フランスでの日本マンガの読まれ方 - ジャパンエキスポレポート(1/5)
ジャパンエキスポレポート全5回 –(1/5)(2/5)(3/5)(4/5)(5/5)
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マンガ新聞編集部の西野です。
海外で日本のマンガはどう愛されているのだろうか。
『DRAGON BALL』や『ONE PIECE』のほかにどんな作品が読まれているんだろうか。
ずっと知りたいと思っていました。とくに、北米以上にマンガの人気があるフランスに注目し続けてきました。
フランス国内で、もっとも人々がマンガと接触を持つ機会ともいえるジャパンエキスポ2019を取材、全5回の集中連載でレポートします。
日本オタクが待ちに待つ年に一度のマンガ祭り
「フランスで日本のマンガが人気らしい」ということをご存じの方は少なくないと思う。
実際にフランスは日本に次いで世界第2位の“日本のマンガの消費国”だ。
そのフランスでは、毎年7月にパリで「Japan Expo」という大規模な日本の文化紹介イベントを開催している。日本のメディアではフランスのコミケ、などと紹介をされていて、今年でちょうど開催20周年を迎えた。
マンガ、アニメ、ゲームを中心として、伝統文化や和食、武道、J-popなどがブースを出展し、例年開催中には25万人ほど来場者を迎えている。来場者はフランスのみならず、ドイツやスイスなどヨーロッパ各国から来る日本オタクだ。
20周年ということで、例年に増しての大々的なPRと、記念行事を盛り込んでいる「Japan Expo 20e impact」を取材した。
チケット制、一度出たら戻れないという入場システム。入場制限をしていて会場の外は行列だ。
20周年というメモリアルな会期のため、開催日数は例年より1日多い4日間。
初日。木曜日午前中だというのに、すでにこの混雑ぶりだ! のちに、これでも空いていると知ることになる……。
規模は大きく「マンガ」「アニメ」「ゲーム」と「その他」の合計4エリア。
スケールは東京ビッグサイトと同じくらいだが、加えて、ライブやトークショー、試写会をする体育館のようなホールが大小8つある。
コミケ会場だった東京ビッグサイトよりもスペースの規模は大きいように感じた。いかんせん、会場はシャルル・ド・ゴール空港のそばというパリ郊外で、そのためか敷地もとても大きい。
会場のうち、「マンガエリア」では、フランスのマンガ出版社ごとにブースを出して、マンガの販売をしている。日本のコミケと異なり、Japan Expoは企業が出展・販売をする展示会なのだ。
また、日本の出版社はJapan Expoには出展していない。なぜならば、日本のマンガはすでにフランスの出版社へライセンスされて、国内で販路を持っているからだ。
来場者は1日券や4日間フリーパスなど、およそ20€~300€とランクに幅があるチケットを購入する。
ご想像のとおり、当日会場でチケットを買おうとすると約2時間待ちとなる。そのため、毎年4月にはチケット発売が始まっている。
『ONE PIECE』と『ヒロアカ』、それぞれ違う出版社から!?
フランスのマンガ事情は日本とかなり異なっている。
そもそも、フランスにおいて日本のマンガは、いわば「タイトル買い」だ。
例えば、日本では集英社のジャンプコミックスとして発売されていても、フランスでは『ONE PIECE』『僕のヒーローアカデミア』『ハイキュー!!』『NARUTO』はみなそれぞれ別の出版社から発売されている。
つまり、ジャンプ系、マガジン系などの概念はなくなっているのだ。
言い換えれば、各社がキラーコンテンツをそれぞれに持っている、というバランスになっている。
そして、会場にはその上位10社ほどがブースを出展。
『ワンパンマン』を出している中堅のKUROKAWA社はカウンター式ブース
老舗DELCOURT社は少女マンガに特化した囲みブースで出展
『DRAGON BALL』を刊行する大手Glenat社は空中オブジェでアピール!
そこには来場者がギッチリ! 各社とも刊行マンガのなかから精鋭の推し作品を携えて販売に挑んでいるため、書店で入手できなかった作品が一気に買えるとあって、ユーロは飛び交い、来場者の荷物はパンパンに膨らんでいく。
大手出版社ブースの内側。来場者は軽く立ち読みしてパパっと買っていく。
けっこう買い込んでますね! と声をかけたのはピエールさんとその友達。
3人ともジャンルとしてはファンタジーが好きだとか。
今日の戦利品を見せてほしいと頼んだら、左から
『転生したらスライムだった件(Moi, quand je me réincarne en Slime)』
『Final Fantasy』
『OVERLORD』
『盾の勇者の成り上がり(RISING SHIELD HERO)』
を見せてくれた。
しかし、彼らが一番好きなマンガは『僕のヒーローアカデミア』だそうで、この日はもう持っているので買わなかっただけとのこと。
フランスでは日本で出版されている人気タイトルの多くがフランス語訳されている。フランス人が『転スラ』を……と胸が熱くなりつつも、意外にもバランスよく日仏間で作品がいきわたっているな、と感じた。
では、気になる「どんなマンガが人気なのか?」は次回のレポートでお伝えしたい。
※本記事は「マンガ新聞」2019年08月19日公開記事の再掲載です。
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