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『子どもに勉強は教えるな』を読んで

開成中学校・高等学校元校長、東京大学名誉教授の柳沢幸雄先生の著書『子どもに勉強は教えるな』を読んで、感じたことを書いてみようと思います。

「勉強しなさい」は絶対NG

「あなたは子ども時代、親から『勉強しなさい』と言われて育ちましたか?」
「あなたは子ども時代、親から『勉強しなさい』と一度も言われずに育ちましたか?」

このような質問からこの本は始まります。
「勉強しなさい」という言葉は、子どもの勉強を促すどころか、子ども意欲を奪う危険な言葉だと著者は言います。
親が子どもに勉強を強制する必要はなく、もっと他に、子どもに対してすべきこと、してあげられることがあるというのです。

教育は保守的

ところが、「教育というのは保守的」なので、「親は自分が受けた教育」を「踏襲」してしまうそうです。そのため、「勉強しなさい」と子どもに言ってしまうのは、自身が勉強に対して苦い思い出を持っている親に多いといいます。

私は、「教育というのは保守的」という言葉にいたく共感しました。
これは、学校や塾などでの教育にも当てはまりそうです。
ほとんどの教員が、自分が受けてきた教育をベースに授業を行っているように思います。
ただ、子育ての場合と違うのは、子どもが経験する子育ては自分の親の1パターンしかありませんが、生徒が経験する授業は、教わった先生ごとに何パターンもあることです。

教員は、自分が経験したたくさんの授業の良い部分を統合して自分の教育を作り上げることができます。
なおかつ、自分が上手く習得できなかった分野の指導に自分なりの改良を加えられると、良い授業ができる良い教員になれます。

楽しく実りある子育てのために

子育てにも、こういった考えを取り入れるべきなのではないでしょうか。
どんな子育てにも良い面と悪い面があるでしょう。自分が経験した子育てに捉われるのではなく、他の人の子育ての良い部分を取り入れることで、自分の子育ての質を高められると思います。
その点、この本は良い子育ての根底にある考え方を提示してくれる、子育ての教科書とでも言うべき一冊ではないかと思います。

また、自分の苦手を反省的に取り入れることも重要でしょう。
たとえ勉強が苦手だとしても、誰にも得意なこと、好きなことは何かしらあると思います。
絵を描くのが好きな人は、親に毎日デッサンをしなさいと言われて育ったでしょうか。
サッカーが好きな人は、リフティングやドリブルを強制させられて育ったでしょうか。
そんなことはないと思います。
初めはクレヨンで線を引くことだったり、転がるボールを追いかけることに自然と興味を持ち、親がしたことと言えば画用紙と24色の色鉛筆を買ってあげたり、ボールを持って公園に連れて行ってあげるというようなことだけだったのではないでしょうか。
あとは子どもが自分で工夫を凝らし、目標を定めることで上達していったのではないでしょうか。

「勉強をしなさい」と言われて意欲をそがれた経験を繰り返すのではなく、自分が「好き」を獲得した経験を、子どもの勉強にも応用してあげれば良いのだと思います。

虫に興味を持った子どもに図鑑を買い与えれば理科が得意になるかもしれません。
カルタが好きな子どもに絵本を読んであげて文字に興味を持てば国語が得意になるかもしれません。
子どもが興味を持ったおはじきで数の概念を教えてあげれば数学が得意になるかもしれません。

このように、自分が好きだったこと、苦手だったことを反省し、成功例を応用していくことが、楽しく実りある子育てにつながるのではないかと、この本を読んで感じたところです。

ネットの子育て方法

子育ての仕方のパターンとして、ネットでなどで勉強の教え方を調べて実行するというものがありそうです。

ネットで子育や勉強について調べると、いろいろな情報が得られます。
「本をたくさん読ませる」、「宿題はリビングでやらせた方が良い」などと、一見、役に立ち、すぐに実行できそうないろいろな方法が紹介されています。

ですが、深く考えずにこれを実行するのは問題があります。

これらは、確かにどこかの誰かにとっては最適な子育てや勉強の方法だと思います。
ですが、それが全ての子どもに当てはまるとは限りません。

子どもにはそれぞれ個性があります。また、同じ子供でも成長の時期によって興味の対象は変わってきますので、すべての子どもに当てはまる万能な方法などないのではないかと思います。

この方法が絶対的に正しい、と思い込んでしまったら、それこそ強制することにつながりかねません。

こうしたネットの情報は、手軽に入手し、手軽に実行できる分、その根底にある根拠や考え方が見えにくい場合があります。

大事なのは、これらの情報がどのような考えのもとに成り立っているのか、そしてその考え方に、親として共感できるかどうかだと思います。

その点から見ても、『子どもに勉強は教えるな』はおすすめです。

良い子育ての根底にある考え

著者は、学習塾の講師兼経営者、ハーバード大学や東京大学の教員、開成学園の校長という経歴の中で、多くの子どもたちを教え、様々な親子関係を見てきたそうです。

その経験から、子どもの可能性を拡げ、能力を伸ばすための関わり方、「本当の意味での子育て」のための根源的な考え方を、身近な例を引き合いに出し、分かりやすい言葉で説明しています。

「勉強」というテーマに限らず、携帯やゲーム、受験、お小遣いなど、子育てをする親なら気になるテーマが多岐にわたって扱われていますが、その根底にあるのは、安易な子育てハウツーではなく、子どもとの関わり方に関する一貫した姿勢です。

子育てをする親はもちろん、子どもと関わる教育関係者にとっても一読の価値がある本だと思います。
興味を持たれた方も、そうでない方も是非お手に取ってみてください。

柳沢先生 公開講演

そして、著者である柳沢幸雄先生がさいたま市で子育て公開講演会が開催されます。


詳細は下記の通りです。

【完成】柳沢幸雄先生講演会1部ポスター (5)_page-0001

【「自信」こそが生きる力!社会で生き抜くチカラ、スペシャリストを育てる子育て法】

日時;2022年2月23日(水・祝)10:00~10:40
場所;特別養護老人ホーム扇の森 地域交流スペース
定員;100名 ※定員を超えた場合は抽選になります
費用;無料

お申込みは2022年1月末まで
ポスターのQRコードから
【申込アドレス】
https://forms.gle/gmXrh7HNDNFWq7yGA

柳沢先生のお話を直接お伺い出来る今回のような機会は大変貴重です
是非、この機会をお見逃しなく、お申し込み下さい


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