しているとか。人殺し呼ばわりされてるからね。渡そうにも渡せないということがずっと続いていたと。で、日課のように日名家に向かっている途中に、二人のキスシーンを目撃したというのが、ことを知っていた理由です。これで二人が付き合ってると勘違いしたんだな。

⚫︎あすかと話そうとする麻尋

麻尋はあすかに私は映画を作りたいだけと話しますが、映画なんでどうでもいいんだよ! と言われます。映画なんて観るのも作るのも嫌いなんだよと。ほんまそれ。映画より人間の方が重要なんですわ。

「わたしの居場所は、あのサークルとハル先輩だけなのにっ。それを奪うなんて、ひどいよっ!」

「お願いだから、ハル先輩を取らないでよぉっ!」

メモリーズオフ#5 とぎれたフィルム

今のところ、恩人の妹を犠牲にしてまで映画にこだわる理由は全く不明です。そんなに重要なん? 修司君の言うとおり、ただの映画ですよ? そんなに苦しんでまでアマチュア映画撮る必要ある?

⚫︎香月の配慮

木瀬師匠に映画作りを手伝うように計らったのは香月のだったことがわかります。香月は修司を説得するから映画作りには付き合えないと。その代わり木瀬さんを使えという話。師匠は雄介と無関係の人間だからね。麻尋に対して悪感情はないので、フラットに付き合える。ということで、この二人は速攻で仲良くなっています。

今気づいたけど木瀬さんって立ち絵が新しくなってるんですね。そばかすがなくなっているし、だいぶ吊り目になってる。本当に今更。

闇の姿
光の姿

シリーズに毎回出てるのに、前作と立ち絵が変わってない男がいるってマジ? どうして差がついたのか。慢心、環境の違い。

それから
#5 。色はちょっと塗り直してるっぽい

♯5は明暗がくっきりしてますね。

⚫︎映画に誘われる

表ルートで映画に誘うシーンがありますが、リバースカットではあすかと付き合ってるのになんで私を誘うんですか、という理解になっていることがわかります。浮気してんじゃねーよと。結局行くわけですが。惚れた弱み。いつ惚れたんだよ。やっぱり屋上で和解したところかな。

⚫︎テープ壊した人

は香月じゃなくてあすかでした。部室で発見したテープを確認しようとしてぶっ壊したというのが真相。初っ端で張っていた機械音痴の伏線がここでようやく活かされたらしい。普通にぶっ壊した、ごめんって言えば良さそうなものを、と言いたけど、春人君割とすぐにブチ切れるからな。日頃の行いが悪かったおかげで、事態が複雑化していくケース。

⚫︎雄介の映画作りの動機

妹の仕事が減ってきたから、俺が映画監督になって、妹の主演ですごい映画を撮ってやろうと思ったのが、最初の動機だったらしい。こいつは妹がカメラ恐怖症だったことに気づいてないんですかね。というか、そもそもが母親に無理やりやらされてるようなもんだったわけでしょ。主演映画など余計なお世話ではないのか。なぜ映画作りにかまけて、母親から妹を救ってやらなかったのか。雄介が2年間探し回って見つけたホッキ貝で作ったサーフグラムのペンダントが、ようやく麻尋からあすかに渡って、あすかが兄の思いやりに気づく感動のシーンっぽくなってますが、謎は残る。やはりただの映画バカなのでは。

⚫︎修司に説教する麻尋

修司に説教する麻尋。お前、何もかもに自信ないみたいだけど、本当に努力したんか? きちんと諦めるに足るレベルまで努力したんか? 人を羨んでばかりじゃ何にも変わらんぞ。あすかはお前の告白断ったせいでCUM研に来られないと思ってるぞ。ちゃんとフォローしろよ。私は自分の撮影分が終わったら消えるから、そのあとはきちんと映画作り手伝えよ。云々。

いやいや。なんでお前にそんなアレを言われんとあかんのやと。お前はメンズコーチか。マジで危機感持った方がいいのか。全ての元凶になぜこんなことを言われなきゃならんのか。修司も納得したような面してますが、俺は納得してないぞ。みんな明らかに修司さんを舐めてるぞ。どいつもこいつも、修司なら何とでも説き伏せられると思ってないか。

⚫︎あすかが春人に告白

した後に春人から告白される麻尋。もうわけわかんないと部室を出て行った後、日暮荘に辿り着いて信に拾われていたことがわかります。信は2階の知り合いの家に泊まると言って出ていきますが、一蹴君ってまだいるの? 麻尋はサバイバーズギルドの持ち主で、映画撮影の後にみんなの前から消えるとしつこく言っているわけですが、そろそろ罪悪感から解放されてもいいんじゃないかという信の説得で、少し考えが変わったようです。その手の人間を説得させたらプロだからね。この人。当の本人が罪悪感から解放されたのかは最後までわかりませんでしたが。まあ結婚したんで解放されたんでしょう。

