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【復刻版】原子炉のゴミ「死の灰」の行方 【第3回最終回 史上最悪の毒・高レベル放射性廃棄物】

【この記事は復刻電子版です。最新の記事・情報ではありません】1995年に取材。集英社・週刊プレイボーイで連載した記事を編集しました。

フランスのもうひとつの顔

日本の若い女性が、こちらに向かって歩いてくる。彼女たちは申し合わせたように大きな紙袋を手に持っている。何が入ってるんだろうと思いながら歩いていると、日本人の女性が次から次へとやってきては私たちとすれ違っていった。
パリ・シャンゼリゼ通り。人々は、この街で華やかな雰囲気を満喫している。

だが、ファッショナブルな国フランスには、実はもうひとつの顔がある。私たちは、そのもうひとつのフランスを取材するために英仏海峡を臨む街シェルブールに向かった。

シェルブールは、映画『シェルブールの雨傘』の舞台にもなった美しい街である。海にはヨット、丘には古い城が見える。パリから列車で4時間、シェルブールのあるコタンタン半島はリゾート地と思ってしまうほどの場所である。
しかし、このコタンタン半島は別の目的で利用されてきた。

社会学者のフランソワーズ・ゾナベント女史は、研究目的であえて労働者になり、数ヶ月間、核施設で働いた。後日、その研究成果をまとめて『原子力半島』という本を出版した。

「私は、危険性のある場所で人々が何を感じて生活しているのかを研究しました。その結果、人は危険のそばにいればいるほど、その危険性を実感できないことがわかりました」

ゾナベントさんがこう言う場所、コタンタン半島には3つの原子力施設が点在する。原子力潜水艦の基地、原子力発電所、そして、ラ・アーグ核再処理工場である。この3つの施設を地図上で結ぶと三角形になるので『原子力トライアングル』と言う人もいる。

私たちは、シェルブール駅から歩いて10分のところにある港が見えるホテルにチェックインした。今夜、また電話をしなければならない。フランスに来る前の取材地、英国にいる時から、私たちは何度も日本に電話をしていた。ラ・アーグ核再処理工場の取材許可を得るためである。

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