⚫︎映画のラストシーン

雄介が伝えたかったことは、絶望の中にも生きる喜びはあるんだ、という結論に至った麻尋でした。ここでようやく麻尋が映画作りにこだわる理由が出てきます。何がなんでも映画作りを決行したのは、雄介が絶対に君を守るという約束を果たして死んだので、こちらも絶対に約束を果たして映画を作らないといけないと考えたからでした。う〜ん。その約束は周りを犠牲にしてまで守らなきゃいけないものなんですかね。分からん。

⚫︎等価ではない選択肢

メモリーズオフって、倫理的には等価な二択を選ぶゲームだと思うんですよね。1stなら彩花は死んでるけど、彩花を取ろうが唯笑を取ろうが、倫理的には等価だと思います。2ndも一緒。ほたるだろうがつばめだろうが同じ。想君も一緒。音緒だろうがカナタだろうが倫理的には変わらない。それからはメインルートにそんな二択がないですが、まあいのりと雅だろうが、いのりと縁だろうが、話は一緒です。どっちが正しいとか、どっちが間違っているとか、そういう話にはならない、選べない二択を選ぶ物語だと思っています。2ndはちょっと怪しいけど。まあ浮気したくてしてるわけではないので、目を瞑ろう。

ただ#5はですね、あすかと麻尋を天秤にかけたとき、どう考えても麻尋と映画を作る方が、倫理的にはおかしいルートなんじゃないかと感じるわけです。等価になっていない。修司君のたかが映画だろ! という言葉に全てが集約されています。麻尋の雄介君との約束、何がなんでも守る必要が感じられない。

結末は丸く収まるんでしょうが、そういう話じゃないんだよな。そりゃ結末は創作側が何とでもできるんでね。急に周りの人が物分かり良くなれば全て解決しますよ。ただ倫理的に等価ではない二択で、選んではいけない方を、女に目が眩んだ結果、積極的に選んだ主人公という印象は拭えない。そういう意味で、応援した口なる主人公なのかと言われると、そうではないですね。伊波師匠もショーゴ君も(部分的に)応援したくはならない面はあるけど、春人君は最初の二択を間違っているという、別のベクトルの問題を抱えている。

⚫︎表に戻る

リバースカットから春人視点に戻ります。墓の前で花がぐちゃぐちゃになってたのは、麻尋の前にあすかの母親が現れたから。人殺し呼ばわりされて、麻尋は街から出る決意をして、速攻で出ていきます。それを探し回る春人。ルサックで麻尋と信が知り合いであることにようやく気づき、日暮荘にダッシュで駆け込み、信の胸ぐらを掴み上げます。なんで? この人行動おかしない? 信に怒りをぶつける理由はどこにあるのか。そこで麻尋から預かったビデオテープを二人で鑑賞すると、麻尋が父親から虐待を受けていたことが判明します。父親は酒乱だったらしい。普段は優しいけど、酒飲んだら豹変するとか。豹変することがわかってて酒を飲むんだろうか。

⚫︎CUM研復活

麻尋がいなくなり、探しても探しても見つからない状態に陥ります。そこからなんだかんだでメンバーのわだかまりはなくなり、CUM研で映画を完成させて、麻尋が現れるのを期待しようという結論になります。いやいや、俺は納得してねえぞ。みんないきなり物分かりが良くなりすぎだろ。映画を完成させ、あすかの母親にも渡したけど、特に何も言わなかったとか。見た上に何も言わないだけ前進しているのか。

⚫︎突然の再会

いなくなった麻尋と、海で再会します。引っ越したと見せかけて、金がなくて引っ越していなかったらしい。CUM研のメンバーは麻尋を暖かく迎え入れて、物語は終わりました。願い続けていればきっと叶うということが、ストーリーのオチだったようです。ロマンシングストーリーが流れて終わり。

⚫︎リバースカットルートまとめ

ヒロインの心情が開示されるという斬新さと、表から見て不自然だった点が綺麗に解決されるという点で、やはり#5のリバースカットは素晴らしいものでした。これだけで#5は食っていけるレベルのルート。信も大活躍だしね。それからは空気だったので、過去一で活躍したんじゃないでしょうか。麻尋も表に現れていない人格が見えてきて、もっと好感が持てる作りになっていました。

ただね、リバースカットがどういうよりも、全体的に細部まで詰めきれていない作品だな、という印象は拭えませんでした。初っ端の二択になっていない倫理もそうだし、諸問題を放置したまま終わっているので、これでいいんかという感想が浮かんできます。ロマンシングストーリーの雰囲気で誤魔化してない? いい曲だけどさ。#5の問題点については、次回の総まとめでもう一度考えてみます。問題点というほどでもないのかもしれないけど。どっちかというと、それからの後に来たのがよくないのかもしれないなぁ。想君の後だったら神か! ってなったかもしれない。星天がイノサンフィーユと比較される問題と似ている。

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